コンパクトで場所を取らない「ミニPC」。最近では性能も十分で、自作PCやデスク環境をシンプルにまとめたい人に人気です。
でも、いざ作ろうとすると最初の壁になるのが“マザーボード選び”。サイズも種類も多く、CPUとの相性や拡張性まで考えると意外と奥が深いんです。
この記事では、ミニPC向けマザーボードの選び方からおすすめ構成まで、初めての人でも分かるように丁寧に解説します。
ミニPCに使えるマザーボード規格を理解しよう
ミニPCでは「Mini-ITX（ミニアイティーエックス）」という規格が基本になります。
サイズは17cm四方と非常に小さく、限られたスペースに必要な機能をギュッと詰め込んだ設計です。
このMini-ITXのほかに、「Thin Mini-ITX」や「Micro-ITX」と呼ばれる派生規格もあります。
ただし、ケースによっては取り付け穴の位置や電源端子が異なるため、ケースがどの規格に対応しているかを必ず確認しましょう。
小型ケースは見た目がスッキリする一方で、内部スペースが狭く冷却性能が限られる点には注意が必要です。
特に高性能CPUを使う場合、エアフローの確保やCPUクーラーの高さ制限をしっかり調べておくと安心です。
CPUソケットとチップセットの関係を押さえる
マザーボードを選ぶ上で欠かせないのが「CPUとの互換性」です。
ここで確認すべきポイントは以下の3つ。
- CPUソケット（例：LGA1700、AM5など）
- チップセット（B760、A620、B650など）
- BIOSバージョン（対応CPUを反映しているか）
ソケットが合っていても、チップセットの制限で使えない機能が出ることもあります。
たとえば、オーバークロックや最新メモリ規格（DDR5）への対応は、上位チップセットのみ可能な場合があります。
購入前にはメーカー公式サイトの「CPUサポートリスト」を必ずチェックしましょう。
また、新しいCPUを使う場合はBIOSアップデートが必要なこともあります。店頭やサポートに確認しておくと確実です。
ミニPC構成で重要な拡張性とポート数
小型マザーボードは当然ながら拡張スロットが限られます。
一般的なMini-ITXではPCIeスロットが1本のみ。つまり、グラフィックカードを挿すと他に拡張カードを付けられません。
そのため、マザーボード選びでは“オンボード機能の充実度”がカギになります。
たとえば以下のような機能があると便利です。
- Wi-Fi（Wi-Fi 6/6E/7など）
- Bluetooth対応
- 2.5Gまたは1G LANポート
- USB-CやThunderbolt対応ポート
- オンボードサウンドチップ
また、ストレージもM.2スロットやSATAポートの数で差が出ます。
M.2が2本あればOS用とデータ用SSDを分けることができ、高速かつ静音な構成が可能です。
小型構成ほどポートが不足しがちなので、最初から余裕を持った仕様を選ぶのがポイントです。
電源設計と冷却のバランスを考える
ミニPCでは冷却と電源が性能の要です。
狭いケース内に熱がこもりやすく、VRM（電源回路）が貧弱だと高負荷時に動作が不安定になることも。
選ぶときは以下を意識しましょう。
- VRMフェーズ数が多く、ヒートシンク付きのモデル
- DCジャック対応など小型電源ユニットを想定した設計
- ファンの取り付け位置やエアフローを確保できるレイアウト
CPUクーラーの高さ制限も重要です。
特にMini-ITXケースでは40〜60mm程度しか余裕がないこともあるので、ロープロファイル型クーラーを選ぶと良いでしょう。
静音性を重視するなら、低TDP（低消費電力）CPU＋ファンレス構成という選択肢もあります。
ASRock N100DC-ITXのようにDC入力対応でファンレス運用できるモデルは、リビングPCやホームシアターPCにぴったりです。
将来を見据えたアップグレード性
ミニPCはコンパクトゆえに拡張の余地が限られます。
だからこそ、最初の選択で“将来どこまで伸ばしたいか”を考えておくことが大切です。
- ソケットが今後のCPU世代でも使えるか
- メモリスロットが2本で最大容量はいくつか（例：64GB対応など）
- M.2スロットが将来追加ストレージに対応できるか
特に、AMDのAM5ソケットやIntelのLGA1700以降は複数世代のCPUに対応する見込みがあり、長く使うなら狙い目です。
メモリはDDR5対応モデルを選んでおけば、数年後も現行規格で戦えるでしょう。
用途別のおすすめ構成とマザーボード例
1. ライトな用途（ネット・動画・事務作業）
- CPU：Intel N100 / Ryzen 5 8600G など省電力モデル
- マザーボード：ASRock N100DC-ITX
- ポイント：DC入力・静音・低発熱。ファンレス運用にも対応
この構成は家庭用やオフィス用途に最適。
ストレージをNVMe SSD 1本でまとめれば、配線も少なくすっきり仕上がります。
2. ゲーミング・クリエイティブ向け
- CPU：Ryzen 7 7800X3D / Intel Core i7-14700K
- マザーボード：MSI MPG B650I EDGE WiFi / ASRock B850I Lightning WiFi
- ポイント：AM5対応・M.2×2・強力なVRM冷却・Wi-Fi搭載
高性能CPUとGPUを組み合わせる場合、Mini-ITXケースでもエアフローの確保が必須。
SFX電源を使い、排熱経路をしっかり設計することで高負荷にも耐えられます。
3. ホームシアター・静音重視構成
- CPU：Intel Core i3 / AMD Ryzen 5 Gシリーズ
- マザーボード：ASRock B860I WiFi
- ポイント：オンボードグラフィック・Bluetooth・Wi-Fi標準搭載
コンパクトで静音なPCをテレビ横に設置したい人向け。
動画再生やストリーミング中心なら、GPUレス構成でも十分快適に動作します。
マザーボード選びで失敗しないためのチェックリスト
- ケースが対応する規格（Mini-ITX / Thin Mini-ITX）を確認
- CPUソケットとチップセットの対応を公式サイトで確認
- メモリ・ストレージスロットの数と対応規格を把握
- 冷却スペースやCPUクーラー高さをチェック
- 電源仕様（ATX / SFX / DC入力）を合わせる
- Wi-FiやBluetoothなど必要機能の有無を確認
- 将来のアップグレード余地を考慮して選ぶ
これらを順に確認していけば、購入後の「入らなかった」「動かなかった」といったトラブルを防げます。
ミニPC構築のコツと注意点
ミニPCは見た目のシンプルさだけでなく、設置自由度の高さも魅力。
ただし、狭い筐体に高性能パーツを詰め込むと熱がこもりやすく、静音性が犠牲になることもあります。
冷却ファンの配置やケーブルの取り回しを工夫するだけでも、温度と騒音を大きく改善できます。
また、GPUを搭載する場合はケース内スペースを必ず測定してから購入しましょう。
「小さいけど性能妥協したくない」という場合は、やや大型のMini-ITXケース（例：NZXT H1やFractal Design Node 304）を選ぶのもおすすめです。
ミニPCのマザーボード選び方とおすすめ構成をまとめて
ミニPCの魅力は、限られた空間に自分だけのパフォーマンス環境を作れること。
その中心となるマザーボードは、サイズ・CPU互換性・拡張性の3点を意識するだけで選びやすくなります。
省スペースでも性能をしっかり引き出すためには、自分の用途に合った機能とバランスを見極めることが何より大切です。
ケースとの相性や電源、冷却を含めてトータルで設計すれば、小さくてもパワフルで静かな一台が完成します。
ミニPC構築の第一歩は、マザーボード選びから。
ぜひこの記事を参考に、自分にぴったりのミニPCを組み上げてみてください。
