最近は、ビジネスシーンでもスマートウォッチを身につけている人が増えてきました。
通知を手元で確認できたり、スケジュールや健康管理を一括でできたりと便利なアイテムですよね。
そこで気になるのが、「スマートウォッチって経費で落とせるの？」という点。
この記事では、スマートウォッチを経費として計上できる条件や注意点を、税務の考え方に沿ってわかりやすく解説します。個人事業主や中小企業の経営者の方が安心して判断できるよう、実例を交えながらまとめました。
スマートウォッチを経費にできるかどうかは「使い方次第」
結論から言うと、スマートウォッチは業務で使用している実態があれば経費として認められる可能性があります。
ただし、誰が・どんな目的で・どのように使っているかがポイントになります。
税務上、経費として認められるには「事業に直接必要な支出」であることが条件です。
つまり「業務連絡を受けるため」「スケジュールや会議の通知を確認するため」といった明確な業務目的があれば、経費処理できる可能性があります。
たとえば営業職や外回りが多い人なら、手元で通知を確認できることで業務効率が上がる。そのようなケースでは、スマートウォッチを“仕事道具”として認めてもらいやすくなります。
一方で、「ファッション目的」「健康管理や運動記録がメイン」などの場合は、私的利用と判断される可能性が高く、経費としては認められにくいのです。
経費として認められやすい具体的な条件
スマートウォッチを経費計上したいなら、以下の条件を意識しておくと安心です。
- 業務目的が明確であること
通知確認、メールやチャットの返信、スケジュール確認など、業務に直結していることを説明できる。 - 使用者や用途が限定されていること
社員全員または業務に必要な人に配布しているなど、合理的な範囲であること。 - 価格やモデルが妥当であること
業務用なのに高級ブランドのスマートウォッチを購入していると、プライベート目的と見られやすくなります。 - 業務専用として管理されていること
会社で保有・貸与し、業務時間内に使用するなど、私物と区別できる状態にしておくこと。
このような「業務利用の証拠」を残しておくことが、後々の税務調査でも安心につながります。
領収書の保管はもちろん、購入理由や利用目的をメモしておくだけでも説得力が増します。
スマートウォッチの金額によって会計処理は変わる
スマートウォッチを経費にする際は、購入金額にも注意が必要です。
税務上、金額によって処理方法が変わります。
- 10万円以下の場合：
「消耗品費」として一括で経費にできます。最もシンプルな処理です。 - 10万円超〜20万円未満の場合：
「一括償却資産」として3年間で均等に経費化できます。 - 10万円超〜30万円未満で中小企業者等の場合：
特例制度（少額減価償却資産の特例）を使えば、購入年に全額を経費にできる可能性があります。 - 30万円以上の場合：
「備品」などの固定資産として、耐用年数に応じて減価償却を行う必要があります。
つまり、価格帯によっては一括で処理できないケースもあるため、会計ソフトや税理士に相談して正確に処理するのがおすすめです。
私用利用との線引きをどうするかが最大のポイント
スマートウォッチはどうしても“プライベート利用”と“業務利用”が混在しがちなアイテムです。
この曖昧さが経費計上の一番のリスクになります。
税務署が見るのは「業務との関連性」。
たとえば次のようなケースでは否認されるリスクがあります。
- 経営者個人だけが使用している
- 健康管理や運動計測が主目的になっている
- スマホでも代替できるのに、あえて高級モデルを購入している
逆に、以下のように明確に区別できていれば認められる可能性が高まります。
- 会社で貸与・管理している
- 使用者を特定し、業務に必要な人にのみ支給している
- 仕事の連絡やスケジュール管理に実際に活用している
要は、「業務専用として合理的に使っている」と説明できるかどうかがすべて。
私用と業務の線を引くためにも、社内ルールを定めておくのが理想です。
法人と個人事業主での扱いの違い
法人と個人事業主では、経費の扱い方に若干の違いがあります。
法人の場合
法人名義で購入し、社員に貸与する形であれば比較的処理しやすいです。
ただし、役員や社長個人だけに支給すると「役員賞与」「福利厚生費」と判断され、損金算入できないリスクがあります。
個人事業主の場合
スマートウォッチをプライベートでも使う場合は、按分（あんぶん）処理を行います。
たとえば「業務7割・私用3割」などと判断して、7割分だけ経費として計上するのが現実的です。
按分の根拠をメモしておくと、後で説明を求められた際にもスムーズです。
経費化を考えるなら「説明責任」を意識しておく
スマートウォッチを経費にできるかどうかは、税務署に対して合理的に説明できるかに尽きます。
そのためには、次のような準備をしておくと安心です。
- 領収書・明細を保管しておく
- 購入目的・用途を明文化（稟議書・社内メモ・個人ノートなどでもOK）
- 使用者と業務内容を明確にしておく
- スマホやパソコンとの使い分けを整理しておく
「なぜスマートウォッチでなければならないのか？」という問いに、自分なりの言葉で答えられるようにしておくことがポイントです。
経費で落とすリスクと注意点
スマートウォッチを経費で落とす際には、次のような点にも注意しておきましょう。
- 高額モデルは慎重に
業務に必要な範囲を超えた高価なモデルは「ぜいたく品」とみなされる恐れがあります。 - 私物兼用は避ける
私的利用が明らかだと経費として認められません。業務専用のデバイスとして使う意識が大切です。 - 税務調査に備える
経費計上を否認された場合、追徴課税や修正申告が必要になることもあります。リスクを理解しておきましょう。
経費として計上できるかどうかは、税務署の判断次第という面もあります。
グレーゾーンに感じたら、税理士に確認しておくのが最も確実です。
スマートウォッチを経費にするなら“合理的な説明”を
ここまで見てきたように、スマートウォッチは条件を満たせば経費にできるアイテムです。
しかし同時に、私用との線引きが難しいデバイスでもあるため、扱い方には注意が必要です。
業務効率化や連絡手段としての必要性を明確にし、購入目的・使用状況・金額の妥当性を整理しておく。
そして「業務で実際に使っている」ことを説明できるようにしておく。
この2つを意識しておくだけでも、税務上のリスクは大きく減らせます。
便利で生産性を高めてくれるスマートウォッチ。
せっかくなら上手に経費処理して、ビジネスの味方にしていきましょう。
スマートウォッチを経費で落とせる？ビジネス利用時の注意点と条件【まとめ】
最後にもう一度整理します。
スマートウォッチを経費で落とすための基本ポイントは以下の通りです。
- 業務目的が明確であること
- 使用者・用途・管理体制を整えておくこと
- 金額に応じた正しい会計処理を行うこと
- 私用との区別をはっきりさせること
- 税務調査でも説明できるように記録を残しておくこと
この5点を意識すれば、スマートウォッチを安心してビジネスの経費にできる可能性が高まります。
「便利なガジェットをどう活かすか」は経営判断のひとつ。
使い方とルールを整理して、賢く取り入れていきましょう。
