近ごろ、スマートウォッチを「健康管理ツール」として使う人が急増しています。中でも注目を集めているのが、心電図（ECG）を測定できる機能。腕につけるだけで不整脈の兆候をキャッチできるなんて、少し前までは考えられなかったことですよね。
この記事では、スマートウォッチの心電図機能の仕組みや活用法、不整脈を早期発見するためのポイントをわかりやすく紹介します。
スマートウォッチで心電図が測れるってどういうこと？
心電図（ECG）は、心臓が拍動するときに流れる微弱な電気信号を記録する検査。これまで病院でしかできなかった計測を、スマートウォッチが手軽に実現してくれます。
仕組みは意外とシンプルです。
時計の裏側やサイドボタンに搭載された電極に指を触れることで、手首と指の間を電気が流れ、その差を利用して心臓の電気的活動を記録します。
これを「シングルリード心電図」と呼び、医療機関の12誘導心電図に比べると簡易的ではありますが、心房細動（AF）などの不整脈を検出するには十分な精度があります。
Apple WatchやHUAWEI WATCH GT 4、Pixel Watch 4など、2025年現在では主要メーカーの多くがECG機能を搭載。医療機器として認可されているモデルも増え、「病院に行かなくても自分で確認できる」という新しい健康習慣が広がりつつあります。
なぜスマートウォッチの心電図機能が注目されているのか
最大の理由は、不整脈を早期に見つけられる可能性があることです。
不整脈は一時的に発生するケースが多く、病院で検査を受けたときには正常に戻っていることも珍しくありません。
特に心房細動のように「発作性」で「無症状」なタイプは、本人が気づかないうちに進行し、脳梗塞などを引き起こすこともあります。
そこで役立つのが、日常生活の中で常に装着できるスマートウォッチ。
心拍数の変動や脈の乱れを常時チェックできるため、異常のサインを見逃しにくくなります。
たとえば、寝ている間や仕事中に心拍が急に不規則になった場合、ウォッチが「不整脈の可能性があります」と通知してくれるモデルもあります。
もちろん、これは診断ではなく“注意喚起”の機能です。
でも、「何かおかしいかも」と気づいて早めに病院を受診できることが、命を救うきっかけになることもあります。
不整脈ってどんな状態？放っておくとどうなるの？
不整脈とは、心臓の拍動リズムが乱れる状態のこと。脈が速すぎたり遅すぎたり、不規則に打つようになることで、心臓のポンプ機能に影響を与えます。
代表的なのが「心房細動」。
心房が細かく震え、血液がよどんで血栓ができやすくなります。
その血栓が脳に飛ぶと脳梗塞を引き起こす危険があり、心房細動が原因の脳梗塞は重症化しやすいといわれています。
怖いのは、多くの人が「動悸」「息切れ」などの症状を感じないこと。
つまり、自覚症状がなくても進行する病気なのです。
だからこそ、スマートウォッチで日々の心拍やリズムを観察し、異常を早めにキャッチすることが重要なのです。
スマートウォッチで不整脈を見つけられるの？
結論から言えば、ある程度までは可能です。
臨床研究によると、Apple Watchなど医療機器認可を受けた機種では、心房細動の検出において70〜90％の精度を示す報告があります。
もちろん、完璧ではありません。誤検知や見逃しが起こる可能性はあり、あくまでスクリーニング（ふるい分け）目的のツールと考えるのが現実的です。
それでも、従来のホルター心電図（24時間装着）ではとらえきれなかった「短時間の発作」や「無症候性不整脈」を捉えるチャンスがあるのは大きな利点。
とくに高齢者や高血圧、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群など、心房細動のリスクが高い人にとっては、有効なセルフチェック手段になるでしょう。
日本で使える心電図対応スマートウォッチ
2025年現在、日本国内で医療機器として認可を受けている代表的なモデルは次の通りです。
- Apple Watch（Series 4以降）：国内初の医療機器認可モデル。精度が高く、心電図アプリのUIも分かりやすい。
- HUAWEI WATCH GT 4 / Dシリーズ：一部モデルが医療機器認可済み。バッテリー持ちが長く、心拍・血中酸素濃度も同時に測定可能。
- Pixel Watch 4（Google）：2025年から日本でもECG機能が正式に利用可能に。Google Fitとの連携が強み。
これらの認可モデルは、薬機法に基づいた安全性と精度の検証を経ており、データの信頼性が高い点が特徴です。
一方、認可のない格安スマートウォッチでは「ECG機能」と表示されていても、医療レベルの精度は保証されていません。健康管理の目安にはなっても、診断には使えないことを理解しておきましょう。
実際に使うときの注意点
1. 測定時は姿勢と環境に注意
動いている最中や汗をかいた状態では、ノイズが入って正確な波形が取れません。
静かに座り、手を安定させて測定するのがポイントです。
2. 結果を過信しない
スマートウォッチが「心房細動の可能性あり」と表示しても、確定ではありません。
異常が出たときは必ず医療機関で再検査を受けましょう。
3. 測定を習慣化する
週に1回だけ測るよりも、毎日短時間でも記録を残すほうが変化に気づきやすくなります。
アプリで履歴をチェックし、心拍や脈の傾向を見ておくのもおすすめです。
4. データの共有
最近では、スマートウォッチの心電図データを医師と共有できる機能もあります。
「発作時の記録を持参する」ことで診断がスムーズに進むケースも多いです。
最新動向：AIによる解析と医療連携の進化
近年では、AIを活用した心電図解析の研究が進んでいます。
シングルリードのECGデータから、従来は12誘導検査でしか分からなかった心筋や弁膜の異常を検出できる可能性が報告されており、将来的には心臓全体の健康状態を推定するツールに発展するかもしれません。
さらに、遠隔医療やオンライン診療と連携する仕組みも広がっています。
たとえば、スマートウォッチのデータをクラウドで共有し、医師が異常の兆候を早期にチェックする仕組みなど。
「病院に行かなくても医師が見守る」時代が、少しずつ現実になりつつあります。
スマートウォッチで心電図を測定！不整脈を早期発見する新しい習慣を
心臓のリズムは、日々のストレスや生活習慣の変化にも影響を受けます。
スマートウォッチの心電図機能は、そんな心のサインを見逃さないための“パートナー”です。
ただし、医療の代わりではなく、健康意識を高める補助ツールとして使うことが大切。
もしスマートウォッチが「不整脈の可能性」を示したら、慌てず医療機関で確認を。
そして何より、定期的に自分の身体と向き合う習慣を持つことが、健康寿命を延ばす第一歩です。
「手首で心臓を見守る」時代。
あなたのスマートウォッチが、いつか命を守るセンサーになるかもしれません。
