最近、ミニPCを「省スペースなデスクトップ」や「家庭用サーバー」「小規模オフィスのファイル保管機」として使う人が増えています。その中でも注目されているのが、RAID1対応ミニPC。
小型ながらデータの安全性を高められる構成として、ITに詳しいユーザーを中心に人気が高まっています。
この記事では、RAID1の基本から、ミニPCでどう活用できるのか、どんなモデルが人気なのかまでをわかりやすく紹介します。
RAID1とは？ミニPCで注目される理由
RAID（レイド）とは「Redundant Array of Independent Disks」の略で、複数のドライブを組み合わせて、信頼性や性能を高める技術のこと。
中でもRAID1は「ミラーリング」と呼ばれ、2台のドライブに同じデータを書き込む構成です。片方のドライブが故障しても、もう一方が生きていればデータを失わずに済むという仕組み。
この冗長性が、いまミニPCで注目される最大の理由です。
たとえば写真や動画、設計データ、業務書類などを扱う小規模環境では、クラウドにすべてを預けるよりも、手元で安全に保管したいニーズがあります。
RAID1対応のミニPCなら、コンパクトな筐体で「データを守る力」を備えられるんです。
ミニPCでRAID1を組むメリットと注意点
メリット1：データ消失リスクを大幅に軽減
RAID1は、2台のドライブが同時に同じ内容を保存するため、1台が故障してもデータは失われません。
たとえばHDDやSSDが物理的に壊れた場合でも、もう一方からそのまま起動・復元ができるのは安心感が違います。
メリット2：読み込み速度が安定
書き込みは2台に同時ですが、読み込みは片方から並列に行えるため、若干の速度向上を感じることもあります。特にファイルサーバー的な使い方では有効です。
注意点：バックアップとは別物
よくある誤解が「RAID1があればバックアップは不要」というもの。
RAID1はあくまでドライブ故障対策であり、誤って削除したデータやウイルス被害、災害時の喪失には対応できません。
クラウドや外付けディスクへのバックアップを併用するのが正しい運用です。
RAID1対応ミニPCを選ぶときのチェックポイント
RAID1を活かすには、ミニPCの構成や仕様選びがとても大切です。選定時に見るべきポイントを整理しておきましょう。
1. ドライブベイやスロット数
RAID1は2台のドライブで構成するため、最低でも2つのストレージスロットが必要です。
SATA接続の2.5インチベイが2つあるモデルや、M.2＋2.5インチを組み合わせられる構成がおすすめです。
2. RAIDコントローラの有無
ハードウェアRAIDをサポートするミニPCなら、BIOSレベルでミラーリングが可能。
一方、RAID機能がない場合はWindowsやLinuxのソフトウェアRAIDで構築できます。
最近はTrueNASやUbuntuなど、無料で安定したRAID環境を構築できるOSも増えています。
3. 冷却性能と電源の安定性
ミニPCは小型なぶん、放熱が弱点になりやすいです。
2台のHDDやSSDを長時間稼働させると熱がこもりやすく、寿命を縮める原因になります。
ファン搭載モデルや、金属筐体で放熱に優れる設計を選ぶのがポイント。
4. メンテナンス性
RAID1は「壊れたドライブを交換する運用」が前提です。
筐体を簡単に開けられるか、ホットスワップ（電源を落とさず交換）できるかなどもチェックしましょう。
人気のRAID1対応ミニPC・おすすめモデル紹介
ここからは、RAID1対応またはRAID構成に適した人気ミニPCを紹介します。
すべて小型で静音性が高く、自宅サーバーやオフィス利用にぴったりの機種ばかりです。
AOOSTAR NASミニPC Ryzen7 5825U
2ベイのHDDスロットを備えた本格NASタイプのミニPC。
RAID1構成を前提とした設計で、低消費電力ながらRyzen7の高性能CPUを搭載。
動画ファイルや写真データの保管、クラウドバックアップ連携にも最適です。
GMKtec Twin Lake N150 4ベイミニPC
コンパクトな筐体に4つのドライブベイを備え、RAID1だけでなくRAID10構成も可能。
ファイルサーバー用途や小規模オフィスでの導入に人気。将来的に容量を増やしたい人にもおすすめです。
MINISFORUM UM870Slim
高性能なRyzen 7 8745Hを搭載したミニPC。
内部にM.2スロットと2.5インチベイを持ち、RAID1構成をソフトウェアで組むのに向いています。
静音性と放熱設計に優れ、長時間稼働にも強い点が魅力。
ASUS NUC 14 Essential
信頼のASUS製。拡張性は控えめながら、省スペース性と安定性を両立。
外付けRAIDボックスをUSBやThunderboltで接続する運用も可能です。
構成例：RAID1を活かしたおすすめ組み合わせ
RAID1を組むには、ハードとソフトの相性も重要。ここでは現実的で安定した構成例を紹介します。
構成A：起動ドライブ＋データミラー構成
- 起動用SSD（M.2 NVMe）
- データ用HDD×2（RAID1）
起動ドライブは独立させ、データ用HDDをミラー構成にするパターン。
ミニPCのスロット構成に柔軟性がある場合、この方法が最もトラブルが少なく人気です。
構成B：外付けRAIDエンクロージャー併用
- ミニPC本体：1ドライブ構成
- 外部RAIDケース（USB3.2/Thunderbolt対応）でRAID1構築
ミニPCにベイが1つしかない場合でも、外部エンクロージャーを使えばRAID1を組めます。
接続ケーブルの品質や冷却性には注意が必要ですが、省スペースかつ手軽に始められる方法です。
運用のコツ：RAID1を長く安定して使うために
- 同型ドライブを使用する
容量・速度が異なると、片方のドライブが足を引っ張ることがあります。メーカーも型番も揃えるのが理想です。 - 温度をモニタリングする
小型筐体では熱がトラブルの原因になりやすい。定期的にSMART情報をチェックして異常を早期発見しましょう。 - リビルド（再構築）中は慎重に
ドライブ交換後の同期作業中にもう一方が故障するとデータが失われます。
電源を安定させ、負荷をかけすぎない運用を心がけるのが大切です。 - バックアップを必ず取る
RAID1は「データ保護の第一歩」。
これだけで安心せず、定期的に外部ストレージやクラウドへバックアップを取りましょう。
ミニPCでRAID1を使うときの落とし穴
- 容量効率が50％になる：2TB×2台でも、実際に使えるのは2TBのみ。
- ファイル削除やウイルス感染は防げない：RAIDはあくまで冗長化。削除したデータは両方から消える。
- リビルドには時間がかかる：再構築中は処理が重くなり、残り1台の負荷が増える。
- ドライブの同時故障リスク：同じロットのHDDを使うと、寿命タイミングが重なりやすい。
- ミニPCの冷却不足：ファンレスモデルや小型筐体では発熱トラブルに注意。
まとめ：RAID1対応ミニPCで「小さくても強いデータ保護環境」を
RAID1対応ミニPCは、コンパクトさと信頼性を両立できる実用的な選択肢です。
2台のドライブでミラーリングを構成すれば、突然のドライブ故障にも慌てず対応できます。
特にAOOSTAR NASミニPC Ryzen7 5825UやGMKtec Twin Lake N150のように2〜4ベイ構成のモデルは、家庭用NASにもビジネス用ファイルサーバーにも活躍します。
ただし、RAID1は「冗長化」であって「バックアップ」ではありません。
万が一に備えて、別メディアやクラウドとの併用を忘れずに。
冷却やドライブ寿命にも気を配り、安定した運用を心がけましょう。
小さな筐体に大きな安心を詰め込める――それが、RAID1対応ミニPCの最大の魅力です。
あなたのデータを守る最初の一歩として、ぜひ導入を検討してみてください。
