最近、「小型でパワフルなデスクトップPCを作りたい」という声をよく耳にします。限られたスペースでも高性能を発揮する“ミニPC”が注目されているんですね。そんなミニPCを語るうえで欠かせないのが「マザーボード規格」です。特に人気が高いのが、Mini-ITX(ミニアイティーエックス)と**Micro-ATX**(マイクロエーティーエックス)の2つ。
名前が似ているこの2つですが、実はサイズも拡張性もかなり違います。この記事では、それぞれの特徴や選び方をわかりやすく解説します。
ミニPCに使われるマザーボード規格とは?
マザーボードの「規格(フォームファクター)」とは、サイズや取り付け位置、電源コネクタの配置などを定めたルールのこと。これによってケースや電源、冷却装置などとの互換性が保たれています。
代表的な規格にはATX、Micro-ATX、Mini-ITXなどがありますが、ミニPCに使われるのは主に後者の2つです。
もともとATXは1990年代にIntelが提唱した標準サイズ(305×244mm)。その後、より小型の**Micro-ATX(244×244mm)が登場し、さらにコンパクト化を突き詰めたMini-ITX**(170×170mm)がVIA Technologiesによって発表されました。
つまりMini-ITXは、ATX→Micro-ATX→Mini-ITXと進化してきた“最小サイズの系譜”なのです。
Mini-ITXとMicro-ATXのサイズと構造の違い
まず一番の違いは「大きさ」です。
Mini-ITXは手のひらより少し大きい程度。Micro-ATXはその約1.4倍の面積を持っています。数字にするとたった数センチの差に見えますが、ケース内部のレイアウトや拡張性に大きく影響します。
Mini-ITXはPCI Expressスロットが1本のみという構成が多く、グラフィックボードなどを1枚挿すだけでほぼ埋まってしまいます。一方、Micro-ATXは3〜4本の拡張スロットを備えることが多く、グラボに加えてキャプチャカードやサウンドカードを追加する余裕もあります。
また、メモリスロットもMini-ITXは2本、Micro-ATXは4本が一般的。
つまり、Mini-ITXはコンパクトでシンプルな構成に向き、Micro-ATXは少し拡張性を持たせたい人に適しているということです。
Mini-ITXの魅力:小さくても高性能な“ミニマル設計”
Mini-ITXの最大の魅力は、なんといっても省スペース性。
170mm四方という小さなマザーボードは、手のひらサイズのPCケースにも収まります。リビングに置いて映画鑑賞用PCにしたり、机の上で作業用PCとして使ったり。設置場所を選ばないのが強みです。
さらに、Mini-ITX用のケースはデザイン性の高いモデルが多く、インテリアに溶け込むスタイル重視の構築も可能です。
静音性や省電力性を重視する人にも向いていて、ファンレス構成で小音動作を目指すのも人気の構成です。
ただしデメリットもあります。
・拡張スロットが少ない
・メモリの増設余地が小さい
・冷却や電源設計がシビアになる
このため、高性能GPUを搭載したいゲーミングPCなどをMini-ITXで組む場合は、ケースや電源の選定を慎重に行う必要があります。冷却効率の悪化や熱暴走を防ぐには、コンパクトながらエアフローの良いケースを選ぶことがポイントです。
Micro-ATXの魅力:小型と拡張性のバランスが取れた万能型
一方のMicro-ATXは、Mini-ITXよりひと回り大きいサイズ。そのぶん拡張性とバランスの良さが魅力です。
PCI Expressスロットが複数あるため、グラボ・サウンドカード・キャプチャカードなどを同時に使いたいユーザーには最適。メモリも4枚挿しが可能なため、大容量メモリでクリエイティブ作業をしたい人にも向いています。
また、Micro-ATX対応ケースは種類が豊富で価格も手ごろ。冷却ファンの設置自由度も高く、組みやすさという点でも優秀です。
ミニPCとして十分コンパクトながら、安定性・拡張性・コストのバランスを取りたい人には、Micro-ATXがちょうど良い選択といえます。
デメリットを挙げるなら、Mini-ITXほどの“極小サイズ”にはできない点です。机の上やテレビ台の中など、限られたスペースに設置したい場合には少し大きく感じるかもしれません。
ミニPC構築で押さえておきたいポイント
ミニPCを作るときは、マザーボード以外のパーツ選びにも注意が必要です。特に以下の点をチェックしておきましょう。
1. ケースの互換性
Mini-ITXはMicro-ATXやATXケースにも取り付け可能なことが多いですが、内部スペースが余ると配線が煩雑になりやすいです。逆にMicro-ATXをMini-ITX専用ケースに入れることはできません。購入前に必ずサイズ互換を確認しましょう。
2. 電源ユニットのサイズ
Mini-ITXでは「SFX電源」や「FlexATX電源」といった小型電源を使うことがあります。通常のATX電源ではケースに入らない場合もあるため、電源の規格とケーブル長を事前に確認しましょう。
3. 冷却性能とエアフロー
コンパクトなケースほど、熱がこもりやすくなります。エアフローを意識した設計や、低発熱のCPU・GPUを選ぶのも重要です。特にMini-ITX構成では、CPUクーラーの高さ制限に注意が必要です。
4. 拡張計画
「今後メモリを増設するか」「ストレージを追加するか」など、将来的な拡張を考えておくと後悔がありません。Mini-ITXは拡張余地が少ないため、最初の構成で目的を明確にしておくのがコツです。
Mini-ITXとMicro-ATXのどちらを選ぶべき?
どちらが優れているかは、一概には言えません。用途と優先順位によってベストな選択は変わります。
Mini-ITXは
・極限まで省スペース化したい
・見た目を重視したスタイリッシュなPCを作りたい
・軽量・静音・省電力を優先したい
そんな人にぴったり。
Micro-ATXは
・コスパ良く自作PCを組みたい
・メモリや拡張カードを増やしたい
・冷却性能と安定性を確保したい
といったユーザーに向いています。
もし迷ったら、「どこに設置するか」「将来どんな使い方をしたいか」で決めるのがシンプルです。省スペース最優先ならMini-ITX、拡張性や安定性を重視するならMicro-ATXを選ぶと後悔が少ないでしょう。
これからミニPCを組む人へ:後悔しないためのアドバイス
ミニPCは、限られたスペースで最大限の性能を引き出す“パズル”のような楽しさがあります。
ただし、サイズを詰めれば詰めるほど、熱設計・配線・パーツ選定がシビアになるのも事実です。
初めて自作する人や、後から部品を追加する可能性がある人には、Micro-ATXが扱いやすいでしょう。
一方で、設置場所が決まっていて、性能要件も明確ならMini-ITXで理想の小型PCを実現できます。どちらを選んでも、最新のチップセットやDDR5対応メモリなどを活用すれば十分に高性能なミニPCが作れます。
ミニPC構築の魅力は「限界をどうデザインで超えるか」。
小さくても、工夫次第で大きな満足を得られる世界です。ぜひ、自分のスタイルに合ったマザーボード規格を見つけてみてください。
ミニPC対応マザーボード規格を徹底解説!Mini-ITXとMicro-ATXの違いとは
Mini-ITXとMicro-ATXは、どちらもミニPCに最適な規格ですが、その方向性は大きく異なります。
コンパクトさを極めたいならMini-ITX、バランスと拡張性を重視するならMicro-ATX。どちらを選ぶにせよ、自分の用途と環境に合った選択をすれば、限られたスペースでも快適でパワフルなPCライフを楽しめます。
マザーボード規格を理解することは、ミニPC作りの第一歩です。
あなたの理想の「小さくて強い一台」を、Mini-ITXやMicro-ATXで実現してみましょう。
