ランニングやサイクリングをしていると、Garmin(ガーミン)のウォッチに表示される「VO2max(最大酸素摂取量)」が気になりますよね。数値が上がると「体力がついた!」と嬉しくなり、下がると少し不安になる…。でもその数字、どこまで信じていいのでしょうか?
今回は、ガーミンのVO2max推定がどのように算出されているのか、実測値と比べてどれほど正確なのかを、最新の研究や実際のユーザー体験をもとにわかりやすく解説します。
VO2maxとは?運動能力を示す“有酸素の指標”
VO2max(ブイオーツーマックス)は、運動中に体がどれだけ効率よく酸素を使ってエネルギーを生み出せるかを示す数値です。簡単に言えば「持久力を数値化したもの」。単位は mL/kg/分 で、1分間に体重1kgあたりどれだけの酸素を取り込めるかを表します。
一般的に、値が高いほど持久力が高く、マラソンやトライアスロンなどの長距離スポーツに強くなります。
ただし、正確なVO2maxを測るには、呼気ガス分析装置を使った専門的な検査が必要です。スポーツ科学の研究所や一部のジムでしか受けられず、時間もコストもかかるのが現実です。
ガーミンはどうやってVO2maxを“推定”しているのか
ガーミンのVO2maxは、呼吸を測るわけではなく「走行ペース」と「心拍数」から統計的に算出しています。
このアルゴリズムは、フィンランドの生理学データ分析企業「Firstbeat Analytics」によるもの。Garminはこの技術を採用し、心拍数の上がり方とスピードの関係から“酸素消費能力”を割り出しているのです。
つまり、GarminのVO2maxはあくまで「推定値」。
呼吸を直接測定していないため、正確な実測値とは異なります。ただし、仕組み自体は科学的な根拠に基づいており、トレンドを追うには十分信頼できるとされています。
実測との比較:研究でわかった「意外と近い」結果も
実際にラボ(実験室)で測定したVO2maxとGarminの値を比較した研究はいくつかあります。
ある研究では、Garminウォッチの推定値と呼気ガス分析による実測値の差が 平均3.5ml/kg/分以内 に収まっており、誤差率95%という結果もありました。
一方で、他の研究では 約13%ほど高く表示される 傾向があるとの報告もあります。
つまり、「近い人もいればズレる人もいる」というのが現実。
特に、心拍センサーが正確に測れている場合や、走行データが安定している場合には、実測にかなり近い値が出やすいようです。逆に、センサーがズレたり、スプリントのような激しい動きを多く含む場合には誤差が大きくなりがちです。
ユーザー体験:近い人もいればズレる人も
Garminユーザーの体験談を見ても、評価は分かれます。
あるランナーは「ラボでの測定結果とGarminのVO2maxがほぼ一致した」と語っています。
一方で、別のユーザーは「GarminではVO2maxが51と出たが、実測では68だった」と大きな差を報告しています。
この差は、センサー精度やトレーニング環境、心拍数設定など、さまざまな要因が関係しています。
GarminのVO2maxを“正しい傾向を見るための参考値”として使っている人が多いのは、このためです。
どんな条件で精度が下がる?
GarminのVO2maxは、次のような条件でズレが生じやすくなります。
- 光学式心拍センサーが正確に動作していない(装着が緩い・腕の動きが激しいなど)
- 最大心拍数(Max HR)の設定が実際と合っていない
- 走行ペースが一定でない
- トレーニング時間が短すぎる
- 運動強度が低く、心拍数の変化が小さい
- 室内トレッドミルなどGPSを使わない活動で計測している
Garminの公式サポートでも、VO2maxを正しく推定するには「15分以上の屋外ランニング」「一定の速度と心拍数変化」が必要とされています。
また、精度を高めたいなら胸ベルト式の心拍センサーを併用するのがベストです。
実測との誤差が出る理由
では、なぜGarminの推定値と実測値に差が出るのでしょうか。主な理由は3つあります。
- 測定方法の違い
実測は呼吸ガスを直接分析しますが、Garminは心拍数と速度から“間接的”に推定します。そもそも測っている内容が違うのです。 - センサー誤差
光学式センサーは手首の血流を読み取る仕組みのため、寒さや振動、日焼けなどでも誤差が出やすい。 - 個人差
心拍数と酸素消費量の関係は人によって異なります。Garminはあくまで一般的な統計モデルに基づいているため、個々の特性までは反映できません。
精度を上げるコツ
GarminのVO2maxを少しでも正確にするには、次のポイントを意識してみてください。
- ユーザープロフィールを正しく入力する(年齢・性別・体重・身長)
- 最大心拍数(Max HR)を実測に近づける
- 胸ベルト式心拍計を使う(特に高強度トレーニング時)
- 同じ時間帯・同じコースで定期的に走る
- 1回のデータより“変化の傾向”を見る
こうした工夫をするだけでも、VO2max推定の信頼性はグッと上がります。
研究が示す「使い方次第で有用」なデータ
2025年に発表された研究では、GarminのようなスマートウォッチによるVO2max推定は、繰り返し使用することで精度が上がることが示唆されています。
特に、定期的に同条件でランニングを行う中級ランナーでは、2回目以降の測定で実測値との差が統計的に小さくなる傾向がありました。
つまり、GarminのVO2maxは“一発測定”よりも“継続測定”の方が価値がある、ということ。
日々のトレーニングで少しずつ上昇していくVO2maxの変化を見ることで、モチベーションやトレーニング負荷の目安として有効に使えます。
GarminのVO2maxはどこまで信じるべきか?
結論を言うと、「GarminのVO2maxはかなり便利な目安だけど、実測と完全に一致するわけではない」です。
誤差が少ない人も多い一方で、10〜15%のズレが出るケースも報告されています。
ただし、GarminのVO2maxは“数字の変化”を見るには非常に有用。
同じ条件下で記録を重ねていけば、自分のフィットネス状態のトレンドを把握するのに役立ちます。
まとめ:ガーミンのVO2max精度は本当に正確?実測値と比較して徹底検証
GarminのVO2maxは、科学的なアルゴリズムに基づく推定値であり、精度は日々進化しています。
実測値と比べても一定の相関があり、ランナーにとっては「自分の体力を可視化する」便利なツールです。
ただし、あくまで推定。
数字に一喜一憂するよりも、継続的な変化を見てトレーニングの成果を確認するのが正しい使い方です。
心拍センサーの精度や運動条件を整えれば、GarminのVO2maxはより信頼できる相棒になってくれるでしょう。
VO2maxを正しく理解し、自分の体の変化を「見える化」する。
その上で、「ガーミンのVO2max精度は本当に正確?実測値と比較して徹底検証」という疑問に対する答えは――
「完璧ではないけれど、使い方次第で非常に価値がある」、です。
