ランニングウォッチとして人気の高い「Garmin(ガーミン)」。日々のトレーニングを記録できるだけでなく、VO2max(最大酸素摂取量)や「予想タイム」といった便利な指標も教えてくれるのが魅力です。
ところが、SNSなどでは「ガーミンの予想タイムが速すぎる」「このタイムで走れたら夢のよう」といった声も多く見かけます。
なぜそんなに速く表示されてしまうのか。この記事では、その仕組みとズレの原因、そして予想タイムを現実的に活用する方法をわかりやすく解説します。
Garminの予想タイム機能とは?仕組みを簡単に整理
ガーミンの予想タイム(レース予測)は、VO2maxをベースにした「理論上の完走タイム」です。
ウォッチが記録する心拍数、走行ペース、トレーニング履歴をもとに、現在の体力状態から「5km・10km・ハーフ・フルマラソンをこれくらいで走れる」と計算しています。
ただし、ここで重要なのは「理論上」という点。
Garminが示すタイムは、あくまで“理想的な条件下”で“最大限に能力を発揮できた場合”の結果です。天候、地形、疲労、補給など、現実のレースに関わる要素は考慮されていません。
そのため「実際に走ると全然届かない」と感じる人が多いのは、ごく自然なことなのです。
なぜガーミンの予想タイムは速すぎるのか?
1. VO2maxに依存した理論値だから
Garminの予測モデルは、ほぼVO2max(心肺能力)のみを基準にしています。
確かにVO2maxはスタミナやスピードを測る上で重要な指標ですが、それだけでマラソンの結果を決めることはできません。
実際のレースでは、
- 筋持久力(脚が最後まで持つか)
- ランニングエコノミー(効率的に走れるか)
- エネルギー補給の計画
- ペース配分やメンタルの安定
といった複数の要素が絡みます。
VO2maxが高くても、脚やフォームが耐えられなければ、理論通りのペースは維持できません。
2. 理想コンディションを前提にしている
Garminのアルゴリズムは、疲労ゼロ、気温や湿度が最適、体調万全といった「完璧な環境」を前提にしています。
つまり「潜在能力の上限値」を示しているだけで、「現実の再現値」ではないのです。
そのため、一般ランナーが実際にそのタイムを出すには、トレーニング量・走行距離・経験すべてが十分に揃っている必要があります。
理論値を鵜呑みにすると、無理なペースで走って途中失速、という結果になりかねません。
3. 練習データの偏りやセンサー誤差
予想タイムは、日々のランニングデータをもとに算出されます。
もし練習がジョグ中心だったり、スピード練習が少なかったりすると、VO2maxが過大または過小に推定されることがあります。
また、手首型の光学式心拍センサーは装着具合や気温で誤差が出やすいです。心拍データがずれるとVO2max推定も狂い、結果として「実力より速い」タイムが出てしまうこともあります。
実際のランナーが感じる“ズレ”のリアル
ランナーの多くが「ガーミンの予想タイム=夢のタイム」と感じています。
フルマラソンの例では、予想タイムが実際より20〜40分も速いというケースも珍しくありません。
これはGarminのアルゴリズムが悪いわけではなく、むしろ「あなたの潜在能力はこのくらいあるかもしれない」という“ポテンシャル指標”だからです。
言い換えれば、「この数値を実現するには何が足りないのか?」を知るきっかけになるのです。
予想タイムを現実に近づけるための工夫
1. 練習データを充実させる
ガーミンは数週間分のデータをもとに予想を出しています。
したがって、継続的に多様な練習(ジョグ・インターバル・ペース走・ロング走など)を行うことで、より実力に近い予想値になります。
特にフルマラソンを目標にしている人は、30km走など長距離トレーニングを定期的に入れると、脚の持久力を反映しやすくなります。
2. 心拍計を見直す
手首式で数値が不安定な場合、胸ベルト式心拍計を使うと精度が大きく改善します。
正確な心拍数が取れれば、VO2maxの推定も安定し、予想タイムの信頼性が高まります。
3. コンディションを整える
ガーミンの数値は「良い状態のあなた」を前提にしています。
睡眠不足、栄養バランスの乱れ、疲労の蓄積があると、どんなに理論上速くても実際の走りには反映されません。
走る前日の休養、補給、気温対策も“予想タイムに近づく鍵”です。
4. レース当日の条件を考慮する
レース本番では、気温・風・コースの起伏などが結果を左右します。
そのため、ガーミンの予想タイムをそのまま目標にするのではなく、現実的なマージンを設けましょう。
たとえば予想タイムの+5〜10%を目安にすることで、無理のないペース配分ができます。
5. 予想タイムとの差を“課題発見”に使う
予想より大幅に遅かった場合は、「心肺能力は十分でも筋持久力が弱い」「後半にフォームが崩れる」など、弱点を見直すチャンスです。
練習メニューを調整することで、次第に予想タイムとのギャップが縮まっていきます。
Garminの予想タイムは「モチベーション指標」として使う
ガーミンの予想タイムは、現状の自分を冷静に見つめるための“鏡”のような存在です。
その数値を「絶対に出さなきゃいけない目標」と思うとプレッシャーになりますが、「ここまで伸ばせる可能性がある」と考えれば、モチベーションの源になります。
特にトレーニングを積み重ねるうちに、予想タイムが少しずつ現実に近づいていくのを見るのは、とても励みになります。
大切なのは「数字に振り回されないこと」。
Garminが示すのは、あくまで“理論上の自分”。現実の自分と向き合いながら、少しずつその差を縮めていくことこそ、ランニングの楽しさです。
まとめ:ガーミンの予想タイムが速すぎる?原因と改善方法を解説
ガーミンの予想タイムが速すぎると感じるのは、多くのランナーに共通する悩みです。
その原因は、VO2maxを中心にした理論値、データの偏り、現実との環境差など、いくつもの要因が関係しています。
けれども、それを「現実離れ」と否定するのではなく、「今の自分のポテンシャルを教えてくれる数値」として活かすことが大切です。
練習データを積み重ね、センサーの精度を高め、コンディションを整えることで、ガーミンの予想タイムは少しずつ現実に近づいていきます。
数字はただの指標。
走るのは、いつだってあなた自身です。
