最近、Apple Watchは健康管理やフィットネスのための「身近な医療サポートツール」として人気が高まっています。心拍数、睡眠、血中酸素など、まるで“手首のドクター”のように私たちの体調を見守ってくれる便利な存在ですよね。
でも、ペースメーカーを使っている人にとっては少し注意が必要です。なぜなら、スマートウォッチの一部機能が、体内の医療機器に影響を与える可能性があるからです。
この記事では、ペースメーカー利用者が「安心してスマートウォッチを選び、使うためのポイント」を分かりやすく解説します。
なぜペースメーカーとスマートウォッチの相性が話題になるのか
ペースメーカーは、心臓のリズムを電気的にコントロールする精密機器。
一方、スマートウォッチは磁石や電波、微弱電流などを使って健康データを測定するウェアラブルデバイスです。
つまり、どちらも“電気”を扱う機器。そのため、互いの電磁波や磁気が干渉してしまう可能性があるのです。
実際、ペースメーカーや除細動器（ICD）などの植込み型デバイスは、外部の磁場によって一時的に動作が変わることがあります。特に「磁気モード（Magnet Mode）」と呼ばれる状態が誘発されると、デバイスが安全モードに切り替わり、本来の働きが制限されることもあります。
AppleやSamsungなどのメーカーも、「植込み型医療機器のある人はスマートウォッチやその充電器を心臓の上に近づけないでください」と公式に注意喚起をしています。
近年の研究が示す最新知見：すべてが危険ではない
「スマートウォッチは使えないの？」と不安になるかもしれませんが、実際にはそうとは限りません。
ここ数年で行われた複数の研究では、多くのスマートウォッチが安全に使用できるケースが多いと報告されています。
たとえば、2020年以降に発表された実験では、Apple WatchやFitbitなどの代表的なモデルをペースメーカー装着者が着用しても、有害な電磁干渉（EMI）は確認されなかったという結果が出ています。
また、光学式センサー（LEDで脈拍を測るタイプ）は磁場や電流を使わないため、基本的には安全とされています。
つまり、「どの機能を使うか」が安全性の鍵になるのです。
注意すべき機能と使用シーン
一方で、ペースメーカー利用者が気をつけるべき“リスク要因”も明確になってきています。
以下のポイントは特に要注意です。
1. バイオインピーダンス（Bioimpedance）測定機能
体に微弱な電流を流し、その反応で体組成や水分量を測定する技術です。
この電流がペースメーカーの信号を混乱させるおそれがあるため、体組成計機能を備えたスマートウォッチは避けた方が無難です。
代表的なのは、体脂肪・筋肉量・水分量を測れる高機能モデル。便利ですが、医療機器との相互作用が指摘されています。
2. ワイヤレス充電・磁気アクセサリ
マグネット式の充電器やバンドは、ペースメーカーの近くで強い磁場を発生させます。
充電時に時計を胸元で保持したり、磁石入りバンドを使うのはNG。特に就寝時の充電は、体から離れた場所に置くのが安心です。
3. スマホとの連携距離
スマートウォッチはBluetoothやWi-Fiを介してスマホと通信しますが、これ自体の影響はほぼ心配ありません。
ただし、スマホ本体にマグネットが付いたケースやリングを使う場合は、ペースメーカーに近づけないよう注意しましょう。
医師がすすめる「安全な使い方」の基本
ペースメーカー利用者がスマートウォッチを取り入れる場合、次のポイントを押さえておけば安全性はぐっと高まります。
- 植込み部位から15cm以上離して使う
時計は基本的に手首なので問題ありませんが、胸ポケットに入れたり、ネックストラップで胸元に下げたりするのは避けましょう。 - 充電中は体から離す
特にマグネット式やワイヤレス充電タイプは、ベッド脇ではなくテーブルなどに置いて充電を。 - 体組成測定や電流を使う機能はオフに
心拍・歩数・睡眠計測など、光学センサーだけを利用する設定にするのが安心です。 - 購入前に医師と相談する
自分のペースメーカーのメーカーや型式によって影響の受け方が違います。
医療機関では「安全に使える機種リスト」や推奨距離を教えてくれる場合もあります。 - 違和感を感じたらすぐ外す
めまい、胸の違和感、不整脈のような症状を感じたら、使用を中止して医師へ相談しましょう。
安全性を考慮したスマートウォッチの選び方
ペースメーカー利用者が選ぶ際には、以下の3つの条件を基準にすると失敗しません。
1. 光学式センサー中心のモデルを選ぶ
LEDライトで血流を検出するタイプ（例：心拍数・睡眠トラッキングなど）は安全性が高く、多くの医師も推奨しています。
2. 体組成測定・電流計測をしないモデル
“体脂肪率”や“水分バランス”を測るものは避ける。これらは体に電流を流す仕組みです。
3. 公式サポートに「医療機器への配慮」が明記されているブランド
Apple Watch、Garmin、Fitbitなどはサポートページに「植込み型デバイスとの距離・注意点」が具体的に書かれています。
こうしたメーカーはユーザー安全への配慮が厚く、安心材料になります。
よくある質問（Q&A）
Q1：Apple Watchはペースメーカーに悪い？
→ 直接的な影響は確認されていません。ただし、マグネット充電器や体組成機能付きのモデルには注意が必要です。
Q2：夜に着けたまま寝ても大丈夫？
→ 基本的にはOK。ただし、胸を圧迫するような姿勢や充電中の装着は避けましょう。
Q3：医師に相談する時、何を伝えればいい？
→ 使用予定のスマートウォッチ名、使いたい機能、装着位置（手首か胸ポケットか）を伝えると、具体的なアドバイスがもらえます。
未来に向けて：共存できるテクノロジーへ
医療とテクノロジーの距離は、年々近づいています。
実際、スマートウォッチの一部機能（心電図測定など）は、医療現場でも補助的に使われることが増えており、「医療機器と共存するウェアラブル時代」が到来しています。
ただし、便利さの裏側には必ず「安全への配慮」が必要。
ペースメーカー利用者がスマートウォッチを使うときも、「距離」「機能」「相談」の3点を意識すれば、安心してテクノロジーの恩恵を受けられます。
ペースメーカー利用者必見！Apple Watchの安全な選び方と注意点【まとめ】
ペースメーカーを使っているからといって、スマートウォッチを諦める必要はありません。
大切なのは、次の3つです。
- 距離をとる（15cm以上）
- 電流・磁気を使う機能を避ける
- 医師と相談してから使う
これらを守れば、スマートウォッチは「危険なガジェット」ではなく、あなたの健康を支える“心強い味方”になります。
安心とテクノロジーを両立させて、自分らしい健康管理を楽しんでいきましょう。
