ランニングウォッチを手にした瞬間、練習がちょっと楽しくなる。中でもGarmin Forerunner 945（ガーミン）の「予想タイム」機能は、多くのランナーにとってモチベーションの源になっている。
けれど、「この数字って本当に当たるの？」「どう使えばいいの？」と思ったことはないだろうか。この記事では、ガーミンの予想タイム機能を深掘りしながら、マラソン完走にどう役立てればいいかをわかりやすく解説する。
そもそもガーミンの「予想タイム」とは？
ガーミンの予想タイム機能は、ランナーの現在の走力から5km・10km・ハーフマラソン・フルマラソンの理論的な完走タイムを表示してくれるものだ。
Garmin Connect アプリやウォッチ上のパフォーマンスウィジェットを開くと、「あなたなら今、マラソンを〇時間△分で走れるかも」という数字が出てくる。
この数値は単なる勘や平均ではなく、VO2Max（最大酸素摂取量）とトレーニングデータをもとに算出されている。つまり、心拍数やペース、走行距離などを日々のランから自動的に学習し、現状の“潜在能力”を数値化してくれているわけだ。
どんな仕組みで予想タイムを出しているの？
予想タイムは主に次のようなデータをもとに算出される。
- VO2Maxの推定値（心肺機能の指標）
- 直近のランニング履歴（ペース・距離・心拍数）
- 年齢・性別・体重・最大心拍数などのプロフィール情報
たとえば、心拍数を抑えながら一定のペースで長距離を走れるようになると、VO2Maxが向上し、予想タイムも短縮されていく。
ガーミンのアルゴリズムは一定期間のトレーニング履歴をもとに走力を学習するため、使い始めたばかりの時期は精度が安定しないこともある。数週間〜数ヶ月にわたって使い続けることで、より現実的な予測値に近づいていく。
予想タイムの精度を高めるためのコツ
予想タイムを信頼できるものにするには、次のポイントを意識しておきたい。
- プロフィールを正確に設定する
年齢や体重、最大心拍数などを正しく登録しておく。間違ったデータはVO2Max推定を狂わせ、結果的に予想タイムもズレる。 - 多様な練習データを蓄積する
ジョグ、ペース走、インターバル、ロング走など、いろいろな強度のトレーニングを積み重ねると、アルゴリズムが自分の実力をより正確に把握できる。 - デバイスの同期を忘れずに
複数のガーミン機器を使っている場合は「TrueUp」をオンにして、すべてのデータをGarmin Connectで一元管理する。 - 継続して使うことが一番の近道
数回のランではデータが足りず、予想が不安定。継続的に走ることで“あなた専用の精度”が育っていく。
マラソン完走にどう活かせる？
予想タイムは「あなたのポテンシャルを示す数字」。これをうまく活用すれば、トレーニングもレース戦略も大きく変わる。
1. 目標設定の基準にする
「完走したい」「サブ4を目指したい」といったざっくりした目標を、予想タイムの数値が具体化してくれる。
たとえば「現在の予想が4時間20分なら、まずサブ4.5を切る練習をしてみよう」という具合に、目標が明確になる。
2. 成長の可視化でモチベーション維持
毎週のトレーニングを続けるうちに、予想タイムが少しずつ短くなっていく。その変化は、目に見える“努力の証”。モチベーションの維持にもつながる。
3. ペース配分の目安に使う
マラソン本番前に予想タイムを確認し、そこから1kmあたりの平均ペースを逆算しておくと、ペースメイクの参考になる。
ただし当日の気象条件や体調を考慮して、余裕をもった設定を心がけたい。
「当たらない」と感じるときの理由
SNSなどで「ガーミンの予想タイムは信用できない」という声もよく見る。それにはちゃんとした理由がある。
- スピード練習が多いと、VO2Maxが過大評価されやすい
- 長距離練習が不足していると、フルマラソン予想が現実離れしやすい
- 暑さや坂道などの環境要因は考慮されていない
- 体調や疲労度、補給状態も反映されない
つまり、予想タイムは「理論値」。レース当日のコンディションや環境によって、実際の結果は上下する。
だからこそ、「目安として使う」というスタンスが大切だ。
数字を“使いこなす”視点
ガーミンの予想タイムをただ眺めるだけではもったいない。次のように“使いこなす”ことで、ランニングの質をぐっと上げられる。
● トレーニング調整の判断材料に
予想タイムが思うように伸びない時期は、練習の偏りを見直すチャンス。スピードばかりではなく、持久走や回復ジョグのバランスを見直してみよう。
● レースシミュレーションに活用
「このタイムで走れるなら、30km地点では何分が理想か？」といったシミュレーションを立てると、本番のペース計画が明確になる。
● 自己分析ツールとして
実際のレース結果と予想タイムを比較し、「どの区間で失速したのか」「持久力とスピードのどちらが足りないのか」を分析。次の目標に生かせる。
Garminをパートナーに、数字と感覚を磨く
ガーミンの予想タイムは、あなたの身体が語る“今の実力”を可視化する道具だ。
けれど、ランニングは数字だけでは語れない。気温、風、気分、睡眠…走りの出来は日々変わる。
だからこそ、数字を信じすぎず、感覚も大切にしよう。
「今日は少し余裕があるな」「疲れが残っているから抑えよう」――そんな身体の声と、ガーミンのデータをうまく組み合わせることで、より賢く走れるようになる。
ガーミンの予想タイム機能を使いこなして、理想のマラソンへ
ガーミンの予想タイム機能は、ランナーにとって頼れるコンパスのような存在だ。
完璧な答えを示すものではないが、練習の方向性を定め、モチベーションを支えてくれる。
数値を目安にしながら、自分の感覚と経験を重ねていく――その積み重ねが、42.195kmを走りきる力になる。
今日もガーミンを腕に、あなたの“次の一歩”を刻もう。
