最近、コンパクトでおしゃれな「ミニPC」を選ぶ人が増えています。
デスク周りをスッキリさせたい、静音で省電力なPCが欲しい──そんな理由で人気が高まっています。
でも、いざ購入を検討すると気になるのが「グラボ（GPU）は必要なのか？」という点ですよね。
この記事では、内蔵GPUと外付けGPU（eGPU）の違いをわかりやすく整理しながら、「あなたにとってミニPCにグラボは本当に必要か？」を考えていきます。
ミニPCにおける「グラボ」とは？まずは基本から
ミニPCというのは、手のひらサイズ〜文庫本程度の筐体に、CPU・メモリ・ストレージを詰め込んだ小型デスクトップPCのこと。
一般的なデスクトップよりも拡張性が限られるため、「グラフィック性能をどう確保するか」が重要なポイントになります。
まず、PCのグラフィック性能を担うのがGPU（Graphics Processing Unit）。
GPUには大きく分けて2種類があります。
- 内蔵GPU（iGPU）：CPUの中にグラフィック機能が一体化されたもの。
- 専用GPU（dGPU）または外付けGPU（eGPU）：グラフィック専用チップを別途搭載、または外付け接続するもの。
つまり「ミニPCにグラボは必要？」という問いは、
「内蔵GPUで十分か？」「外付けや専用GPUを使うべきか？」という選択でもあるんです。
内蔵GPUの特徴：省電力で静か、でも限界もある
まずは内蔵GPUから見ていきましょう。
代表的なのはIntelのIris XeやAMDのRadeon Graphics（Ryzen APU）など。
近年は性能が大幅に向上し、軽いゲームや動画編集なら普通にこなせます。
内蔵GPUのメリット
- 静音で省電力：冷却ファンが少なく、発熱も少ないため静か。
- コストパフォーマンスが高い：グラボを別に買う必要がない。
- 省スペース：ミニPCのコンパクトさを損なわない。
たとえば、Iris Xe搭載のミニPCでは、フルHDで「シヴィライゼーションVI」などの軽めゲームを30fps前後で動かせるケースもあります。
普段使い・オフィスワーク・YouTube視聴などではまったく不自由を感じません。
内蔵GPUのデメリット
- 3Dゲームや4K動画編集は苦手：専用メモリを持たず、システムRAMを共有するため帯域が狭い。
- 高解像度や複数モニタで負荷が増す。
- 将来的な拡張性が低い：GPU性能を後から強化できない。
つまり、軽作業や日常用途なら内蔵GPUで十分。
でも、グラフィックス性能を求める使い方をしたい人には物足りなさが出るのです。
外付けGPU（eGPU）の特徴：性能は抜群、でもコストと手間が増える
次に外付けGPU、いわゆるeGPUを見ていきましょう。
これは、Thunderbolt 4やUSB4、OCuLinkといった高速インターフェースを通じて、デスクトップ用グラボを外部ケース経由でミニPCに接続する仕組みです。
外付けGPUのメリット
- グラフィック性能が大幅アップ：3Dゲーム・動画編集・VRなども快適。
- GPUを交換・アップグレードできる：将来新しいグラボに差し替え可能。
- 小型PCでも高性能を実現できる：デスクトップと同等の描画能力を得られる。
実際、Ryzen 7 8845HSを搭載した「MINISFORUM UM880 Plus」にeGPUを接続したレビューでは、
内蔵GPUでは『Cyberpunk 2077』が約43fps、外付けRTX 4070 Tiを接続したら132fpsまで向上したという例もあります。
つまり、3倍以上のパフォーマンス差が出ることもあるのです。
外付けGPUのデメリット
- コストが高い：グラボ本体＋外付けケース＋ケーブルで数万円〜十数万円。
- 接続帯域の制限：Thunderbolt 4経由だとデスクトップ直結より性能が落ちる。
- 設置と電源管理が面倒：外付けボックスは意外に大きく、電源も必要。
- ファン音・発熱が増える：静音重視のミニPCらしさは少し損なわれる。
つまり、eGPUは「ミニPCでも妥協せず性能を求めたい人」向けの選択肢です。
ゲーム・クリエイティブ用途では圧倒的に有利ですが、コストと設置の手間は確実に増えます。
内蔵GPUで十分なケース・足りないケース
ここで、実際にどういう使い方なら内蔵GPUで十分か、どんな人に専用GPUが向くのかを整理しておきましょう。
内蔵GPUで十分なケース
- Webブラウジング、メール、Officeソフト、Zoom会議
- YouTubeやNetflixなどの動画視聴
- 軽い画像編集、Canva・FigmaなどのWebアプリ利用
- 軽めのPCゲーム（LoL・マイクラ・Stardew Valley など）
これらはCPU内蔵GPUでも快適。静音・省電力で、ミニPCのコンセプトにぴったりです。
専用GPUが必要なケース
- 3Dゲーム（Cyberpunk、Apex Legends、Fortniteなど）を高設定で遊びたい
- 4Kや8K動画の編集、After EffectsやDaVinci Resolveなどを使う
- Blenderなどの3Dモデリング・レンダリングを行う
- VR・AI画像生成などGPU負荷の高い用途を考えている
これらの用途では、内蔵GPUではパワー不足。
専用GPU、もしくはeGPU接続がほぼ必須になります。
ミニPCにグラボを導入する際の注意点
もし「やっぱり外付けGPUを使いたい」と思ったら、いくつか注意しておきたいポイントがあります。
- インターフェースを確認
Thunderbolt 4やUSB4に対応しているか。
OCuLink端子を備えるモデルなら帯域が広く、性能ロスが少ないです。 - 電源と冷却のバランス
外付けGPUケースは電源が別途必要。ミニPC側も高負荷時に発熱するため、設置環境に余裕を。 - コストを見積もる
eGPUボックスだけで数万円、グラボと合わせると10万円を超える場合も。
性能に見合う投資かどうかを考えましょう。 - 静音性の変化
グラボのファン音や熱風が増えるため、静音志向の人は要注意。
設置場所に余裕があるなら、外付けケースを少し離して置くのも手です。
実際のユーザー体験に見るミニPC＋GPUの現実
ここまで理論的に見てきましたが、実際のユーザー体験を見ても、結論は明確です。
- 普段使いなら内蔵GPUで十分。
省スペース・静音・コスパの三拍子がそろいます。 - 性能を求めるなら外付けGPUが最適。
正しく構成すれば、デスクトップ並みのグラフィックス性能が手に入ります。
ただし、eGPU環境は“組み合わせの相性”が大切。
Thunderbolt接続で十分な帯域を確保できないと、せっかくの高性能GPUも実力を出し切れません。
その意味では、購入前にメーカーの対応情報やレビューをチェックするのが安心です。
将来を見据えた選び方
ミニPCは拡張性が限られるぶん、購入時の選択が将来の使い勝手を左右します。
今は内蔵GPUで十分でも、数年後に用途が変わる可能性もあります。
そんなときに備えるなら、eGPU対応ポートを持つモデルを選ぶのがベストです。
「最初は内蔵GPUで静かに運用し、必要になったら外付けGPUを追加する」
この柔軟なアプローチなら、コストも性能もバランスよく手に入ります。
ミニPCにグラボは必要？最後の判断ポイント
結論として──
- 仕事・日常用途中心なら内蔵GPUで十分。
- ゲームや動画編集などグラフィック重視ならグラボは必要。
- 将来性能アップを見越すなら、eGPU対応ミニPCを選ぶのが安心。
ミニPCはもはや“サブPC”ではなく、使い方次第でメインマシンにもなります。
グラボを追加するかどうかは、あなたが何をしたいか次第。
スペースも静音も妥協せず、性能も確保したいなら──
「ミニPC × 外付けGPU」という構成が、これからのスマートな選択肢になるでしょう。
