スマートウォッチと聞いて、あなたはどんなブランドを思い浮かべますか?
Apple Watch、Galaxy Watch、あるいはFitbitやGarminなどを思い出す人が多いかもしれません。
けれども、かつてこの市場を切り開いたブランドのひとつが「モトローラ」でした。
一時代を築いた同社のMoto 360は、スマートウォッチ黎明期における象徴的な存在でした。
ところが、そのモトローラが市場から姿を消した。なぜなのか、そして今後どうなるのか――。
今回は、モトローラのスマートウォッチ撤退の背景と復活の兆しを、徹底的に解き明かします。
モトローラが生み出した「丸型スマートウォッチ」の衝撃
2014年、世界中のガジェットファンがざわついた。
それがモトローラ初のスマートウォッチ「Moto 360」の登場です。
当時のスマートウォッチといえば、四角い液晶を腕に巻く“デジタル感満載”のものが主流でした。
そんな中でMoto 360は、伝統的な腕時計のような円形フェイスを採用。
ステンレス製ボディに革やメタルのバンドを合わせた高級感のあるデザインは、「これならビジネスシーンでも違和感がない」と評判に。
さらに、Googleが提供するAndroid Wear(現在のWear OS)を搭載し、通知・通話・健康管理などの機能も充実。
“テクノロジーとファッションの融合”を体現した先駆的な存在として、多くのユーザーに支持されました。
スマートウォッチ市場からの撤退 ― なぜモトローラは止まったのか
ところが、その勢いは長く続きませんでした。
第2世代モデルを発売した後、モトローラは2016年に突如として「新しいスマートウォッチを開発する予定はない」と発表。
実質的に市場から撤退したのです。
その背景には、いくつかの理由がありました。
まず、スマートウォッチ市場そのものが当時はまだ成熟していなかったこと。
利用者は限られ、スマートフォンの補助的な位置づけにとどまり、“必需品”とは言い難い状況。
開発コストに見合う利益が見込めなかったのです。
次に、モトローラの企業体制の変化。
同社はすでにレノボ傘下となっており、スマートフォン事業の再建を優先。
ウェアラブルデバイスは「今はリソースを割く余裕がない」と判断されたと考えられます。
そして何より、Apple Watchの圧倒的な存在感。
Appleのエコシステムに組み込まれたスマートウォッチが市場を牽引し、Android陣営は後手に回っていました。
結果的に、モトローラは撤退を余儀なくされたわけです。
ライセンス製造による“名ばかりの復活”
モトローラの名前が完全に消えたわけではありません。
2019年、カナダの企業eBuyNowがモトローラブランドのライセンスを取得し、「Moto 360(第3世代)」を発売しました。
見た目こそオリジナルを踏襲していましたが、モトローラ自身が手がけた製品ではなく、ブランド貸与による外部開発品。
そのため「懐かしいけれど、別物だ」という声も少なくありませんでした。
レビューでも「無難だが、特徴がない」「高価な割に特別感が薄い」といった意見が目立ち、往年の勢いを取り戻すことはできませんでした。
つまり、これは“復活”というよりも“延命”に近いものでした。
そして2025年、再び注目を集める“復帰の兆し”
しかし2025年に入り、空気が変わってきています。
モトローラが再びスマートウォッチ市場に本格参入するというニュースが相次いでいるのです。
きっかけとなったのが、同社が発表した「Moto Watch Fit」。
これは軽量設計のフィットネス向けスマートウォッチで、独自の「Moto Watch OS」を搭載。
手頃な価格帯で健康管理や通知機能に対応し、ウェアラブル初心者を意識したモデルです。
さらに、海外メディアでは「Moto 360(2025)」の存在が報じられています。
クラシックな円形デザインを継承しつつ、ステンレスケースや物理クラウンを備えた高級感のある仕上がり。
「原点回帰×現代的スペック」を両立したモデルとして、期待が高まっています。
なぜ今、モトローラは再び挑戦するのか?
再参入には、明確な戦略が見えます。
- 市場の成熟と再成長
スマートウォッチはもはや一部のガジェット好きだけのものではありません。
健康管理や決済、通知といった日常機能が広く浸透し、生活インフラの一部になりました。
特にAndroidユーザー向けのWear OS対応モデルは、今後も需要が見込まれます。 - ブランドの再評価
モトローラはスマートフォン市場で一定の地位を保ちつつあり、「クラシック×テクノロジー」というブランドイメージを再構築しています。
Moto 360の伝統を受け継ぐことで、“懐かしさと信頼”を同時に訴求できます。 - 幅広い価格帯での展開
高級ラインのMoto 360、エントリーラインのMoto Watch Fitといったように、多層的な商品構成を整えることで、より多くのユーザー層を狙える。 - 独自OSによる差別化
Wear OSデバイスとの差別化として、軽量かつ省電力な独自OSを採用すれば、電池持ちや操作レスポンスの面で優位性を発揮できる。
こうした要素が重なり、モトローラは再び「腕時計型デバイスのある生活」に焦点を当て始めたのです。
復活のカギは“原点と進化”の両立
モトローラのMoto 360が愛された理由は、単に機能ではありません。
丸型の美しいデザインと、クラシックな時計のような存在感。
そこにスマート機能が自然に溶け込んでいたことが、ユーザーの心を掴みました。
もし2025年モデルがそのDNAを引き継ぎ、現代の利便性を融合させることができれば、再び市場の注目を集める可能性があります。
特にAndroidスマートフォンとの親和性を高め、バッテリー性能を向上させれば、Apple Watchの独走を崩すきっかけになるかもしれません。
とはいえ、競合は強力です。
SamsungのGalaxy WatchやGoogle Pixel Watch、Huawei、Garminなど、各社が個性豊かな製品を展開。
再びこの市場で存在感を示すには、「モトローラらしさ」が不可欠でしょう。
まだ公式発表はない ― だからこそ期待が膨らむ
注意したいのは、現時点ではモトローラが公式に「Moto 360(2025)」を発表したわけではないということ。
報道やリーク情報はあるものの、スペックや発売時期、価格は未定です。
しかし、この“沈黙”が逆に期待を高めています。
ブランド復活のタイミングとして、2025年は格好の年。
スマートフォン事業でも新シリーズを発表しており、エコシステム拡大を狙っている可能性があるからです。
ウェアラブル市場が再び盛り上がりを見せる中、モトローラがどのような一手を打ってくるのか――。
その動向から目が離せません。
モトローラがスマートウォッチ市場から撤退?理由と今後の展望を徹底解説のまとめ
モトローラは確かに一度スマートウォッチ市場から撤退しました。
それは事実です。
しかし、2025年の今、同社は再びその扉を叩こうとしています。
撤退の背景には、市場の未成熟、経営戦略の優先順位、そして競合の圧倒的な存在感がありました。
けれども、スマートウォッチが“生活に密着したデバイス”へと進化した今、かつての先駆者が戻ってくるのは自然な流れともいえます。
Moto 360の名を再び世に出すのか。
あるいは新しいブランド戦略で挑むのか。
その答えが出る日は近いかもしれません。
テクノロジーの歴史は、繰り返しと再挑戦の連続です。
モトローラがもう一度、手首の上で輝きを放つ日を――ファンは静かに、けれど確かな期待を胸に待っています。
