そういえば、かつて「iPhone 9」という名前のモデルが発売されると大きな話題になりましたよね。実際にショップで探してみたり、ネットの情報を追いかけたりした人も多いのではないでしょうか。
でも、今、「iPhone 9」という名前の公式モデルを見かけることはありません。これは一体どういうことなのでしょう? 今日は、この「幻のiPhone 9」にまつわる噂とその真実、そして結局何が発売されたのかを、一緒に紐解いていきたいと思います。
「iPhone 9」発売間近? 2020年に巻き起こった大噂
時は2020年初頭。世界中で「次に発売されるお手頃価格のiPhoneは『iPhone 9』という名前になる」という情報が、テクノロジー系メディアやアナリストの間でほぼ一致して報じられていました。
その根拠とされていたのが、以下のような情報でした。
- デザインの継承:新しいモデルは、iPhone 8のデザインを踏襲した4.7インチモデルになる。
- 高性能チップの搭載:当時最新だったA13 Bionicチップを内蔵し、性能は大幅に向上する。
- 価格設定:お手頃な価格帯で提供され、エントリーモデルとして多くのユーザーに購入されると予想された。
- 具体的な発売日予測:3月末や4月中旬など、複数のメディアが具体的な発表・発売日を報じました。中には、小売店向けのアクセサリーが事前に納品されているというリーク情報まで流れ、発売は確実視されていました。
多くのファンやユーザーが、新しい廉価版iPhoneの登場を「iPhone 9」という名前で心待ちにしていた時期でした。この噂は、単なる憶測ではなく、サプライチェーンからの情報など、一定の信憑性をもって広まっていたのです。
そして発表されたのは「iPhone SE(第2世代)」
ところが、2020年4月にアップルが公式に発表した新モデルは、多くの人が予想していた「iPhone 9」でもなければ、「SE 2」でもありませんでした。
その名は、「iPhone SE(第2世代)」。
これが、すべての噂の答えでした。発表された製品の仕様は、驚くほど噂と一致していました。4.7インチのデザイン、A13 Bionicチップ、手頃な価格…。つまり、リークされていた「iPhone 9」という製品の中身は、ほぼそのまま「iPhone SE(第2世代)」という名前で世に出たのです。
「では、『9』という数字はどこへ消えたの?」と、疑問に思う方もいるでしょう。
なぜ「iPhone 9」は誕生しなかったのか? アップルの命名戦略
実は、アップルが公式に「iPhone 9」という名前をスキップした理由について、明確な説明は一度もありません。しかし、テクノロジー業界や長年にわたるアップルの製品ラインナップを見ると、いくつかの説が考えられます。
最も有力なのは、「iPhone X」(ローマ数字で「10」)の存在です。2017年、iPhone発売10周年を記念して、画期的な全画面デザインを採用したiPhone Xが「iPhone 8」と同時に発表されました。ここで、デザインが大きく進化したモデルに「10」という数字(X)を与え、「9」を飛ばすことで、技術的な飛躍と新時代の始まりを強く印象付けたのです。
その後、iPhone XS、iPhone 11、iPhone 12…と、番号は「X(10)」から連続してカウントアップされていきました。一度スキップされた「9」に戻る必然性は、その後も生まれなかったと言えるでしょう。
また、「SE」というブランドの確立も大きな要因です。初代iPhone SEは「Special Edition」の略称で、コンパクトなボディに高性能チップを詰め込んだ特別なモデルとして高い人気を博しました。その成功を受け、2代目も同じ「SE」の名を冠して、ポジションやコンセプトを明確に継承したと考えられます。数字の「9」よりも、「SE」というブランド価値の方が重視されたのです。
アップルは過去にも「iPhone 2」や「iPhone 7s」といった、連番では予想されていた名前を採用しない例があります。彼らにとって、モデル名は単なる通し番号ではなく、その製品が伝えたいメッセージや、ラインアップの中での位置づけを表現するための重要な要素なのです。
「iPhone 9」の情報に辿り着いたあなたへ。今、買えるモデルは?
もし今、あなたが「iPhone 9」という言葉で検索し、この記事を読んでいるのであれば、おそらく次のような理由のどれかではないでしょうか。
- 「安くて良いiPhoneが欲しい」と探していた。
- 中古サイトなどで「iPhone 9」という表記を見て、それが何か気になった。
- iPhoneの機種の歴史に興味がある。
特に1つ目の「お得なiPhoneを探している」のであれば、知っておくべき事実があります。それは、かつて「iPhone 9」と呼ばれていた実質的なモデルは、現在「iPhone SE(第2世代)」として流通しているということです。
もし、iPhone 8のようなホームボタン付きのデザインが好きで、性能はきちんとしていて、予算を抑えたいのであれば、iPhone SE(第2世代)は今でも非常に有力な選択肢です。また、より新しいモデルを求めるなら、後継機種である「iPhone SE(第3世代)」(2022年発売) もあります。こちらはA15 Bionicチップを搭載し、5G通信にも対応しています。
さらに、予算を最大限に抑えたい場合、アップル公式の整備済み製品(Refurbished) を探してみるのも一つの手です。ここでは、正規品と同じ保証が付いた状態で、歴代のモデルを比較的お手頃な価格で購入することができます。
かつて噂に翻弄された「iPhone 9」は、結局「SE」という名前になって私たちの手元にやってきました。名前は違えど、その実体は確かに存在していたのです。
まとめ:iPhone 9は幻ではなく、別の姿で存在した
「iPhone 9」の話は、単に「なかったモデル」の逸話で終わらせるにはあまりにも惜しい物語です。これは、市場の期待、的確なリーク情報、そして企業の壮大なブランド戦略が交差した一つの結晶のような出来事でした。
世界中のメディアと消費者が「iPhone 9」の到来を確信するほど、その情報は詳細で確からしかった。そしてその情報は、実際に発売される製品の核心をほぼ外さずに捉えていました。ただ最後の最後で、アップルは私たちの予想を裏切り、数字ではなく「SE」というブランド名を選んだ。
このことから学べるのは、アップルにとってモデル名は常に「今伝えるべき最も重要なメッセージ」を反映するものだということです。2017年には「飛躍」を示すために「X(10)」へ飛び、2020年には「特別なコストパフォーマンス」を表すために「SE」を復活させた。
だからこそ、もしあなたが今、中古市場やネットの隅々で「iPhone 9」という言葉を見つけたなら、それは「iPhone SE(第2世代)」の、もう一つの呼び名なのだと思ってください。そして、その実態が優れたコストパフォーマンスモデルであることも、ぜひ思い出していただければと思います。
「iPhone 9」は幻ではありません。それは、別の姿で私たちのポケットの中に確かに生き続けているのです。
