最近、「ワイヤレスイヤホンが充電中に発火した」「バッグの中で煙が出た」といったニュースを見かけた人もいるかもしれません。
便利で身近なガジェットになったワイヤレスイヤホンですが、実は“見えない危険”が潜んでいるのです。
今回は、発火事故の実態や原因、危険とされるメーカーの傾向、そして私たちができる安全対策について詳しく見ていきます。
ワイヤレスイヤホンで発火事故が増えているって本当?
はい、本当です。
消費者庁の報告によると、リチウムイオン電池を内蔵したワイヤレスイヤホンやスピーカーの発火・発煙事故が年々増加しています。
2020年度からの5年間で、電池関連製品の事故が162件報告され、そのうち約4割がワイヤレスイヤホンに関するものです。特に「充電中」の事故が多く、全体の75%以上を占めているというデータもあります。
また、2025年にはオーディオテクニカのワイヤレスイヤホン「ATH-SQ1TW2」シリーズで、充電中の発火事故が発生。リコール対象となったことも話題になりました。
つまり「大手メーカーだから安心」とも言い切れない時代になっているのです。
なぜ発火するのか?その裏にあるリチウムイオン電池のリスク
ワイヤレスイヤホンの発火原因の多くは、内蔵されているリチウムイオン電池の熱暴走です。
この電池は小型で大容量という優れた特性を持つ一方、扱いを誤ると高温に達し、発煙や爆発を引き起こす可能性があります。
発火までのメカニズムはこうです。
- 充電や衝撃などで電池内部が損傷
- 正極と負極を隔てる「セパレーター」が破損
- 電流が異常に流れ、内部温度が急上昇
- さらに反応が連鎖し、数百度の高温になって発火
この「熱暴走」は一度始まると止められず、ケースや周囲の可燃物に燃え移る危険があります。
危険が高いのはどんなイヤホン?
「どのメーカーが危険なのか?」という疑問を持つ人も多いでしょう。
結論から言うと、「どこのメーカーでも起こり得る」が正しい答えです。
ただし、事故の傾向を分析すると、ある共通点が見えてきます。
1. 激安・ノーブランド製品
ネット通販やフリマアプリで見かける、数千円以下のノーブランド品。
これらの多くは品質管理が不十分で、電池や充電回路の保護設計が甘い場合があります。
保護回路がなければ、過充電やショート時に電流が暴走して発火するリスクが跳ね上がります。
2. 技適マーク・PSEマークがない製品
国内で販売される電気製品は、法令により安全基準を満たす必要があります。
「PSE」や「技適」マークがないイヤホンは、その認証を通っていない可能性があり、安全性が検証されていないことを意味します。
見た目が同じでも、内部の部品構成や制御回路が全く異なることもあります。
3. 長時間の放置充電が前提の設計
小型の充電ケースを持つイヤホンは、ケース内でもバッテリーを充電・管理しています。
しかし、通気性が悪いケースに高温の状態で放置すると、熱がこもって発火する可能性が高まります。
構造上、放熱設計が甘い製品ではこれが致命的になります。
海外でも相次ぐ発火リコール ― 信頼ブランドも例外ではない
実は海外でも、ワイヤレスイヤホンのリコール事例が後を絶ちません。
米国では、工具ブランドで知られるDEWALTの「Jobsite Pro Wireless Earphones」が過熱・火災事故を61件起こし、約30万台がリコールされました。
被害の中には軽度の火傷や家具の焼損もあり、ニュースでも大きく報じられました。
この製品はDEWALTという有名ブランド名を冠していましたが、実際の製造は中国企業で行われていたことも明らかになっています。
つまり「ブランドが信頼できる=製造品質も安全」とは限らないのです。
あなたの使い方が事故を呼ぶ?身近な発火リスク
製品の欠陥だけでなく、使い方の問題が事故の一因になることもあります。
よくあるケースをいくつか挙げてみましょう。
- 寝る前に充電を始めて、そのまま朝まで放置
- イヤホンを入れたままバッグの中で充電
- 布団の上や枕元でケーブルをつないだまま使用
- 車内など高温になる場所に放置
これらはいずれも“熱が逃げにくい環境”です。
仮にバッテリーが異常反応を起こしても、熱がこもり続けてしまい、発火や爆発の引き金になります。
特に「夜間の放置充電」は非常に危険です。
今日からできる安全対策 ― ワイヤレスイヤホンの正しい使い方
では、どうすれば安全に使えるのでしょうか。
以下のポイントを意識するだけでも、事故のリスクを大幅に下げることができます。
1. 信頼できるメーカーから購入する
有名ブランド製でも事故は起こりますが、品質管理体制が整っているメーカーの方がリスクは低くなります。
購入前にレビューや公式サイトを確認し、怪しいほど安い製品は避けましょう。
2. 純正のケーブルとアダプターを使用
サードパーティ製のケーブルや充電器は、電流値が合わないことがあります。
特に「急速充電対応」などをうたう安価な製品は要注意です。
純正ケーブルとアダプターを使うのがもっとも安全です。
3. 充電中は目を離さない
充電中に席を外す、寝る前に接続するなどの行為は避けましょう。
どうしても離れる場合は、耐熱性のある場所(タイルの上など)に置いておくのが安心です。
4. 高温・多湿環境を避ける
夏場の車内やポケットの中は想像以上に高温になります。
高温下ではバッテリーの化学反応が進みやすく、発火リスクが上昇します。
保管場所はなるべく風通しのよい場所を選びましょう。
5. 膨張・異臭・発熱を感じたら即中止
もし充電中や使用中に「焦げ臭い」「ケースが膨らんだ」「異常に熱い」と感じたら、すぐに使用をやめて電源を切ること。
そのまま放置すると危険です。冷却後、メーカーのサポート窓口に相談してください。
メーカーに求められる責任と対策
ユーザーだけでなく、メーカー側にも責任があります。
安全対策として、今後さらに次のような取り組みが求められます。
- 過充電・過放電を防ぐ保護回路の強化
- 温度センサーによるリアルタイム監視機能の導入
- バッテリー品質と組み立て工程の徹底管理
- 問題発生時の迅速なリコール対応と情報公開
実際、消費者庁が公表したリコール一覧では、製造番号や販売期間を明示することで対象製品を特定できる仕組みが導入されています。
こうした透明性は、消費者の安全を守るうえで不可欠です。
ワイヤレスイヤホンの発火を防ぐには「使い方と選び方」が鍵
ワイヤレスイヤホンの発火事故は、製品の欠陥だけでなく、私たちの“ちょっとした油断”から起こることもあります。
しかし、正しい知識を持ち、注意を払えば、防げるケースがほとんどです。
ポイントをもう一度まとめましょう。
- 安価すぎるノーブランド品は避ける
- 技適マーク・PSEマークを確認
- 純正ケーブルで充電
- 放置充電をしない
- 高温環境で保管しない
たったこれだけで、安全性はぐっと高まります。
イヤホンは音楽や通話だけでなく、私たちの生活リズムに密着した“相棒”です。
その相棒を安心して使い続けるためにも、今日から意識を変えていきましょう。
まとめ|ワイヤレスイヤホンの発火事故が増加?危険なメーカーと安全対策を徹底解説
ワイヤレスイヤホンの発火事故は、確かに増えています。
でも、それは「危険な製品が溢れている」というよりも、「便利さと安全意識のバランス」が崩れている結果とも言えます。
リチウムイオン電池は、スマートフォンやPC、イヤホンなど、あらゆる製品に使われています。
だからこそ、私たち一人ひとりが「正しい使い方」と「信頼できる選び方」を知ることが、最大の安全対策になります。
小さなイヤホンひとつでも、使い方を誤れば火災につながる。
その現実を知ったうえで、安心して音楽を楽しむ未来を選びましょう。
