TAG Heuer（タグ・ホイヤー）という名前を聞くと、多くの人がまず思い浮かべるのは「スイスの高級時計ブランド」だろう。モータースポーツとの関係も深く、精密で力強いクロノグラフを数多く生み出してきた老舗だ。
そんなブランドがスマートウォッチ市場に参入してから数年。果たして「高級感」と「機能性」、この一見相反する要素を本当に両立できているのだろうか？
ここでは、最新モデルの仕様や過去シリーズの進化、実際の使用感までをまとめながら、TAG Heuerのスマートウォッチがどんな存在なのかを掘り下げていく。
高級時計ブランドが挑むスマートウォッチの世界
TAG Heuerがスマートウォッチを初めて発表したのは2015年。機械式時計の伝統を受け継ぐブランドが、あえてデジタル領域に踏み込んだというニュースは当時大きな話題を呼んだ。
以来「Connected」シリーズとして進化を重ね、現在では第5世代にあたる「TAG Heuer Connected Calibre E5」が登場している。
TAG Heuerが掲げるコンセプトは明快だ。
“デジタルでも、ラグジュアリーであること。”
この哲学を軸に、スイスメイドの外装技術とスマート機能を融合させている。
最新モデル「TAG Heuer Connected Calibre E5」とは
最新世代のCalibre E5は、これまでのWear OSから独自の「TAG Heuer OS」へと進化した点が大きな特徴だ。
iPhoneとの連携がよりスムーズになり、操作性やレスポンスも向上している。
デザインは45mmと40mmの2サイズ展開。ケース素材にはステンレススチールやチタンを使用し、ベゼルにはセラミック、風防はサファイアクリスタルと、まさに“高級時計の素材構成”そのもの。防水性能は50m、ディスプレイは1.39インチのAMOLEDで、視認性も高い。
センサー類も充実しており、心拍数・GPS・コンパス・高度・加速度などを正確に測定。スポーツトラッキングにも十分対応している。バッテリーは約1日半持続し、30分の充電で1日分をカバーできる高速充電機能を備える。
これだけ聞くと、機能性も十分と思えるが、真価は“見た目と使い心地”にある。質感はラグジュアリーそのもので、クラウンやラグの仕上げもまさにTAG HeuerのDNA。手に取った瞬間、スマートウォッチというより高級機械式時計を思わせる重厚感がある。
一世代前「TAG Heuer Connected Calibre E4」もまだまだ現役
Calibre E4は今も人気の高いモデルだ。Wear OS搭載でGoogleサービスとの親和性が高く、アプリも豊富に使える。45mmと42mmのサイズ展開で、特に42mmモデルはビジネスユースにも馴染みやすい。
素材はステンレススチールやチタン、ベゼルはセラミック。サファイアクリスタルガラスの透明感と傷のつきにくさは健在だ。GPS・心拍・気圧センサーも搭載し、スポーツシーンでも活躍する。
レビューでは「最も美しいスマートウォッチのひとつ」と評されることも多い。確かに、Apple WatchやGarminなどの“機能主導型”と比べると、TAG HeuerのConnectedは「装飾品」としての完成度が段違いだ。
デザインと素材に宿る“高級感”
TAG Heuerのスマートウォッチを語るうえで欠かせないのが、素材と仕上げだ。
・ケース：チタンやステンレススチール
・ベゼル：耐傷性に優れたセラミック
・風防：サファイアクリスタル
・バンド：ラバー、ステンレス、レザーなど多彩
この素材構成だけでも、一般的なスマートウォッチとは一線を画している。細部のポリッシュ仕上げや、ラグ部分の立体感、重量バランスまで計算されており、「高級時計を着けている」という満足感を得られるのが最大の魅力だ。
また、ウォッチフェイスもTAG Heuerの伝統を感じさせるクロノグラフ風デザインが豊富。クラシックな針表示からモダンなデジタル表示まで自在に切り替えられ、スーツにもカジュアルにも馴染む。
スマートウォッチとしての実力
一方で、機能面も見逃せない。Calibre E4・E5ともにGPSや心拍センサーを搭載し、ランニング・サイクリング・スイミングなど各種ワークアウトに対応する。TAG Heuer独自の「Sports App」では距離、ペース、心拍、カロリーなどを詳細に記録できる。
さらにゴルフ専用アプリ「TAG Heuer Golf」も高い評価を得ており、世界中のゴルフコースを3Dマップで表示。ショットの距離やスコア管理まで行える。これが他のブランドにはない強みだ。
通知や音声アシスタント、天気、音楽コントロールなど日常機能も一通り網羅。特にE5ではUIが大幅に改良され、滑らかな操作感を実現している。
両立の課題 ― 機能の限界と価格のバランス
完璧な両立とは言い切れない部分もある。
まずバッテリー持ちは1日半程度で、常時心拍計測やGPSを多用する場合は毎日充電が必要だ。
また、Wear OS時代のモデルではアップデート対応が限られることもあり、長期的なソフトウェアサポートではAppleやSamsungに劣る。
そして価格。TAG Heuer Connectedはおおむね25万円〜40万円台と、一般的なスマートウォッチの数倍に達する。
ただし、それは“ブランドと仕上げ”を含めたトータルの価値と考えるべきだろう。スマート機能に加えて「高級時計としての存在感」を求める人にとって、この価格帯は納得できる。
TAG Heuerスマートウォッチを選ぶべき人
・機能だけでなく所有する喜びを感じたい人
・ビジネスでも違和感なく着けられるスマートな外観を重視する人
・スポーツも嗜むが、デザイン性を妥協したくない人
・Apple Watchのデザインに物足りなさを感じている人
これらに当てはまるなら、TAG Heuer Connectedは極めて魅力的な選択肢になる。
単なるガジェットではなく、「身につけるステータス」として機能する数少ないスマートウォッチだ。
高級感と機能性、そのバランスの答え
結論から言えば、TAG Heuerのスマートウォッチは「高級感と機能性の両立」をほぼ実現している。
ただし、機能の“幅広さ”ではなく、“質の高さ”で勝負している点がポイントだ。
洗練されたデザイン、精巧な仕上げ、そして日常を支える基本性能。
つまりTAG Heuer Connectedは、スマートウォッチの形をした“高級時計”なのである。
デジタルでも、伝統のスイスメイドの誇りを宿す一本。
その哲学に共感できる人にとって、これほど満足度の高い選択はないだろう。
TAG Heuerのスマートウォッチ徹底比較！高級感と機能性の両立は本物か【まとめ】
TAG Heuerのスマートウォッチは、確かに高価だ。
だが、その価格の中には「ブランドの歴史」「デザインの美学」「精密なクラフトマンシップ」がすべて詰まっている。
純粋な機能比較では他ブランドに譲る部分もあるが、「ラグジュアリーな時計をデジタルで楽しむ」という新しい価値を体現している点で唯一無二だ。
TAG Heuer Connected。
それは、時間を知るための道具ではなく、“時間を味わうためのスマートウォッチ”なのだ。
