最近、コンパクトなサイズで高性能を発揮する「ミニPC」が注目を集めています。その中でも特に話題を呼んでいるのが、AMDの最新統合GPU「Radeon 890M」を搭載したモデル。この記事では、その実力を徹底検証し、実際にどれだけゲームが快適に動くのか、そしておすすめのミニPCを紹介します。
Radeon 890Mとは?ミニPCに搭載される次世代iGPUの正体
まずは、Radeon 890Mの概要から見ていきましょう。
Radeon 890Mは、AMDが2024年に発表した最新のモバイル向けGPUで、同社の「RDNA 3.5」アーキテクチャを採用しています。内蔵GPU(iGPU)としては史上最速クラスで、搭載するプロセッサ「Ryzen AI 9 HX 370」とともに、ミニPC市場に革命を起こしている存在です。
構成は16基のCompute Unit(CU)、合計1,024基のシェーダーを備え、最大クロックは約2.9GHz。
これまでの統合GPU(たとえばRadeon 780M)と比べても明確に性能が向上しており、グラフィック性能は従来比で2〜3割ほどの伸びを見せています。
さらに、DisplayPort 2.1やHDMI 2.1に対応し、4K・8Kディスプレイ出力も可能。
つまり「小型PCでもマルチモニターで高解像度作業が快適にできる」環境を実現しているのです。
実際のゲーミング性能:どこまで遊べるのか?
気になるのは、実際にどの程度のゲームが快適に動作するか。
結論から言うと、1080p(フルHD)であれば多くのタイトルが快適にプレイ可能です。
海外レビューサイトによるベンチマークでは、「Horizon Forbidden West」を1080p・低設定・フレーム生成オンで平均70fps前後を記録。
また、「Forza Horizon 5」では1080p・中設定で100fps超えという結果も報告されています。
これは、従来のRadeon 780Mと比較して約20〜25%の性能向上。
さらに、外部GPU非搭載ながら「GTX 1650クラス」に迫る実力を発揮するとの評価もあります。
つまり、Radeon 890M搭載ミニPCなら——
『Apex Legends』『Fortnite』『原神』『FF14』など、軽〜中量級タイトルはほぼ快適。
重めのAAAタイトルも設定を少し調整すれば十分プレイ可能です。
ベンチマークだけでは分からない“実用面”の注意点
いくらスペックが高くても、実際に使うときに気をつけるべきポイントがあります。
それが「冷却性能」と「メモリ帯域」、そして「電力制限(TDP)」です。
Radeon 890Mは高性能なぶん、発熱量も増加しています。
小型筐体では放熱が追いつかないと、GPUクロックが自動的に下がってしまう(サーマルスロットリング)ため、性能が伸び悩むケースもあります。
購入時は、冷却システムがしっかりしたモデルを選ぶのが重要です。
また、iGPUはCPUメモリと共有するため、メモリ構成もパフォーマンスに直結します。
デュアルチャネル構成かつDDR5-6400以上を搭載する機種なら、ベンチマーク通りの性能を発揮しやすいです。
シングルチャネル構成のモデルは避けたほうがよいでしょう。
さらに、TDP設定によってもパフォーマンスは変動します。
低消費電力モードでは最大性能を引き出せず、逆に高TDP設定(45W前後)ならフレームレートが伸びやすくなります。
Radeon 890M搭載ミニPCのおすすめモデル
ここからは、実際に日本国内で購入できる代表的なRadeon 890M搭載ミニPCを紹介します。
GEEKOM A9 Max AI ミニPC
Ryzen AI 9 HX 370+Radeon 890Mを搭載した注目機種。
32GB DDR5メモリ、2TB SSD構成まで選べ、USB4・2.5G LAN・Wi-Fi 7を備えた万能モデルです。
価格は約15万円前後と、性能を考えればかなりコスパ良好。
冷却も強化されており、4K出力・マルチディスプレイ環境にも対応しています。
軽いゲームからクリエイティブ作業まで幅広くこなせる一台です。
MINISFORUM X1 Pro 370
こちらもRyzen AI 9 HX 370+Radeon 890M構成。
最大64GBメモリ・1TB SSDなど上位仕様に対応しており、冷却ファンが大型化されている点も魅力。
筐体デザインはシンプルながら高質感で、ビジネスにも馴染みます。
価格は20万円前後ですが、安定動作と静音性を求めるならおすすめです。
GPD WIN Mini 2025
ゲーム好きならこのポータブルタイプにも注目。
Radeon 890Mを搭載しつつ、手のひらサイズで携帯できるゲーミングUMPCです。
バッテリー駆動でも1080pで60fps級を実現し、外出先での軽ゲーやSteamタイトルも快適。
価格は17万円前後で、持ち運び重視のユーザーにぴったりです。
ミニPCを選ぶときのポイント
購入前に、次のチェック項目を押さえておきましょう。
- 冷却構造:デュアルファンや大型ヒートパイプ搭載モデルを選ぶ
- メモリ構成:デュアルチャネル&高速DDR5(6400MHz以上)
- 電源設計:45W以上のTDP設定で動作可能か
- ストレージ:NVMe SSD対応、容量は最低1TBを推奨
- ポート数:USB4、HDMI2.1、DisplayPort、LANなどをチェック
- 静音性とサイズ感:常時稼働させるなら静音モデルを選ぶ
こうした要素を抑えれば、性能を最大限引き出しつつ、快適なゲーム・作業環境を構築できます。
ゲーム以外の活用シーンにも強い
Radeon 890M搭載ミニPCは、ゲームだけでなく動画編集・AI処理・4K配信など、幅広い用途に対応します。
特にRyzen AIシリーズでは、AIエンジンを内蔵しているため、音声認識や画像処理の高速化など、AI支援タスクにも強いのが特徴。
さらに、低消費電力で動作するため、24時間稼働のホームサーバーやメディアセンター用途にも適しています。
オフィスワークと趣味の両立を求める人にとって、理想的な“デスクの相棒”になるでしょう。
Radeon 890M搭載ミニPCは「次世代のスタンダード」になるか
ここ数年、ミニPCは「省スペース・省電力」だけでなく「高性能化」の波に乗っています。
Radeon 890Mの登場によって、統合GPUでも本格的なゲーミングやクリエイティブ作業が可能になりつつあります。
もちろん、ディスクリートGPU(独立GPU)にはまだ及びませんが、
“コンパクトさ・静音性・コスパ”という三拍子が揃ったRadeon 890M搭載ミニPCは、日常使いからゲームまで幅広くこなせる万能マシンです。
まとめ:Radeon 890M搭載ミニPCの実力とおすすめの選び方
Radeon 890M搭載ミニPCは、これまで「iGPUでは物足りない」と感じていた人にこそ試してほしい新世代の選択肢です。
1080pでのゲーミングや軽い動画編集なら十分に快適。
しかも、省スペースで電力効率も高いというメリットがあります。
購入する際は、冷却性能・メモリ構成・TDP設定の3点を重視すること。
その上で、GEEKOM A9 MaxやMINISFORUM X1 Pro 370のようなモデルを選べば間違いありません。
次世代のミニPCは、もはや“サブ機”ではありません。
Radeon 890Mという強力なiGPUを搭載した小さなPCが、あなたのメインマシンになる日も近いでしょう。
