ミニPCやUMPCを使っていると、どうしてもネックになるのが「グラフィック性能」。軽量で省スペースなのはいいけれど、3Dゲームや動画編集では力不足を感じることもありますよね。そんな悩みを外付けで一気に解決してくれるのが、GPDのeGPUドック「GPD G1」です。
ここでは、実際の性能や使い勝手を中心に、購入を検討している方が知っておきたいポイントを徹底的にレビューしていきます。
GPD G1とは?超小型eGPUドックの正体
GPD G1は、見た目は小型の外付けストレージのようですが、実は中にAMD Radeon RX 7600M XTという本格的なGPUを内蔵した外付けグラフィックユニット(eGPU)です。
本体サイズは約225 × 111 × 30 mmほどで、手のひらより少し大きい程度。これほどコンパクトな筐体に、8GB GDDR6 VRAMを備えたRDNA 3アーキテクチャのGPUが収まっているというのは驚きです。
接続方式はUSB4とOCuLink(SFF-8612)の2種類に対応。Thunderbolt 3/4ポートを備えたノートPCや、OCuLink搭載のミニPCに接続できます。
また、HDMI 2.1やDisplayPort×2、USB 3.2ポート、SDカードスロットも備え、ドッキングステーション的にも使える点が魅力です。
実際のGPU性能:コンパクトでも本格派
GPD G1の中核となるGPU、AMD Radeon RX 7600M XTはモバイル向けながら非常にパワフル。
ゲームベンチマークでは、OCuLink接続時に3DMark 11 GPUスコアで3万6千点前後というデータもあり、これはデスクトップ向けGeForce RTX 4060クラスに近い水準です。
たとえば、フルHD解像度で
- 『The Witcher 3』では100 fps超
- 『Far Cry 5』では平均141 fps
という実測値も出ています。ノートPC内蔵のiGPUや、軽量ミニPCの内蔵GPUでは到底届かないレベルです。
動画編集や3Dモデリング、AI画像生成など、GPU支援を活かせる作業も快適にこなせるでしょう。
接続方式による性能差:OCuLinkの圧倒的優位
ここで注意したいのが、接続方法による性能差です。
GPD G1はUSB4でも動作しますが、帯域の都合でパフォーマンスが低下します。USB4接続ではOCuLink接続時よりも最大で40%ほどfpsが下がるケースもありました。
もしホストPCにOCuLinkポートがあるなら、迷わずそちらを使うべきです。
OCuLinkはPCIe 3.0 x4直結のため遅延が少なく、GPUの性能をほぼそのまま発揮できます。USB4しかない場合は、「それでも十分速いが、デスクトップ並みとはいかない」と割り切るのが現実的です。
静音性と発熱:小型ゆえのトレードオフ
小型筐体に高性能GPUを詰め込んでいるため、冷却面はややシビアです。
アイドル時は静かですが、ゲームやレンダリングなど負荷をかけるとファンが一気に回転し、デスク上でも「シュルルッ」とした風切り音が聞こえる程度になります。
とはいえ、2024年モデルでは冷却設計が改善され、ファン制御も緩やかになりました。内部温度は高負荷時でも70〜75℃前後に収まり、安定性は高い印象です。
静音を重視するなら、風通しの良い場所に設置するか、PCケースのように少し離れた位置に置くのがおすすめです。
ミニPCやUMPCとの相性抜群
GPD G1が特に真価を発揮するのは、ミニPCやUMPCとの組み合わせです。
これらの小型デバイスは省スペース・低消費電力が魅力ですが、グラフィック性能がボトルネックになりがち。
そこにGPD G1を繋げるだけで、据え置きゲーミングPC並のパフォーマンスを得られるわけです。
たとえば、GPD自身のハンドヘルドPC「GPD WIN Max 2」や「GPD WIN 4」などとOCuLinkで直結すれば、携帯ゲーム機が一瞬でデスクトップ級マシンに変身します。
ノートPCを普段使いし、帰宅したらGPD G1に接続してゲームや動画編集を行う——そんな使い分けにも最適です。
ドック機能としての便利さ
GPD G1はただのGPUボックスではありません。
本体背面にはHDMI 2.1×1、DisplayPort×2のほか、USB 3.2ポートやSDカードスロットを装備。さらにホストPCへの給電(最大65 W)にも対応しています。
つまり、ケーブル1本で「映像出力+電源供給+USBハブ機能」を同時にこなせるというわけです。
これにより、デスク周りをスッキリさせたい人にも好相性。ノートPCをドッキングしてデュアルモニタ環境にするのも簡単です。
特にクリエイターや映像編集者にとって、周辺機器の接続をまとめられるのは大きなメリットでしょう。
注意点とデメリットも正直に
どんな優れた製品にも弱点はあります。GPD G1を検討する際に知っておきたいポイントを挙げておきます。
- 価格が高め:日本では10万円前後。性能を考えれば妥当ですが、コスパ重視派にはややハードルが高い。
- 接続要件がやや特殊:OCuLink端子はまだ普及が進んでおらず、多くのノートPCではUSB4しか使えない。
- 騒音と発熱:高負荷時のファン音は避けられない。静音を求める場合は設置位置を工夫したい。
- GPUの交換不可:内蔵GPU固定式のため、将来的にアップグレードはできない。
これらを踏まえても、外付けでこのサイズ・性能を実現している点は特筆に値します。導入前に自分のPC環境との相性を確認すれば、満足度は非常に高いはずです。
どんな人におすすめ?
GPD G1は「携帯性」と「性能」を両立したいユーザーに最適です。
- ミニPCやUMPCでゲームを楽しみたい人
- ノートPCで動画編集やAI生成をスムーズに行いたい人
- デスクトップPCのような性能を、設置スペースを取らずに得たい人
- 外出先と自宅で1台のPCを使い分けたい人
逆に、すでに高性能GPUを内蔵したデスクトップを持っているなら、あえて導入する必要は薄いでしょう。
あくまで「モバイル環境を強化するための選択肢」として考えるのがベストです。
実際の使用感と総評
実際に触ってみると、GPD G1は「小さいのに本格的」という印象が強いです。
ケーブルを繋ぐだけでGPUが認識され、ゲームの起動時間やレンダリング速度が目に見えて改善します。
コンパクトな筐体の中でファンがしっかり仕事をしており、安定したパフォーマンスを維持する点も好印象です。
外観もGPDらしいシンプルなデザインで、デスク上に置いても違和感がありません。
唯一の悩みは価格と接続環境のハードルですが、それをクリアできるなら「現状最も完成度の高いポータブルeGPU」と言っていいでしょう。
まとめ:GPD G1ミニPCは外付けGPUの新しい基準
ここまで見てきたように、GPD G1はただの周辺機器ではありません。
ミニPCやUMPCに“新しい命”を吹き込む、次世代のグラフィック拡張デバイスです。
OCuLink接続でデスクトップ級のGPU性能を発揮し、USB4でも十分な処理速度を実現。
映像編集・3D制作・ゲーミングなど幅広い用途に対応できるうえ、ドックとしての拡張性も兼ね備えています。
小型・高性能・多機能という三拍子が揃ったGPD G1は、モバイルPC時代における理想の“外付け相棒”といえるでしょう。
これからミニPCやハンドヘルドPCを中心に据えたい人にとって、GPD G1ミニPCは間違いなく検討すべき一台です。
