音楽制作を始めたばかりの人でも、PCの性能が作品づくりにどれほど影響するかはすぐに実感するはずです。ソフト音源やプラグインを重ねるたびに動作が重くなったり、録音中にノイズが入ったり──そんなストレスを減らすには、しっかりとしたスペックのPCを選ぶことが欠かせません。
そして実は、近年注目されているのが「ゲーミングPCをDTMに活用する」という選択肢。高性能な構成が特徴のゲーミングPCは、音楽制作にも相性が良いんです。ここでは、その理由と選び方をわかりやすく解説します。
ゲーミングPCがDTMに向いている理由
ゲーム用PCは「高負荷の処理を安定してこなす」ことを前提に作られています。つまり、リアルタイム演算が多いDTMとは非常に相性が良い。
たとえばCPU性能。DAW（Cubase、Studio One、Logic Proなど）で多くのトラックを同時再生するには、複数の処理を同時に行う能力が求められます。ゲーミングPCに搭載されるIntel Core i7やRyzen 7クラスのCPUなら、その点で申し分ありません。
また、ゲーミングPCは冷却性能が高く、長時間の作業でも安定して動作します。DTMは数時間のレコーディングやミックス作業が当たり前なので、熱によるパフォーマンス低下を防げるのは大きなメリットです。
つまり「快適さ」と「安定性」の両立。それが、ゲーミングPCを選ぶ最大の理由といえます。
DTMに必要な基本スペックを整理しよう
ここからは、音楽制作をスムーズに行うためにどの程度のスペックが必要なのかを具体的に見ていきます。ポイントはCPU、メモリ、ストレージ、そして静音性の4つです。
CPUは“Core i7以上”が安心
CPUはPCの“頭脳”。ここが弱いと、トラック数が増えるたびに処理が追いつかなくなります。
DTM初心者ならCore i5でも動かせますが、将来的に複雑な楽曲を作るならCore i7またはRyzen 7以上を推奨します。特にマルチコア・マルチスレッド対応のCPUなら、複数のプラグインを同時に動かしても安定します。
CPU性能が高ければ、リアルタイム録音中のレイテンシー（音の遅延）も減らせるため、演奏感覚が快適です。録音のタイミングずれを後で修正する手間も省けます。
メモリは“最低16GB・理想は32GB”
ソフト音源やエフェクトを多用するなら、メモリの容量が作品の自由度を決めると言っても過言ではありません。
16GBでも作業は可能ですが、複数のVSTを同時に使うとすぐに限界がきます。将来を見据えて32GBを選んでおくと安心です。プロ志向の方なら64GBまで積むのもあり。メモリは後から増設できる場合もあるので、拡張性もチェックしておきましょう。
ストレージは“SSD必須・1TB以上推奨”
DTMではプロジェクトファイルやサンプル音源など、容量を食うデータが山ほどあります。HDDだけのPCでは読み込みが遅く、作業効率が落ちるので、SSD搭載モデルを必ず選びましょう。
理想は「OS・DAW用SSD（500GB〜1TB）」＋「音源保存用SSDまたはHDD」という二段構え。
NVMe SSDなら読み書き速度が速く、大容量音源のロードも一瞬です。
静音性と冷却性能もチェック
DTMは録音作業を伴うため、ファンの音や振動がマイクに入ると致命的。
ゲーミングPCは性能面で優れている一方、GPU搭載モデルでは冷却ファンが大きく動作音が目立つ場合もあります。静音ファンを採用しているモデルや、水冷クーラー搭載タイプを選ぶと安心です。
また、PCケース内のエアフロー（空気の流れ）がしっかりしていると、熱暴走を防ぎ長時間の安定動作につながります。
GPU（グラフィックカード）は必要？
結論から言えば、DTM専用ならハイエンドGPUは不要です。
音楽制作は映像のように大量のグラフィック処理を行わないため、CPUとメモリが優先されます。
ただし、ゲーム配信やMV制作など「映像を扱う予定がある」なら、NVIDIA RTXシリーズなど中〜高性能GPUを搭載しておくと幅広く対応できます。
一方でGPUは発熱源にもなるため、録音時の静音性を重視する人は無理に高性能モデルを選ばなくても大丈夫です。
ゲーミングPCをDTM向けにカスタマイズするコツ
ゲーミングPCをそのまま使うよりも、少し手を加えることでDTM環境としての快適さが格段に上がります。
ここではすぐに実践できるポイントを紹介します。
メモリとストレージのアップグレード
ゲーミングPCの多くは16GBメモリが標準構成です。これを32GBに増設するだけで、DAWの安定性が大きく変わります。
また、内蔵SSDを1TBに拡張し、外付けの高速SSD（USB 3.2やThunderbolt対応）を音源ライブラリ専用にすると、ロード時間の短縮にもつながります。
オーディオインターフェースを活用する
PC内蔵サウンドカードでは、音質・レイテンシーの両面で限界があります。
FocusriteやSteinbergなどのオーディオインターフェースを導入すれば、入出力の安定性が上がり、録音・再生がより正確になります。USB接続が主流ですが、Thunderbolt接続モデルはさらに低遅延です。
ファン制御で静音化する
録音時にファン音が気になる場合は、BIOSや専用ソフトでファン回転数を調整したり、静音ケースを導入したりする方法もあります。
また、PCを机上ではなく床置きにしたり、防音マットを活用するのも効果的です。
WindowsとMac、どっちがDTMに向いている？
DTMにおいてはどちらのOSでも問題なく作業できます。
ただし、ゲーミングPCとしての拡張性やコスパを重視するならWindows 11、**Logic ProなどMac専用ソフトを使いたいならmacOS Sonoma**という選び方がおすすめ。
WindowsはBTOメーカー（マウスコンピューター、ドスパラ、パソコン工房など）でカスタマイズがしやすく、パーツ交換や増設が容易です。
一方Macはシステムの安定性と音楽制作ソフトとの親和性が高く、トラブルが少ない傾向にあります。自分の制作スタイルに合わせて選びましょう。
今選ぶならこのスペックを目安に
2025年現在、DTMとゲームを両立するなら以下の構成を基準に考えるとバランスが取れます。
- CPU：Intel Core i7 / Ryzen 7 以上
- メモリ：32GB（最低16GB）
- ストレージ：NVMe SSD 1TB以上＋外付けSSDまたはHDD
- GPU：GeForce RTX 3060 〜 GeForce RTX 4070クラス（映像制作もする場合）
- OS：Windows 11 または macOS Sonoma
- その他：静音ケース、USB 3.2 / Thunderbolt対応ポート多数
このくらいのスペックなら、プロ志向の音源ライブラリも快適に扱え、同時に最新ゲームも高設定でプレイできます。
長く使えるPCを選ぶために意識したいこと
DTM用PCは「長く安定して使えること」が大切です。
購入時に少し高くても、将来を見据えた余裕のある構成を選ぶ方が結果的にコスパが良い場合が多いです。
- 拡張性の確認：メモリスロットやM.2スロットの空きがあるか。
- 冷却効率：熱がこもりにくいケース構造か。
- 電源ユニット：容量に余裕があり、80PLUS認証の電源を選ぶと安心。
- 静音性：録音時のノイズを減らすために静音パーツを導入する。
こうした要素は見落としがちですが、制作環境のストレスを減らすための“静かな相棒”づくりには欠かせません。
DTMに最適なゲーミングPCを選んで快適な制作を
「DTMに最適なゲーミングPCの選び方」というテーマで見てきた通り、ゲーム用マシンの高性能さは音楽制作でも確実に役立ちます。
CPUとメモリにしっかり投資し、静音性やストレージ構成を工夫すれば、プロ並みの制作環境が自宅で実現できます。
結局のところ、DTMに必要なのは“安定して動くPC”です。
自分の制作スタイルに合わせて最適な1台を選べば、音楽づくりの集中力も創造力も一段と高まります。
快適なゲーミングPCで、あなたのサウンドをもっと自由に形にしていきましょう。
