「デスクが狭くてワークステーションを置けない」「でもCADソフトをサクサク動かしたい」。
そんな悩みを持つ人にとって、ミニPCは魅力的な選択肢になっています。
とはいえ、小さな筐体の中でどこまでCADを快適に動かせるのか、気になりますよね。
この記事では、ミニPCでCADを快適に使うための推奨スペックと、実際に選ぶべき機種をわかりやすく解説します。
なぜ今、CAD用途でミニPCが注目されているのか
昔のミニPCといえば「小さいけど非力」という印象が強かったですが、ここ数年で性能が一気に進化しました。
最新のIntel Core i7/Ryzen 7クラスを搭載するモデルも増え、グラフィック性能も飛躍的に向上しています。
省スペースで設置できるうえに、消費電力も控えめ。
小規模な設計事務所や個人クリエイターにとって、コストパフォーマンスと効率を両立できる存在になっているのです。
さらに、メモリ増設やSSD交換ができる機種も多く、用途に合わせてアップグレードが可能。
「コンパクト=妥協」ではなく、「必要十分な性能を小さくまとめる」という選び方ができるようになりました。
CADソフトを快適に動かすためのスペック基準
ミニPCを選ぶ前に、CADソフトがどんなスペックを求めているかを整理しておきましょう。
ここを外すと、せっかくの投資がムダになってしまいます。
CPU(プロセッサ)
CADはシングルコア性能が重要。
図面の再生成やパーツの配置など、単一スレッドでの処理が多いため、クロックの高いCPUが有利です。
目安としては以下の通り。
- 軽めの2D CAD:Core i5/Ryzen 5 以上
- 本格的な3D CAD:Core i7/Ryzen 7 以上
- 大規模アセンブリやレンダリング:Core i9/Ryzen 9 クラス
また、最新世代のCPUは同じ型番でも性能が大きく違います。第10世代以前よりは、できるだけ新しいモデルを選ぶと安定感があります。
メモリ(RAM)
CADではファイルを開くだけで大量のメモリを使います。
16GBでも動作はしますが、3Dモデルや複数ファイルを扱うなら明らかに足りません。
32GBを基準に、余裕があれば64GBに。
デュアルチャネル構成(メモリを2枚セットで装着)にすると、描画性能がさらに安定します。
ストレージ(SSD)
起動やファイル読み込み速度を左右するのがストレージ。
SSDは必須です。HDDを選ぶ理由はもはやありません。
NVMe接続のSSDであれば、CADのファイルを開くスピードが段違いになります。
容量は最低でも512GB、理想は1TB以上です。
プロジェクトごとに大容量のアセンブリを扱うなら、外付けSSDやNASとの併用も検討しましょう。
グラフィックス(GPU)
2D設計であれば内蔵GPUでも十分ですが、3Dモデルを扱うなら専用GPUが欲しいところです。
NVIDIA GeForce RTX 4050/4060あたりを搭載したミニPCなら、多くのCADで快適に動作します。
AMD Radeon 780Mクラスの内蔵GPUも、軽いモデリングなら意外と健闘します。
ただし、GPU非搭載モデルを選ぶと後から追加できないケースが多いので注意が必要です。
ミニPCでCADを使うメリットと注意点
メリット
- 省スペースでスッキリ設置
小さな筐体はデスクを広く使いたい人にぴったり。モニタ背面に取り付けるタイプもあり、見た目もスマートです。 - 静音&省電力
最新のミニPCは冷却効率が高く、動作音も控えめ。小さなオフィスや自宅でも快適に使えます。 - コスパが良い
ワークステーションほど高価でなくても、CADが動く十分な性能を確保できるのが魅力です。
注意点
- 冷却性能の限界
高負荷が続くと、筐体が小さいぶん熱がこもりやすいです。ファン設計や通気性を確認しておきましょう。 - 拡張性の制約
グラフィックカードの交換や増設が難しい機種が多いです。購入時点で余裕のあるスペックを選ぶのが鉄則です。 - 長時間の高負荷運用には不向き
毎日レンダリングや解析を回すような用途には、やはりフルサイズPCのほうが安心です。
ミニPCでCADを動かすときの推奨構成例
軽めの2D・簡易3D用途
- CPU:Core i5/Ryzen 5 クラス
- メモリ:16~32GB
- ストレージ:SSD 512GB以上
- GPU:内蔵(Iris Xe/Radeon Vegaなど)
- 想定ソフト:AutoCAD LT、JW-CAD など
一般的な3Dモデリング用途
- CPU:Core i7/Ryzen 7
- メモリ:32GB(64GB推奨)
- ストレージ:SSD 1TB
- GPU:NVIDIA RTX 4060/Radeon 780M 以上
- 想定ソフト:Fusion 360、SolidWorks、Inventor など
大規模アセンブリ・レンダリング用途
- CPU:Core i9/Ryzen 9
- メモリ:64GB以上
- ストレージ:SSD 1TB+外部ストレージ
- GPU:RTX 4070クラス以上(ミニPCでは限られる)
- 想定ソフト:Revit、CATIA、Solid Edge など
CAD向けにおすすめのミニPC
ここでは、実際にCAD用途で人気の高いミニPCをピックアップします。
価格や構成は時期により変動しますが、性能バランスの目安として参考にしてください。
MINISFORUM UM790 Pro
Ryzen 9とRadeon 780Mを搭載したハイエンドミニPC。
3D CADや軽めのレンダリングも難なくこなします。
メモリ64GBまで拡張可能で、NVMe SSDの追加スロットもあり。
Lenovo ThinkCentre M75q Tiny
ビジネス向け設計で安定性が高いモデル。
Ryzen 5 PROを搭載し、堅牢な筐体と静音性が特徴です。
設計事務所などでの常用にも向いています。
GEEKOM A8
最新世代のRyzen 9搭載モデルで、パフォーマンスと省電力を両立。
小型ながらデュアルSSD対応、4K出力も余裕です。
3Dモデリング中心のユーザーにおすすめ。
ACEMAGIC AMR5
コスパ重視でCAD入門者に人気のモデル。
Ryzen 5 5600U+16GBメモリ構成なら、AutoCADなど2D中心の業務に十分対応。
後からメモリ・SSD増設も可能です。
ミニPCを快適に使うコツ
ハードウェアを整えるだけでなく、運用面でもパフォーマンスを引き出す工夫があります。
- 通気を確保する:壁際や密閉空間に置かない。熱が逃げにくいと性能が落ちます。
- デュアルモニタ環境を作る:CADはツールや図面を並べる作業が多く、作業効率が段違いです。
- SSDの空き容量を常に確保:容量が圧迫されると読み書き速度が低下します。
- ドライバを最新に保つ:GPUドライバ更新で描画の安定性が大きく変わることも。
- バックアップを自動化:小型PCはSSD寿命にも注意。クラウドや外付けSSDに定期保存しておきましょう。
こうした細かい管理を続けることで、ミニPCでも長く快適に使えます。
まとめ|ミニPCでCADソフトを快適に動かすには?
ミニPCでも、正しい構成を選べばCADソフトを十分に快適に動かせます。
ポイントをもう一度整理しましょう。
- CPUはCore i7/Ryzen 7以上を目安に
- メモリは最低32GB、できれば64GB
- ストレージはNVMe SSD 1TB以上
- GPUは用途に応じて専用グラフィックを選択
- 冷却と拡張性に余裕のあるモデルを選ぶ
そして何より、自分のCAD作業が「どのくらいの規模・負荷か」を理解することが大切です。
軽い図面なら省電力モデルでも十分ですが、3Dやレンダリングを行うなら高性能構成を迷わず選びましょう。
ミニPCはもう「サブマシン」ではなく、メインの作業環境として成立する時代です。
設計作業をもっと身近に、もっとスマートに。
あなたのワークスペースにぴったりのミニPCで、CAD作業のストレスを解消してみてください。
