最近では、デザイン作業をミニPCでこなすクリエイターが増えています。コンパクトで省スペース、それでいて性能もしっかり――そんなミニPCが「Illustratorでも使えるの？」という疑問に答える形で進化してきました。今回は、Adobe Illustratorを快適に動かすための動作環境と、実際におすすめできるミニPCを徹底的に解説していきます。
Illustratorを動かすための基本スペックを理解しよう
まずは、Illustratorを安定して動かすために欠かせない基本スペックを押さえておきましょう。Adobe公式の推奨環境をベースに、実際の使用感から見た「快適ライン」をまとめます。
CPU：処理の心臓は“シングル性能”がカギ
Illustratorはベクター演算中心のアプリなので、CPUの「シングルスレッド性能」が重要です。コア数よりもクロックの高さ、1コアあたりの処理速度がパフォーマンスに直結します。
Intelなら第12世代以降のCore i5／i7、AMDならRyzen 5／7（Zen3以降）が目安。最新世代のU/Hシリーズであれば、ミニPCでも十分な力を発揮します。
メモリ：16GBは“快適ライン”、32GBで余裕あり
最低8GBでも動作しますが、ファイルが大きくなると途端に重くなります。16GBあればスムーズに操作でき、32GBあればPhotoshopなど他アプリを併用しても安定。ミニPCを選ぶ際は、増設できるかどうかも必ずチェックしましょう。
ストレージ：NVMe SSDで快適さが段違い
SSDの中でもNVMe対応のものを選ぶと、ファイルの読み書き速度が圧倒的に速くなります。作業用ドライブに500GB以上を確保しておくと、Illustratorのキャッシュや素材データを安心して扱えます。外付けSSDを併用すればバックアップにも便利です。
GPU：専用グラボ不要でも“統合GPU性能”は重要
Illustratorは3DレンダリングほどGPUに依存しませんが、GPU支援を使うシーン（ズーム・スクロール・プレビュー描画）では性能差が出ます。Intel Iris Xe や AMD Radeon統合GPUを搭載したモデルなら、十分快適に動作します。
ミニPCを選ぶときのチェックポイント
コンパクトな筐体に性能を詰め込むミニPCには、特有の選び方のコツがあります。ここを見落とすと「動くけど快適じゃない」という残念な結果になりがちです。
1. 冷却性能
小型ゆえに熱がこもりやすいのがミニPCの弱点。冷却構造がしっかりしているモデルを選びましょう。長時間のIllustrator作業でもサーマルスロットリング（熱による性能低下）が起きにくい機種が理想です。
2. 拡張性とメンテナンス性
メモリやストレージの増設が可能かどうかは長く使う上で重要です。固定式メモリ（オンボード）だと後で困ることも。底面から簡単に開けられるタイプならアップグレードも安心です。
3. ポート類の充実度
USBポートはできれば4つ以上。ペンタブレット、外付けストレージ、キーボード、マウスを同時接続するには数が必要です。HDMIやDisplayPortで2画面出力できるモデルなら、作業効率も格段に上がります。
4. 静音性と設置性
ファンの音が気になると集中力が削がれます。静音設計かどうか、またVESAマウント対応でモニター裏に隠せるかなど、作業環境に合わせて選びましょう。
Illustratorが快適に動くおすすめミニPC
ここからは、Illustratorを日常的に使うクリエイターにおすすめのミニPCを紹介します。性能・価格・拡張性のバランスを考慮しています。
GEEKOM GT1 Mega（第14世代 Core U9-185H 搭載）
ハイエンドクリエイター向け。16コアCPUと32GBメモリ構成が選べ、IllustratorだけでなくPhotoshopやAfter Effectsも快適に動作します。4K出力対応で、デュアルモニター環境もスムーズ。
Beelink SER8（Ryzen 7 8845HS 搭載）
性能と価格のバランスが非常に良い1台。DDR5メモリ対応で、グラフィック性能も高く、複雑なアートワークでも動作が安定。デザイン業務メインの中級者におすすめ。
MINISFORUM AI X1（Ryzen 7 7840HS 搭載）
コスパ重視の人気モデル。AI対応CPUで軽快に動き、NVMe SSDスロット2基搭載。内部アクセスも容易で拡張性抜群。Illustrator用途なら十分すぎる性能です。
HP Elite Mini 805 G8（Ryzen 5 5600GE 搭載）
企業向けながらデザイナーにも人気。省スペースで静音性に優れ、安定性重視の設計。カスタマイズサポートや国内保証も安心ポイント。
ASUS Mini PC PN42
軽作業や入門者にぴったり。ネットワーク接続も安定しており、Illustratorでロゴデザインや軽めの素材制作をする程度なら十分対応できます。
ミニPCをIllustrator用に最適化するコツ
スペックの高いマシンを買っても、設定や使い方次第で快適さは大きく変わります。ここでは実践的な最適化ポイントを紹介します。
ストレージ運用を整理する
作業中のファイルは内蔵SSD、素材データやバックアップは外付けSSDやクラウドに分けて管理するのが鉄則。Illustratorのキャッシュ設定をNVMe SSDに指定しておくと、保存やプレビューの速度が安定します。
GPU描画設定を有効化する
Illustratorの環境設定から「GPUパフォーマンス」をオンにしておくと、ズームやパンが格段に滑らかになります。特にIntel Iris XeやAMD Radeon統合GPUを搭載したモデルでは効果大。
メモリ管理とアプリ併用の工夫
同時にブラウザや他アプリを開きすぎるとIllustratorがメモリ不足に陥ります。作業時は不要なアプリを閉じ、キャッシュを定期的にクリアしましょう。長時間作業する場合は、スリープではなく再起動してメモリをリフレッシュするのもおすすめです。
冷却と設置の最適化
通気孔を塞がないように設置し、夏場はUSBファンなどで補助冷却を行うと安定性が上がります。机の裏やモニター背面に取り付ける場合は、熱の逃げ場を確保しましょう。
どんな人にミニPC＋Illustrator環境がおすすめか
- 自宅やカフェなど、限られたスペースで作業したい人
- デスク周りをスッキリさせたいが性能は妥協したくない人
- ノートPCのファン音や発熱が気になる人
- サブ機としてデザイン専用マシンを用意したい人
ミニPCは、デスクトップほど場所を取らず、ノートPCより冷却効率が良いという中間的な立ち位置。Illustratorのような2Dグラフィック中心の作業とは非常に相性が良いデバイスです。
ミニPCでIllustratorを快適に使うには？まとめ
IllustratorをミニPCで快適に使うためのポイントをおさらいしましょう。
- CPUは最新世代のCore i5／i7、Ryzen 5／7以上
- メモリは最低16GB、できれば32GB
- ストレージはNVMe SSDで500GB以上
- 統合GPUでも十分、ただしGPU描画を有効に
- 冷却性能と拡張性に注意してモデルを選ぶ
省スペースで見た目もスマート、それでいてデザイン作業に必要なパワーを備えたミニPC。性能と環境をしっかり整えれば、Illustratorを使ったプロフェッショナルな制作も快適にこなせます。
ミニPCでIllustratorを快適に使うには、ハードと環境の両面から最適化すること――これが最高のクリエイティブ体験への近道です。
