最近は街中でもオフィスでも、ワイヤレスイヤホンを使う人が本当に増えました。ケーブルがないのは便利だけど、「電磁波って大丈夫？」と心配する声も少なくありません。
この記事では、最新の研究や国際機関の見解をもとに、ワイヤレスイヤホンの安全性と人体への影響をわかりやすく解説します。
ワイヤレスイヤホンの電磁波とは？まず仕組みを理解しよう
ワイヤレスイヤホンが使っているのは、Bluetoothなどの「無線通信」です。この通信で使われるのが「電磁波（正確には電磁界）」と呼ばれるもの。
といっても、電子レンジやX線のような“強い放射線”とはまったく別物です。
電磁波には2種類あり、
- DNAを破壊するような「電離放射線（X線・γ線など）」
- そしてBluetoothやWi-Fi、スマホが使う「非電離放射線」
に分かれます。
ワイヤレスイヤホンが発しているのは後者で、エネルギーはかなり低く、細胞や遺伝子を直接壊すような作用はありません。
Bluetoothの出力は最大でも2.5mW程度。スマホ本体の送信出力（最大2W程度）と比べると、数百分の一ほど。つまり、イヤホンの電波はとても微弱なんです。
国際的な安全基準と日本での位置づけ
電磁波の安全性は、国際的なガイドラインで厳しく管理されています。
基準を定めている代表的な機関は次のとおり。
- WHO（世界保健機関）：無線通信機器の電波による健康被害を示す一貫した証拠はないと明言。
- ICNIRP（国際非電離放射線防護委員会）：一般公衆が安全に浴びられる電磁界の強度を規定。Bluetooth機器はこれを大きく下回る。
- 日本の総務省：電波法で定められた「人体吸収率（SAR）」の基準を採用。イヤホンのSAR値は携帯電話よりもはるかに低い。
これらの基準はかなり保守的に設定されており、万が一の健康リスクを防ぐために、実際に危険とされるレベルよりもずっと下で制限されています。
つまり、現在販売されているワイヤレスイヤホンは、世界的な安全基準の範囲内に収まっているということです。
研究でわかってきたワイヤレスイヤホンの電磁波レベル
実際にどれくらいの電磁波が出ているのか、研究データを見てみましょう。
ある実験では、複数ブランドのワイヤレスイヤホンを「待機中」「音楽再生中」「通話中」で比較したところ、次のような結果が報告されました。
- 電場強度：最大でも約12V/m
- 磁場強度：4μT程度
- SAR値（吸収率）：0.02W/kg未満
これは携帯電話のSAR上限値（2.0W/kg）の100分の1以下。つまり、イヤホンが発している電磁波は、規制値を大きく下回っています。
ただし、「ゼロ」ではありません。長時間、耳のすぐ近くで使用することを考えると、全くの無影響と言い切るにはまだ研究が必要な段階です。
「電磁波は危険」と言われる理由と、その誤解
電磁波という言葉には、どこか怖いイメージがあります。
特にインターネットでは、「ワイヤレスイヤホンで脳が危険」「不妊の原因になる」といった刺激的な見出しも見かけます。
しかし、科学的根拠を追うと、それらの多くは誇張または誤解です。
WHOや国立がん研究所など、主要な研究機関はいずれも「低レベルの電磁波で健康被害を示す確証はない」と結論づけています。
また、携帯電話やWi-Fiを対象とした過去20年以上の疫学研究でも、脳腫瘍などのリスク増加は確認されていません。
もしBluetoothイヤホンの微弱な電波が危険であれば、スマホ通話の方がはるかにリスクが高いはずですが、そのような結果は出ていません。
一部研究が示す「長時間使用」の影響とは？
とはいえ、すべての研究が「まったく影響なし」と言っているわけではありません。
2024年には、Bluetoothヘッドセットを長時間使う人ほど甲状腺結節が多いという調査結果も報告されました。
ただし、この研究は自己申告ベースで、因果関係を証明したものではありません。
「使用時間が長い＝電磁波が原因」とは限らず、姿勢や生活習慣などの要因も考えられます。
それでも、「長時間の連続使用は避けた方がいい」という点では多くの専門家が一致しています。
安全基準を超えなくても、長時間・至近距離で浴び続けることは、身体に余計な負担をかける可能性があるからです。
電磁波以外にもある「イヤホンのリスク」
見落とされがちなのが、電磁波以外の健康リスクです。
耳に密着して長時間使うワイヤレスイヤホンは、以下のようなトラブルを起こすことがあります。
- 大音量による難聴・耳鳴り
- 耳の湿度上昇による外耳炎
- イヤーピースの不衛生による皮膚トラブル
- 長時間装着による耳の圧迫や疲労感
つまり、イヤホン使用で注意すべきは「電磁波」よりも「音」と「使い方」なのです。
どんなに安全なデバイスでも、使い方次第でリスクは変わります。
安心して使うための5つのポイント
心配しすぎる必要はありませんが、次のような使い方を心がけるとより安心です。
- 長時間の連続使用を避ける
1〜2時間ごとに外して耳を休ませるだけでも、負担は減ります。 - 音量を控えめに
外の音が聞こえる程度が理想。聴覚保護の面でも重要です。 - 寝ながらの使用は控える
長時間、耳の近くに電波源を置かないようにしましょう。 - 充電しながら使わない
機器の発熱や電磁界の影響を避けるためにも安全です。 - 子どもは特に注意
成長期は体の吸収率が高いとされます。使用時間を短く。
こうした工夫で、日常的な電磁波曝露はさらに小さく抑えられます。
最新技術と今後の見通し
Bluetoothの省電力化は年々進んでおり、送信出力もさらに低くなっています。
一方で、将来的には通信速度を上げるために高周波帯（60GHz帯など）が使われる可能性もあります。
この「高周波化」は利便性を高める一方で、皮膚近傍での吸収が増えるという指摘もあり、今後の研究が求められています。
メーカーや国際機関も、新しい無線規格ごとに安全性評価を続けていく方針を示しています。
つまり、今後の技術進化に合わせて、私たちの“使い方”もアップデートしていくことが大切です。
まとめ｜ワイヤレスイヤホンの電磁波は危険なのか？
結論から言えば、現時点の科学的知見では「危険」と断言できる根拠はないというのが専門家の共通見解です。
ワイヤレスイヤホンの電磁波は微弱で、国際的な安全基準を大きく下回っています。
とはいえ、長時間・至近距離での使用は控えめにし、音量や装着時間に注意することが大切。
これは電磁波対策というより、耳や体を守る生活習慣としてのポイントです。
電磁波という言葉に過剰に不安を感じる必要はありません。
正しい知識と上手な付き合い方を知ることで、ワイヤレスイヤホンは安全で快適な相棒になります。
ワイヤレスイヤホンの電磁波は危険？安全性と影響を徹底解説【最新研究】――。
便利なテクノロジーと安心を両立するために、これからも正しい情報をアップデートしていきましょう。
