iPhone SE 2020との向き合い方
さて、突然ですが、あなたは今、どんなiPhoneをお使いですか?
もしかしたら、画面にひびが入っていたり、バッテリーがすぐに減ってしまったりしていませんか? 「そろそろ機種変したいけど、最新のiPhoneは高すぎる…」そう思って、中古市場で目に留まるのが、この「iPhone SE 2020」ではないでしょうか。
ネットを見ると、「コスパ最強」「A13チップでまだまだ現役」といった声がある一方で、「バッテリーが持たない」「もう古いのでは?」という意見も。発売からすでに5年以上が経過した2026年の今、このスマートフォンに本当に価値はあるのでしょうか?
この記事では、単なるスペック比較ではなく、2026年の日常にこの機種を迎え入れることで、あなたが得られるものと失うものを、ありのままにお伝えします。結論から言えば、これは誰にでもおすすめできる機種ではありません。しかし、ある特定の条件を満たす人にとっては、今でも「最高の一枚」になり得るのです。
iPhone SE 2020の本質:時代を超えた「選択」
iPhone SE 2020は、2020年4月に登場し、2022年春に公式販売を終了しました。当時、その戦略は非常に明確で、ある意味で大胆なものでした。それは、見慣れた従来のボディに、当時の最新で高性能な「A13 Bionic」チップをそのまま詰め込むというもの。最新のデザインを追いかけず、使いやすさと処理速度という核心部分だけを徹底的に磨き上げたのです。
ですから、この機種を評価する際、最新機種と同じ物差しで測っても意味がありません。その真価は、「何を持っているか」ではなく、「何をあえて持っていないか」 という選択そのものに宿っています。コンパクトなボディ、ホームボタン、Touch ID——これらの要素を「古い」と切り捨てるか、「確実で最適なもの」と受け入れるか。そこに、このスマートフォンを選ぶ全てがかかっています。
2026年、A13チップの実力はどこまで通用する?
まずは気になる性能面から見ていきましょう。心臓部であるA13 Bionicチップは、発売当時のフラッグシップ、iPhone 11と同じものです。数字の上では最新チップに劣りますが、これが重要なポイントです。
- 日常使いは驚くほどスムーズ:SNSのチェック、ウェブブラウジング、動画視聴、メールやメッセージの送受信——これら日常生活のほぼ全ての操作に、もたつきを感じることはまずありません。体感的な「速さ」は十二分に保たれています。
- 限界は「作り込まれた高負荷」にある:その力が及ばないのは、最新の高グラフィック3Dゲームを最高設定でプレイしたり、4Kの超大作動画を編集したりするような場面です。もしあなたのスマホ用途がそこまで専門的でないなら、A13チップの性能は、2026年の今日でも十分すぎる保証になります。
要するに、“普通に使う”という範囲では、まだまだ余裕を持って戦えるチップだということ。スマホの基本性能である「サクサク動く」という体験は、しっかりと約束してくれます。
小さなボディと4.7インチ画面:譲れないこだわりか、我慢の選択か?
iPhone SE 2020の最も特徴的な部分、それがそのサイズです。
- 唯一無二のコンパクトさ:高さ138.4mm、幅67.3mm、重さ148g。これは、片手で軽々と扱え、どんなポケットにもすっと収まる大きさです。最新の大画面スマホに慣れてしまうと、この軽やかさと確実な操作性は、ある種の「解放感」として感じられるでしょう。
- 4.7インチRetina HDディスプレイの正直な評価:画面は4.7インチのLCDです。単体で見れば十分に綺麗なのですが、最新の有機EL(OLED)ディスプレイと並べると、その差は明らかです。特に、黒の深み(コントラスト)と太陽の下での見やすさ(最大輝度)は見劣りします。また、画面上下のベゼル(枠)が大きいため、最新機種のような没入感のある動画視聴体験は得られません。
ここは完全な好みとトレードオフの分かれ道です。「全てを片手で操作できる確かさ」を取るか、「広く美しい画面での体験」を取るか。動画をよく見る人、ゲームをする人には物足りなさを感じる部分ですが、情報をさっと確認するだけの人には、むしろ最適化されたサイズと言えるかもしれません。
シングルカメラの真実:写るのは「記憶」か「アート」か?
背面カメラは1200万画素のシングルレンズ。超広角も望遠もありません。一見すると大きく見劣りする部分です。
- 明るい日中はとても優秀:A13チップの優れた画像処理エンジンのおかげで、光さえ十分ならば、色鮮やかでディテールのしっかりした、非常に美しい写真を撮ることができます。日常のスナップや風景写真では、不満を感じる場面は少ないはずです。
- 明確な「できないこと」を知っておく:このカメラシステムの限界ははっきりしています。暗い場所での「ナイトモード」には非対応です。また、人物以外の被写体(例えばペットや料理)では、背景をぼかすポートレートモードも使えません。ズームも画質が大きく劣化するデジタルズームのみです。
つまり、このカメラは「記録する」ことには長けていますが、「創作する」ための多様な道具(レンズ)は備えていません。あなたがSNSに載せるようなこだわりの写真や、様々なシチュエーションで思い通りの画が欲しいなら、これは大きな物足りなさになるでしょう。
2026年モデルとしての「光」と「影」
ここからは、発売から5年経った「中古品」として迎え入れる際の、具体的なメリットとデメリットを整理します。
今でも輝く、3つの大きなメリット
- 圧倒的な初期コストの低さ:これは最大の魅力です。中古市場では、驚くほど手頃な価格で入手できる場合があります。最新のエントリーモデルに手を出すよりも、はるかに少ない投資でiOSの世界に入れます。
- Touch IDという確かな安心感:パンデミックを経て、その価値が再認識された指紋認証。マスクやサングラスをしていても一発でロックを解除できる確実さは、何ものにも代えがたい利便性です。
- 愛着の持てる手になじむ操作性:ホームボタンの物理的なクリック感、全ての操作が画面の下端で完結するわかりやすさ。これは、最新のジェスチャー操作に馴染めない人にとって、最高の選択肢です。
購入前に直視すべき、4つの現実的なデメリット
- バッテリー寿命は最大の懸念材料:元々容量が小さく(1818mAh)、かつ年数が経っているため、バッテリーの状態は使用体験を左右する最大の要素です。「外出中に充電が心配」という生活は覚悟する必要があります。中古購入時は、バッテリー健康状態の確認が必須です。
- OSサポート終了のカウントダウンが始まっている:Appleのサポートポリシーから推測すると、最新のiOSアップデートはあと1~2年で終了する可能性が高いです。その後もセキュリティアップデートは続くと思われますが、大きな新機能は得られなくなります。
- 最新機能とはほぼ無縁の世界:
- AppleのAI機能(Apple Intelligence)は利用できないと考えてください。
- 5G通信には非対応です。現在は問題なくても、今後主流になる高速通信を体験できません。
- 先述した、カメラの各種最新機能もありません。
- 部品調達と修理のリスク:公式修理サポートが終了しつつあるモデルです。万一、故障した時に簡単に修理できる保証は薄くなっています。
あなたはどっち? iPhone SE 2020が「最高の一枚」になる人・ならない人
ここまでの情報を踏まえて、この機種との相性を考えてみましょう。
iPhone SE 2020がぴったりなのは、こんなあなたです
- とにかく予算を最小限に抑えて、基本性能の高いiPhoneが欲しい。
- スマホは電話、メッセージ、地図検索が中心で、大画面や高機能カメラを必要としない。
- 片手で確実に操作できるコンパクトサイズにこだわりがある。
- Touch ID(指紋認証) の方が断然好き、または必要だ。
- 子どもやご年配の方の初めてのスマホとして、操作のわかりやすさを重視する。
逆に、以下のことにこだわるなら、他の選択肢を強くおすすめします
- 1日中、気にせず使い倒せるバッテリー持ちを最優先したい。
- 写真や動画撮影にこだわりがあり、暗所撮影やズームをよく使う。
- 動画視聴やゲームのために、大画面で没入感のある体験を求めている。
- できるだけ長く(5年以上)、最新のOS機能やアプリを使い続けたい。
- 5G通信の速さを体験したい、または今後を見据えたい。
賢い購入のための最終チェックリスト
どうですか? もし前者に当てはまる項目が多く、それでも「これでいい!」と思えたなら、最後に購入行動を起こす前に、以下の3点を確認してください。
- ストレージは「128GB」を狙え:アプリやOSの大型化を考えると、64GBではすぐに逼迫します。少しでも予算に余裕があれば、128GBモデルを探しましょう。
- 「バッテリー健康状態」を必ず確認せよ:販売元が公開している「最大容量」の数値(例えば90%など)を確認しましょう。80%を切っているものは、実用上すぐに交換が必要になる覚悟が必要です。
- 保証のある「整備済み品」を第一候補に:個人売買よりも、一定の検査・整備を経て保証が付いた「整備済み品」を扱う店舗やサービスから購入するのが、リスクを減らす最善策です。
iPhone SE 2020という選択が意味するもの
いかがでしたか? iPhone SE 2020は、最新機種が追い求める「全てを兼ね備えた進化」とは、正反対のベクトルにあります。それは、「不自由のない自由」を手放し、「確実なもの」だけを手にする選択です。
画面の美しさ、バッテリーの長持ち、最新カメラの魔法——それらの「あると便利なもの」を捨てる代わりに、手に残るのは、必要最低限の機能が、驚くほど高性能なチップで、使い慣れたカタチで動く、という一点張りの体験です。
2026年になって、あえてこの機種を選ぶという行為は、もはやスペックやコスパだけの話ではありません。それは、自分にとってのスマートフォンの「本質」は何かを問い直し、情報過多な現代において、あえて「足し算」ではなく「引き算」の価値を選ぶ、ひとつの態度表明のような気がします。
全ての人に勧められる機種ではありません。しかし、その小さなボディには、時代に流されない、確かな「使い心地」という財産が、今でもしっかりと息づいています。
