ワイヤレスイヤホンを使っていると、音が遅れて聞こえることってありますよね。動画を見ていると口の動きと声がずれたり、ゲームの効果音がワンテンポ遅れたり。
「Bluetoothの遅延って仕方ないの?」と思うかもしれませんが、実はちょっとした設定や環境の工夫で、かなり改善できるケースが多いんです。
この記事では、ワイヤレスイヤホンの遅延が起きる原因と、その直し方をわかりやすく解説します。
なぜワイヤレスイヤホンで音が遅れるのか
まず、遅延が起きる仕組みを知っておくと、対策が理解しやすくなります。
ワイヤレスイヤホンは、Bluetoothという無線通信で音を送受信しています。このとき音は「圧縮→送信→解凍→再生」という流れを経るため、どうしても少し時間がかかります。
このわずかなズレが「レイテンシー(遅延)」です。
特に動画やゲームのように映像と音の同期が重要なコンテンツでは、100ミリ秒(0.1秒)程度の遅延でも人によっては違和感を覚えることがあります。
音楽再生だけなら気にならないことも多いですが、映像とセットになるとズレが目立ってしまうんです。
原因①:Bluetoothコーデックの違い
遅延の大きな原因は、Bluetoothの「コーデック」と呼ばれる音声圧縮方式です。
送信側(スマホ・PC)と受信側(イヤホン)がどんなコーデックに対応しているかで、音の伝わるスピードが変わります。
代表的なコーデックの特徴は以下の通り。
- SBC:最も標準的だが、遅延が200ms前後と大きめ
- AAC:iPhoneで採用。音質は良いが、Androidでは遅延が出やすい
- aptX Low Latency:約30~40msで、映像やゲームにも最適
- aptX Adaptive:低遅延と高音質のバランスが良い
- LC3(LE Audio):次世代規格。遅延・消費電力ともに優秀
ここで大事なのは、「両方の機器が同じコーデックに対応していなければ意味がない」という点。
スマホがaptX Adaptive対応でも、イヤホンがSBCしか使えなければSBCで通信されてしまいます。
つまり、「送信側と受信側の対応を揃える」ことが、遅延を減らす第一歩です。
原因②:通信環境と距離の問題
Bluetoothは2.4GHz帯という電波を使っています。これはWi-Fiや電子レンジ、マウス・キーボードなども使っている帯域。
そのため、電波が混雑していると通信が不安定になり、音が遅れたり途切れたりすることがあります。
また、スマホとイヤホンの距離が遠いと、それだけ信号の遅れが大きくなります。ポケットやバッグの奥に入れていると、体が遮蔽物になって遅延が増すケースも。
電波干渉と距離、この2つも意外と見落とされがちなポイントです。
原因③:デバイス設定やソフトウェアの影響
遅延の原因はハードだけではありません。
スマホやPC側の設定、ドライバーの状態、イヤホンのファームウェアなど、ソフトウェア的な要因も関係します。
例えば、古いBluetoothドライバーを使っていると遅延が出ることがあります。
また、WindowsやMacでは「音質改善」「サウンドエフェクト」といった機能がオンになっていると、音声処理が余分に行われて遅延が増すこともあります。
イヤホン側も同じで、メーカーのアプリからファームウェアを更新することで、低遅延モードが追加されたり、同期ズレの修正が行われるケースもあります。
すぐにできる遅延改善の方法
では、実際にどんな対策ができるのか。
ここからは、スマホ・PC・イヤホンそれぞれの視点で「直す方法」を紹介します。
スマホ・タブレットの場合
- Bluetooth設定をリセットする
一度ペアリングを削除して再接続。古い接続情報が残っていると遅延が出ることがあります。 - 開発者向けオプションでコーデックを変更(Android)
「設定 → 開発者向けオプション → Bluetoothオーディオコーデック」で、対応しているものに切り替えてみましょう。
aptX AdaptiveやaptX Low Latencyが選べるなら、それを優先するのがおすすめです。 - 絶対音量を無効にする
「絶対音量」とはスマホとイヤホンの音量を連動させる機能。これをオフにすることで、遅延が改善することもあります。 - 他のBluetooth機器を切断
同時に複数の機器と接続していると、転送が不安定になりやすいです。使わないデバイスはBluetoothをオフに。
PC(Windows・Mac)の場合
- ドライバーを更新する
Bluetoothアダプタのドライバーを最新に。古いドライバーは遅延の原因になります。 - サウンドエフェクトをオフにする
「サウンド設定 → デバイスのプロパティ → 詳細 → 音質改善を無効化」で余分な処理をカット。 - USBドングル(専用アダプタ)を使う
内蔵Bluetoothよりも、aptX Low Latency対応の外付けドングルの方が安定する場合があります。
ゲームや動画編集用途では特に効果的です。
ワイヤレスイヤホン側の設定
- 低遅延モード(ゲーミングモード)をONにする
最近のイヤホンには、専用アプリやタップ操作で切り替えられるものがあります。これだけで体感が大きく変わることも。 - ファームウェアを更新する
メーカーアプリで最新バージョンにアップデート。バグ修正や新コーデック対応が行われている場合があります。 - 充電をしっかり行う
バッテリーが少ないと通信出力が落ち、遅延や途切れが増えることがあります。
遅延を減らす環境づくりのポイント
・スマホやイヤホンの距離をできるだけ近く
・Wi-Fiルーターを5GHz帯に切り替える
・電子レンジなど干渉源の近くで使わない
・金属製の机や棚の上で使わない
・左右のイヤホンが独立通信(左右同時受信)型なら安定しやすい
これらは地味ですが、実際に効果を感じやすい改善策です。
特に2.4GHz帯の混線は、遅延の「隠れた犯人」と言われています。
用途別おすすめ対策
動画・映画を見るとき
映像と音のズレを防ぐには、「低遅延モード」または「オーディオ同期補正」をオンに。
テレビや動画アプリに「リップシンク補正」がある場合は、それも試す価値ありです。
ゲームをする場合
30ms以下の遅延が理想。
aptX Low Latency対応イヤホンか、ゲーミングモード搭載モデルを選ぶと快適です。
もしBluetoothがどうしても遅いと感じるなら、専用ドングルや有線接続も検討しましょう。
音楽を楽しむ場合
音質を優先したいなら、多少の遅延は気にせず高音質コーデック(LDACなど)を選ぶのもアリ。
「高音質」と「低遅延」はトレードオフなので、使い分けが大切です。
今後のBluetooth進化にも注目
次世代規格の「LE Audio」や「LC3コーデック」は、これまでよりも大幅に遅延が少なく、省電力にも優れています。
対応スマホやイヤホンも2025年以降どんどん増える見込み。
今後は“無線でもほぼ遅延ゼロ”に近い体験ができるようになりそうです。
買い替えを考えている人は、「Bluetooth5.3以上」「LC3対応」「ゲーミングモード搭載」などをチェックしておくと後悔しません。
まとめ:ワイヤレスイヤホンの遅延を直すには?
Bluetoothイヤホンの遅延は、完全には避けられない部分もあります。
しかし、原因を理解して正しい設定を行えば、ほとんどのケースで違和感を減らすことができます。
- コーデックを確認して、送信・受信の対応を揃える
- スマホ・PCのBluetooth設定やドライバーを更新する
- 低遅延モードやゲーミングモードを活用する
- 電波干渉や距離を見直す
これらを実践するだけで、動画やゲームの体験がぐっと快適になります。
ぜひ一度、自分の環境を見直してみてください。
あなたのワイヤレスイヤホンも、ちょっとの工夫で“音ズレ知らず”になるかもしれません。
