かつてのビジネスパーソンの相棒、ThinkPad X240。発売から10年以上が経った今、中古市場で驚くほど手頃な価格を見かけるようになりました。「あの頑丈なThinkPadがこの値段で?」「今から買ってもまだ実用に耐える?」そんな疑問をお持ちのあなたに、現役ユーザーとして、そして数多くの中古PCを扱ってきた立場から、この名機の「現在地」を徹底解剖します。結論から言えば、ある条件と覚悟さえあれば、2026年現在でも非常にコスパの高い選択肢になり得るのがThinkPad X240なのです。
ThinkPad X240の本質:ビジネス向け「ロードウォーリア」の真価
X240は、薄さや見た目よりも、「どんな環境でも確実に仕事を終わらせる」ことを最優先に設計されたモバイルノート、いわゆる「ロードウォーリア」です。その設計思想は、今でも色あせません。
- とにかく頑丈:筐体はカーボンファイバーやマグネシウム合金で補強され、米国のミリタリー規格(MIL-SPEC)のテストをクリアしています。ノートパソコンを雑に扱うべきではありませんが、バッグの中で他のものとぶつかっても、あるいは多少の落下の衝撃にも、他社の薄型ノートよりはるかに強い安心感があります。
- 文句なしのタイピング感:現代の薄型キーボードとは一線を画す打鍵感が自慢です。キーストロークが深く、押し応えが明確で、長時間の文字入力やコーディングでも指が疲れにくい。多くのファンが「打っていて気持ちいい」と絶賛する理由です。
- 現代では貴重な「接続力」:有線LAN(RJ-45)ポートが標準装備! これだけでも、現代の多くのウルトラブックとは大きく異なります。会議室やカフェで安定した有線ネットワークを使いたい時に、わざわざ変換アダプタを探す必要がありません。さらに、USB 3.0、ミニDisplayPort、VGA、SDカードリーダーと、当時のビジネスシーンを想定した豊富なポートが揃っています。
2026年現在、ここがまだすごい!ThinkPad X240の3つの長所
発売から長い年月が経っても、次の3つの強みは色褪せておらず、むしろ現代の中古購入において大きなメリットになります。
1. 桁違いのバッテリー駆動「Power Bridge」システム
X240最大の特徴がこれ。本体内部に小さなバッテリー、背面に交換可能な大きなバッテリー(6セルや大きい72Whのもの)を装着する「Power Bridge」という独自システムです。
最大の魅力は、外部バッテリーが先に消耗する仕組み。つまり、電源を切らなくても、背面のバッテリーだけをパチンとはずして新品に交換でき、理論上は無限に駆動し続けられたのです。大きいバッテリーを付ければ、当時のレビューでは15時間以上の使用が可能と報告されていました。中古で大きなバッテリーが付属しているモデルを入手できれば、今でも「1日中外で電源を気にせず使える」というアドバンテージを享受できます。
2. 自分で直し、アップグレードできる「保守性」の高さ
最近のノートPCは全てが基板に半田付けされ、ユーザーが触れないのが当たり前。それとは対照的に、X240は自分でメンテナンスやアップグレードがしやすい設計です。
- 交換・増設可能なパーツ:底面のカバーを外せば、2.5インチのSATA SSD/HDD、mSATA SSD(キャッシュ用)、Wi-Fiカードに直接アクセスできます。
- 掃除も簡単:長年使われた中古品は内部にほこりがたまり、ファンがうるさくなっていることがほとんど。X240は冷却ファンまで比較的簡単にたどり着けるため、分解して掃除し、CPUに新しいサーマルグリスを塗り直すことで、静音化と発熱対策が自分でできます。これは中古PCを長く快適に使うための最重要メンテナンスです。
3. 圧倒的なコスパ:最低限の投資で良質な「土台」を手に入れられる
発売当初は高額だったX240も、今では中古市場で非常に手頃な価格で流通しています。本体が数千円~2万円台で見つかることも珍しくありません。この価格で、あのThinkPadの堅牢な筐体と最高級のキーボードが手に入るのです。
「性能は自分で引き出せばいい」という考え方を持てる人にとって、これは抜群のコスパ。後述する必須アップグレードに少し投資するだけで、性能面での不足分を十分にカバーできる「頑丈な土台」としての価値が、今でも十分にあるのです。
知っておくべき現実:2026年におけるThinkPad X240の4つの限界
魅力ばかりではなく、2026年という時点で購入を検討する上で、絶対に理解しておくべき制約と課題があります。これらを無視すると「思ってたのと違う……」という失望につながります。
1. 性能の天井は低い:最新の重い作業は諦めよう
搭載されているCPUはインテル第4世代「Haswell」の超低電圧プロセッサ。当時はモバイルに適したバランスの良い性能でしたが、現代のアプリケーション、特にWebブラウザは非常に重くなっています。
- 向いている作業:文書作成、メール、Web閲覧(タブはあまり開きすぎないこと)、プログラミング(軽量なエディタやIDE利用)、リモートデスクトップでの作業。これらは問題なくこなせます。
- 向いていない作業:高解像度動画の編集、最新の3Dゲーム、Photoshopなどでの重い画像処理、大量のタブとWebサービスを同時に動かす「現代的な」ブラウジング。これらはCPUや内蔵GPU(Intel HD 4400)がすぐに限界に達します。
2. メモリの壁:最大8GBという絶対的な制限
現代のPC用途において、X240の最も厳しい制限がこれです。メモリスロットが1つしかないため、増設できる最大容量は8GB(DDR3L)で固定されています。現代ではブラウザだけで簡単に4GB以上を消費することもあり、8GBはマルチタスクの幅をやや狭めてしまいます。仮想マシンを使いたい、数十タブを開きながら他の作業もしたい、という方はこの点を特に重く受け止めてください。
3. 伝統からの「変化」:物議を醸した入力デバイス
ThinkPadと言えば「トラックポイント」(赤いポインティングスティック)とその専用ボタン。しかしX240は、トラックパッドと一体になった「ボタンレスタッチパッド」を導入し、従来の物理ボタンを廃止しました。この変更は、長年のThinkPadユーザーから大きな不満の声を生みました。トラックポイントをメインで使うユーザーは、この操作性の変化に慣れることができるかが大きなポイントです。後継モデルのThinkPad X250では物理ボタンが復活していることからも、この変更の評価が伺えます。
4. ディスプレイのギャンブル(特にベースモデル)
最も低価格な構成で搭載されていたのは、12.5インチの非IPS、1366×768ピクセルのディスプレイです。発売当時でも解像度と視野角の低さは指摘されていました。上位モデルにはフルHD(1920×1080)の美しいIPS液晶タッチパネルもありましたが、中古市場でこの高解像度モデルを探すのは難易度が高く、価格も跳ね上がります。ベースモデルの画面は、現代の高精細ディスプレイに慣れた目には、確かに見劣りする可能性が高いです。
中古購入の実践マニュアル:これだけはチェック!
実際に購入を考えた時、商品説明や実物でどこを見ればいいのか、そのポイントをまとめます。
購入前、絶対に確認すべき6項目
- CPU:Core i5-4300U以上が快適性の目安。Core i3-4010Uでも基本作業は可能ですが、余裕はありません。
- メモリ:最初から8GB搭載されているモデルを選ぶのが理想的。4GBモデルは後から8GB一枚に交換する必要があり、追加コストがかかります。
- ストレージ:SSD搭載モデルが圧倒的におすすめ。HDDの場合は、SSDへの換装コスト(約5,000〜10,000円)を購入価格に上乗せして考えましょう。
- バッテリー:背面が平らな小さなバッテリー(3セル)か、背面がせり出した大きいバッテリー(6セル)か? 大容量バッテリー付きはモバイル性で大きなアドバンテージです。バッテリーの「膨張」がないかも画像で要確認。
- ディスプレイ:解像度は1366×768か1920×1080(フルHD)か? 記載がない場合はほぼ前者と考えたほうが無難です。
- 外観:キーボードのテカリや磨耗、筐体(特に角)のひび割れや欠けはないか。ネジ穴が潰れていないかも中古の状態を計るバロメーターです。
購入後、真っ先にしたい3つのアップグレード&メンテナンス
- SSDへの換装(必須):HDDモデルを買ったなら、これは最初の儀式です。2.5インチSATA SSDを購入し、クローン作成ソフトで丸ごと移行するか、この機会にOSをクリーンインストールしましょう。体感速度が劇的に変わります。
- 内部清掃とサーマルグリス塗り直し:中古PCの寿命と静音化のために、これはやっておく価値が大いにあります。ネットに多くの分解動画があるので、それを見ながら慎重に作業を。ほこりだらけの冷却ファンが綺麗になり、CPUの熱が効率よく逃げるようになれば、ファン音が静かになり、サーマルスロットリング(熱による性能低下)も防げます。
- OSの選択とチューニング:
- Windows 10/11:軽快に動かすには、スタートアップアプリの無効化や視覚効果の削減など、リソースを節約する設定が有効です。
- Linux:これこそがX240を「今でも現役バリバリ」にする最強の選択肢かもしれません。Ubuntu MATEやXubuntuなど軽量なディストリビューションを選べば、サクサクの動作でプログラミングやWeb作業が楽しめます。多くの開発者や愛好家がこの組み合わせを推奨しています。
ThinkPad X240はこんな人に刺さる! 最終判断の指針
まとめると、ThinkPad X240は、全ての人に勧めるマシンではなく、特定のニーズを持つ人にとっての「名機」 です。
GO(購入を積極的に検討してOK)のサイン
- 予算を抑えつつ、ビジネスレベルの頑丈さと打鍵感を求めている。
- メインの用途が、文書、メール、Web調査、軽量なプログラミングなど「基本的な生産性作業」に収まる。
- パソコンの内部に興味があり、自分で掃除したりパーツを換えたりするのが苦にならない(むしろ楽しい)。
- 大きなバッテリー付きモデルを入手でき、長時間のモバイル使用を想定している。
STOP(購入は一旦考え直したほうが良い)のサイン
- 最新のゲームやAdobeソフト、動画編集を快適にこなしたい。
- 高精細で鮮やかなディスプレイに慣れており、画面の美しさにこだわりがある。
- 「とにかく何でもサクサク動いてほしい」という欲求が強く、我慢が苦手。
- ブラウザで20タブ以上開きながら、他のアプリも同時に動かすのが日常茶飯事。
ThinkPad X240の価値は、その「不変の実用性」と「ユーザーに委ねられた拡張性」にあります。最新の性能は望めませんが、与えられた仕事を黙々と、長年にわたってこなしてくれる「頼もしい仕事道具」としての本質は失われていません。中古購入は、その道具の良さを理解し、自らの手でよみがえらせ、使い込むことに喜びを感じられる人への、最高の提案なのです。
まとめ:ThinkPad X240は2026年でも「使える」選択肢だ
いかがでしたか? 時代に取り残された欠点も確かにありますが、それを補って余りある魅力とポテンシャルがThinkPad X240にはまだまだ眠っています。「性能は足りないけど、愛着はたっぷり」 そんな関係を築けるのが、この10年前の名機なのかもしれません。中古市場を覗く際は、ぜひこの記事を判断の参考にしてみてください。あなたにぴったりの相棒が見つかることを願っています。
