ミニPCというと、「小さい」「静か」「置き場所に困らない」というイメージが強いですよね。けれど最近は、そのコンパクトさに加えて“高拡張性”を重視したモデルが注目されています。特に「3.5インチHDDを内蔵できるミニPC」を探している人が増えているのは、動画編集やNAS（自宅サーバー）用途で大容量ストレージを確保したい人が増えているからです。
ここでは、そんな“3.5インチHDDを内蔵できるミニPC”に焦点を当てて、仕組み・選び方・おすすめモデルまでを徹底的に紹介します。
ミニPCで3.5インチHDDを内蔵する意味
一般的なミニPCは、省スペースを優先しているため、M.2 SSDや2.5インチSSDしか搭載できないケースが多いです。3.5インチHDDを内蔵できるミニPCは少数派ですが、だからこそ価値があります。
3.5インチHDDを内蔵できる利点は次のとおりです。
- 大容量ストレージを安価に確保できる
動画・写真・アーカイブなどの保存にはコスパの良い3.5インチHDDが最適です。1台で8〜20TBも可能なモデルも多く、コストパフォーマンスはSSDの数分の一。 - NAS（ファイルサーバー）や録画用PCに向いている
24時間稼働させてデータを共有したり、監視カメラ映像を保存したりする用途にもぴったり。 - 拡張性が高く、長期運用に向く
将来、HDDを追加したり交換したりできる構造のミニPCなら、長く使い続けられます。
ただし、3.5インチHDDは回転体で発熱や振動もあるため、ケースの冷却性能や電源容量も大切なポイントになります。
3.5インチHDD対応ミニPCが少ない理由
ミニPCで3.5インチHDD対応モデルが限られているのは、単純に“サイズの問題”が大きいです。3.5インチドライブは物理的に厚みがあり、一般的なNUCサイズのケースには入りません。
また、3.5インチHDDは消費電力が高く、静音設計が難しいという側面もあります。小型ケースに収めるには、冷却設計と電源ユニットに余裕が必要。そのため、3.5インチHDD搭載可能なモデルは、やや大きめの“キューブ型”や“スモールデスクトップ型”が中心です。
それでも、ストレージ重視派やクリエイター向けに、3.5インチHDDを複数台搭載できるミニPCが増えてきています。
ミニPCで3.5インチHDDを使うメリットとデメリット
メリット
- 容量単価が安く、数TB級の保存領域を確保できる
- 物理的に内蔵するため、外付けHDDより安定して速い
- RAID構成などで安全性を高めることも可能
デメリット
- ケース内部の温度が上がりやすい
- HDDの振動が騒音につながる場合がある
- 電源容量に余裕が必要
このため、冷却性能・静音性・設計のバランスを取っているモデルを選ぶのがポイントです。
3.5インチHDD対応ミニPCの選び方
「3.5インチHDDを入れられる」と一言でいっても、実際の仕様はメーカーによって大きく異なります。購入前に次のポイントをチェックしましょう。
1. ベイの数とレイアウト
3.5インチHDDを何台搭載できるかを確認します。1台のみ対応のモデルもあれば、4台以上入る本格的なベアボーンもあります。2台以上ならRAID構成（ミラーリングなど）も可能になります。
2. SATAポートと電源コネクタ
3.5インチHDDはSATAケーブルとSATA電源が必要です。マザーボードに十分なSATAポートがあるか、電源ユニットが対応しているか確認しましょう。
3. ケースの冷却性能
HDDは熱に弱いパーツです。吸気・排気ファンが備わっているか、エアフロー設計がしっかりしているかを重視してください。特に複数台搭載時は冷却が命です。
4. 拡張性とメンテナンス性
PCIeスロットやM.2スロットの有無、ケーブルの取り回しやすさも要チェックです。ドライブ交換が簡単な構造だと、長期的に便利です。
5. 静音性と設置環境
HDDは回転音や振動が出るため、静音性が求められる環境ではファン制御機能付きのモデルや吸音材入りケースを選びましょう。
実例：3.5インチHDD対応の高拡張性ミニPC
Shuttle XPC Cube SH570R8
「3.5インチHDDを内蔵できるミニPC」として代表的なのが、ShuttleのXPC Cubeシリーズです。SH570R8は3.5インチベイを4基も搭載し、第10／11世代のIntel Coreプロセッサに対応するベアボーンモデル。PCIe 4.0スロットもあり、グラフィックカードやRAIDカードを追加できます。
・3.5インチHDD×4台
・M.2 NVMe SSD×1
・PCIeスロット×2
・最大メモリ128GB（DDR4）
この構成なら、動画編集用PCやNASサーバーとしても十分。コンパクトながら本格的な拡張が可能です。
ASUS Mini PC PN64
こちらは2.5インチHDD/SSD対応モデルで、3.5インチは内蔵不可。ただしM.2＋2.5インチ構成で省スペース性を保ちたい人には向いています。小型性を優先するならこうした選択肢もありです。
ASRock DeskMini X300
ベアボーンタイプの小型デスクトップ。2.5インチドライブ×2搭載可能で、外部3.5インチHDDを併用する構成が人気。AMD Ryzen搭載可能でコスパが高いです。
こうして比較すると、「本格的に3.5インチHDDを内蔵するならShuttle系」「コンパクト重視ならASUSやASRock系」といった棲み分けになります。
使用目的別のおすすめ構成
動画編集・クリエイター用途
M.2 SSDをシステムドライブ、3.5インチHDDをデータ保存用に分ける構成がベスト。高速アクセスと大容量を両立できます。
ホームサーバー・NAS用途
3.5インチHDDを2台以上搭載し、RAID1（ミラーリング）構成で安全性を確保。24時間稼働なら静音ファンや低回転HDD（NAS用）を選ぶのが安心です。
ゲーム・日常利用＋バックアップ
NVMe SSDにゲームを入れ、3.5インチHDDをバックアップ専用にする構成も人気。ミニPCなら省スペースでデスクもすっきり。
冷却・騒音・振動の工夫
3.5インチHDDを複数搭載すると、熱と振動がどうしても気になります。そこでできる工夫を紹介します。
- HDD固定時にゴムブッシュなどの防振パーツを使う
- ファンの風向きを調整して、HDDに直接風が当たるようにする
- ケースの通気口を塞がないように設置する
- ファン制御ソフトで回転数を調整する
これだけでも静音性と寿命が大きく変わります。
運用とメンテナンスのコツ
3.5インチHDDを使うなら、定期的な健康チェックが欠かせません。
- SMART情報を確認して温度や異常を監視
- 年に1回は内部の埃を清掃
- データは外部HDDやクラウドにもバックアップ
- 長期稼働時はUPS（無停電電源装置）の導入も検討
「内蔵できるから安心」ではなく、「守りながら使う」意識が大事です。
3.5インチHDDを内蔵できるミニPCを選ぶ価値
3.5インチHDDを内蔵できるミニPCは、確かに一般的なNUCやスティックPCよりも大きく、価格もやや高めです。しかしそのぶん拡張性・保存性・信頼性が高く、「小型でも本格的に使える1台」を探している人には理想的な選択肢になります。
ストレージの容量に妥協したくない人、NASや編集作業を1台でこなしたい人にとって、「3.5インチHDD対応」は単なる仕様ではなく、“長く使える安心の条件”ともいえます。
最後にもう一度、キーワードを込めて締めくくりましょう。
3.5インチHDDを内蔵できるミニPC徹底比較！高拡張性モデルの選び方――
省スペースと大容量を両立したいなら、あなたの理想の1台がきっと見つかります。
