ゲーミングPCを組むとき、「電源ユニットは何ワットにすればいいの?」という疑問はよく出ます。でも、もう一歩踏み込むと「アンペアって何?」「グラボの性能と関係あるの?」という点も気になるはずです。
この記事では、ゲーミングPCにおける“アンペア”の意味から、電源容量(ワット)やグラフィックボードの性能との関係までを、初心者にも分かりやすく解説していきます。
アンペアは「電気の流れる量」
まず基本から。
アンペア(A)とは「電流の強さ」、つまり電気がどれくらい流れているかを表す単位です。
PCの電源は、家庭用コンセントから供給される交流電流(AC)を、マザーボードやグラボなどの部品が使える直流電流(DC)に変換しています。
ここで覚えておきたいのが、「電力(ワット)」と「電流(アンペア)」の関係。
電力=電圧(ボルト)× 電流(アンペア)という式で表されます。
たとえば、12ボルトの電圧で5アンペア流れると、
12V × 5A = 60W の電力になります。
つまり、電圧が一定であれば、必要な電力が増えるほど電流(アンペア)も多く流れるということです。
ゲーミングPCのように消費電力が大きい構成では、当然アンペア数も高くなります。
ゲーミングPCに流れるアンペアの目安
では実際に、ゲーミングPCではどのくらいのアンペアが流れているのでしょうか。
構成にもよりますが、一般的な目安は次のようになります。
- ミドルレンジクラスのPC(GeForce RTX 4070 TiやRX 7600など):およそ300~400W。12Vレール換算で25~35A程度。
- ハイエンド構成(GeForce RTX 4090やRX 7900XTクラス):500~700W。12V換算で40~60Aほど。
- ウルトラハイエンド(GeForce RTX 4090など):最大850W超。12V換算では70A近くに達することも。
もちろん、これはあくまで理論上の値。実際の負荷はゲームや作業内容によって大きく変動します。
ただ、こうした数字を把握しておくと、どの程度の電源ユニット(PSU)が必要なのか見えてきます。
電源容量(ワット)とアンペアの関係
電源ユニットには「定格出力○○W」と書かれています。
これは「最大でどれくらいの電力を安定して供給できるか」を表したもの。
しかしその中身を細かく見ると、「+12Vレール」「+5V」「+3.3V」などの項目があり、それぞれに最大アンペア数が記載されています。
たとえば、
+12V:62A
+5V:25A
+3.3V:25A
という電源なら、12Vレールだけで 12V × 62A = 744W の出力が可能ということです。
この+12Vレールが特に重要。
CPUやGPUといった主要パーツは、ほとんどがこの12Vから電力を取っているからです。
ワット数だけ見ていても、12Vレールのアンペア数が足りないと、電源が足を引っ張ることがあります。
グラボ(GPU)はアンペアを食う主役
ゲーミングPCで最も電力を食うのは、やはりグラフィックボードです。
とくに最新のGPUは、性能向上と引き換えに消費電力が増加しており、電流も多く流れます。
たとえば、GeForce RTX 4070 Tiは約285W、GeForce RTX 4090では450W以上。
これを12Vで割ると、それぞれ約24Aと37Aです。
ここにCPUやその他のパーツの電流を加えると、電源ユニットには合計で50A前後の供給能力が求められることになります。
だからこそ、電源選びでは「+12Vレールの最大アンペア数」を確認することが重要なのです。
もしこの値が低いと、グラボに十分な電流を供給できず、ゲーム中に不安定になったり、シャットダウンすることもあります。
複数レールとシングルレール、どちらが良い?
電源ユニットには「シングルレール」と「マルチレール」の2種類があります。
シングルレールはすべての12V出力を1本にまとめる方式で、シンプルで扱いやすい構造です。
一方、マルチレールは複数の12Vラインに分けることで、過電流保護を強化できます。
どちらが優れているかは使い方次第。
高出力なGPUを使うゲーミングPCでは、1レールあたりのアンペア制限がネックになることがあるため、シングルレール設計が好まれる傾向にあります。
逆に、安全性を重視するならマルチレールが安心です。
電源選びのポイント:アンペアを見落とさない
ワット数だけで選んでしまうと、思わぬ落とし穴があります。
次のポイントをチェックしてみましょう。
- +12Vレールのアンペア値を確認する
GPUとCPUを合わせた消費電流よりも余裕があるかを確認。 - 80PLUS認証をチェック
電力変換効率が高いほど、実際に供給できるアンペアも安定します。Gold以上がおすすめ。 - スパイク(瞬間的な電流上昇)に耐えられるか
高負荷時の一瞬の電流増加に対応できる電源が理想。ATX 3.0対応ならより安心。 - 将来のアップグレードも見据える
今は十分でも、次世代GPUを載せたときに不足するケースがあります。
目安として、現在の消費電力の1.3〜1.5倍程度の余裕を確保しましょう。
家庭用コンセントとアンペアの関係にも注意
日本の家庭用電源は100Vです。
この場合、たとえば700WのPCを動かすとき、
700W ÷ 100V = 7A の電流が流れます。
ブレーカー容量が15Aや20Aの場合、他の家電と同時使用で限界を超える可能性もあります。
とくにエアコンや電子レンジなど大きな電流を使う機器と同じ回路に繋いでいると、ブレーカーが落ちることも。
ゲーミングPC専用の電源タップやコンセントを用意すると安心です。
電源ユニットの品質と安定性は価格以上に大事
電源は「とりあえず動けばいい」と軽視されがちですが、実はPC全体の安定性を左右する重要パーツです。
定格ワット数やアンペア値が足りていないと、最悪の場合は起動不能や部品の損傷にもつながります。
信頼できるメーカーの電源ユニットを選び、保証期間や保護回路(過電流・過電圧・短絡保護など)の有無も確認しておくと安心です。
とくにハイエンドグラボを使用するなら、電源の品質にも投資する価値があります。
アンペアを意識すればゲーミングPCはもっと安定する
ここまで読んで、「アンペア=電気の量」がどれだけ大事かが分かったはずです。
ワット数だけでなく、12Vレールのアンペア数をチェックすることで、より安定した動作・長寿命なPC環境を作れます。
ゲーミングPCの世界では、GPU性能や冷却ばかり注目されがちですが、電源とアンペアの設計がしっかりしてこそ真価を発揮します。
次にPCを組むとき、あるいは電源を選ぶときは、ぜひ「この電源は何アンペア出せるか?」という視点を持ってみてください。
それが、安定したゲーム体験への最短ルートです。
ゲーミングPCのアンペアとは?安定動作と電源選びの鍵を握る指標
ゲーミングPCにおけるアンペアとは、単なる数値ではなく「電気の流れの余裕」を示す指標です。
十分なアンペア数を確保した電源ユニットを選ぶことで、グラフィックボードの性能を最大限引き出し、長時間のプレイや高負荷作業でも安心して使える環境が整います。
ワット数とアンペアの両面から電源を見直せば、ゲーミングPCはもっと安定し、静かで快適になります。
次にPCを選ぶときは、ぜひ「アンペア」という視点を忘れずに。
