最近、小型でスタイリッシュな「ミニPC」が注目を集めています。場所を取らず、静音で、省電力。それでいて性能も向上しており、「これ1台でイラスト制作もできるのでは?」と気になる人も多いのではないでしょうか。
結論から言うと——ミニPCでもイラスト制作は十分可能です。ただし、スペックの選び方や液晶タブレット(液タブ)の接続方法を理解しておかないと、作業中に動作が重くなったり、ペンの反応が遅れたりすることもあります。
この記事では、ミニPCで快適にイラスト制作を行うために知っておきたいポイントを、わかりやすく紹介します。
ミニPCでイラスト制作は本当にできるの?
答えは「できる」です。
しかも、最近のミニPCは性能面でかなり進化しています。昔のように「小さい=非力」というイメージはもう古い話。今は、デスクトップ並みのCPUやGPUを搭載したモデルも多く登場しています。
ミニPCのメリットは、省スペース・静音性・省電力の3つ。机の上にちょこんと置けて、作業中もファンの音が気になりにくく、電気代も控えめ。イラスト作業に集中したい人には嬉しい環境です。
ただし、すべてのミニPCが「イラスト向き」ではありません。
描画ソフトを快適に動かすには、ある程度の処理能力が必要です。次の章では、どんなスペックを選べばいいのかを具体的に見ていきましょう。
イラスト制作用におすすめのミニPCスペック
イラスト制作において大事なのは、CPU・メモリ・ストレージ・GPUの4つ。
それぞれの役割と、どのくらいのスペックを選ぶべきかを整理します。
1. CPU:頭脳部分は「Core i5」か「Ryzen 5」以上を目安に
CPUは作業スピードに直結します。
線を引く・塗るといった操作だけでなく、ブラシの描画、レイヤー処理、画像の保存にも影響します。
趣味レベルなら「Intel Core i5」または「AMD Ryzen 5」でも十分。
ただし、複数のアプリを同時に開いたり、高解像度で作業したりするなら「Core i7」や「Ryzen 7」クラスを選ぶとストレスがありません。
2. メモリ:16GB以上が安心ライン
メモリが少ないと、ペイントソフトやブラウザを同時に動かしたときに動作が重くなります。
最近のイラストソフト(CLIP STUDIO PAINT、Photoshopなど)は、8GBでも動作しますが、快適さを求めるなら16GB以上。
プロ用途やカラー作品を多く扱う人は32GBを目指しましょう。
3. ストレージ:SSD(NVMe)で500GB以上を推奨
ストレージは読み書きの速さが命。
HDDでは保存や起動が遅く、作業のリズムが崩れてしまいます。
SSD、それもNVMe接続タイプのものを選ぶと、ソフトの起動やファイル保存がサクサクです。
容量は500GB〜1TBあると安心。イラストデータはサイズが大きくなりやすいので、余裕を持ちましょう。
4. GPU:できれば独立グラフィック搭載モデルを
イラストソフトはCPU依存のものが多いですが、GPU(グラフィックボード)があると描画の滑らかさが違います。
特に、液タブを2台目のモニターとして使う場合や、3D素材を扱う人はGPU搭載モデルを選びましょう。
NVIDIA GeForceやAMD Radeonシリーズを積んだミニPCなら、デスクトップに負けない描画性能を発揮します。
液タブ・ペンタブの接続方法をわかりやすく解説
ミニPCでイラスト制作をする場合、液タブやペンタブレットを接続して使うことが一般的です。
接続方法は難しくありませんが、注意すべきポイントがあります。
1. 液タブの場合
液晶画面付きのタブレット(液タブ)は、映像信号とペン入力の両方をPCに送る必要があります。
そのため、以下のようなケーブルが必要になります。
- HDMIまたはDisplayPort(映像出力用)
- USB(データ通信・ペン入力用)
- 一部機種では電源ケーブル(給電用)
最近はUSB-Cケーブル1本で映像・通信・電源をまとめて接続できるモデルも増えています。
ミニPC側にUSB-C(映像出力対応)ポートがあれば、配線もスッキリ。
ただし、USB-Cが「映像出力対応」でないと映りません。購入前に仕様を必ずチェックしましょう。
2. ペンタブの場合
液晶がないペンタブはUSBケーブルだけで接続できます。
ドライバをインストールすればすぐに筆圧感知なども有効になります。
シンプルで軽く、持ち運びやすいのが魅力です。
3. 注意点とトラブル対策
- 映像が出ない:HDMIやUSB-Cの接続規格が合っていない可能性があります。変換アダプタで解決できることもあります。
- ペンが遅延する:ドライバを最新版に更新。USBハブを経由している場合は、PCに直接接続してみましょう。
- モニター配置がズレる:WindowsやMacのディスプレイ設定で位置を調整すればOK。
イラスト制作用におすすめのミニPCモデル
実際に人気があるミニPCをいくつか紹介します。
どれもコンパクトながら、クリエイター作業にも十分耐えられるモデルです。
- Minisforum UM790 Pro:Ryzen 9 7940HS搭載。高性能CPUと静音設計で、CLIP STUDIOやPhotoshopを快適に動かせます。
- GEEKOM A6 Mini PC:Ryzen 7 6800H搭載。4K出力対応で、液タブ+モニターの2画面構成にぴったり。
- Apple Mac mini(Mシリーズ):Mac派に人気。M2チップ以降のモデルは描画処理が非常に高速で、イラストだけでなく動画編集にも使えます。
- GMKtec M5 Plus:コスパ重視の人向け。Ryzen 7 5825Uを搭載し、趣味〜副業レベルの制作なら十分な性能です。
どのモデルも机の上に置いても邪魔にならないサイズで、省スペースな作業環境を作れます。
ミニPCを使うメリットと注意点
メリット
- 省スペース:液タブやモニターを置くスペースを確保しやすい。
- 静音性:高負荷時でもファン音が小さいモデルが多く、集中できる。
- 持ち運びやすい:重さ1kg前後のものもあり、引っ越しやレイアウト変更が簡単。
- デザインがシンプル:無印良品のように、どんな部屋にも馴染むミニマルデザイン。
注意点
- 拡張性が低い:グラボ増設や電源交換ができないモデルが多い。
- 冷却性能に限界:長時間作業で熱がこもることがある。排熱スペースの確保が大事。
- ポート数に注意:液タブ・マウス・キーボード・外付けHDDなどを同時に使うなら、USBハブを用意しておくと安心。
快適に描くためのセッティングのコツ
- 作業スペースを整える
ミニPCは机の下やモニター裏にも設置できます。配線を短くまとめると、手元が広くなり集中しやすくなります。 - 冷却を工夫する
放熱スペースを確保し、直射日光の当たらない場所に設置しましょう。
USBファンや冷却スタンドを併用するのも効果的です。 - ソフト設定を最適化
CLIP STUDIO PAINTやPhotoshopのキャッシュ設定を見直すことで動作が軽くなります。
レイヤー数が多いときは、一部を統合して負荷を下げるのもポイント。 - データ管理をしっかり
イラストファイルは容量が大きくなりがち。
外付けSSDやクラウドストレージを活用して、PC本体のストレージを圧迫しないようにしましょう。
まとめ:ミニPCでイラスト制作は可能!正しい選び方で快適環境に
ミニPCでイラスト制作は十分に可能です。
重要なのは、自分の作業スタイルに合ったスペックを選び、液タブやペンタブレットを正しく接続すること。
省スペースで静音、しかも高性能。
そんなミニPCなら、自分の机を“コンパクトなアトリエ”に変えることができます。
今後はさらに高性能なミニPCが増えるでしょう。
「大きいPCでなければ描けない」という時代は、もう終わりです。
小さな1台で、あなたの創作をもっと自由にしてみませんか?
