デスクの上をスッキリさせたい。でも性能は妥協したくない。そんなビジネスユーザーの願いを叶える小型PCとして注目を集めているのが、ASUSの「MiniPC PB60G」だ。この記事では、その実力を実際の使用感や仕様から徹底的に掘り下げていく。
小型でも本格派。ASUS MiniPC PB60Gとは?
PB60GはASUSのビジネス向けシリーズの中でも特に“コンパクトさと拡張性”を両立したモデルだ。175×175×70mmという手のひらサイズの筐体に、デスクトップ向けのIntel Core i7-9700TシリーズCPUを搭載できるというのが特徴。
このサイズ感でIntel Core i7-9700Tクラスまで選べるのは珍しく、まさに“小さな巨人”といった存在だ。
本体は約1.6kgと軽量で、モニター背面にVESAマウントで固定することも可能。机の上を広々使いたい人や、オフィスの限られたスペースで効率的に配置したい人に向いている。
ビジネス用途に最適な堅牢設計と拡張性
ASUS MiniPC PB60Gの大きな魅力のひとつが、企業ユースを前提とした設計だ。
24時間連続稼働(24/7オペレーション)を想定しており、耐久性と安定性を重視した構造になっている。冷却機構も専用設計の薄型ヒートシンクと外排気ファンを採用し、内部の熱を効率的に逃がす。
また、拡張性にも抜かりがない。
メモリはDDR4のSO-DIMMスロットを2基搭載し、最大32GBまで対応。ストレージもM.2 SSDと2.5インチHDDのデュアル構成が可能で、速度と容量の両立ができる。
入出力端子は豊富で、USB3.1 Gen2ポートやUSB Type-C、DisplayPort、HDMI、mini-DisplayPortなどを備える。さらに背面には「コンフィギュラブルポート」と呼ばれる拡張ポートがあり、VGA・COM・DisplayPortなどを用途に応じて選べる仕組みだ。
Quadro搭載でグラフィック処理も強力
PB60Gには、NVIDIA Quadro P620やNVIDIA Quadro P1000を搭載したモデルも存在する。
このQuadroシリーズは、3D CADや映像制作、建築ビジュアライゼーションなどのプロ用途で使われるGPU。ビジネス小型PCながら、プロフェッショナル向けアプリケーションの動作にも耐えうる性能を発揮する。
特にNVIDIA Quadro P1000搭載モデルでは、最大7台のディスプレイ出力が可能。多画面環境での株式トレーディングやデジタルサイネージ、コントロールルームなどでも活躍できる柔軟さがある。
実際のパフォーマンスと使用感
実機レビューの計測によると、PB60Gのパフォーマンスは非常にバランスが良い。
例えばIntel Core i5-9500T構成でのベンチマーク結果では、Cinebench R20でCPUスコアが約970前後。一般的なオフィス用途はもちろん、軽い画像編集や簡単な3Dモデリングでも快適に動作する。
ストレージの速度も優秀で、NVMe SSDを搭載した構成では読み込みが500MB/s超え、書き込みも250MB/s前後と十分に高速だ。
普段の作業でストレスを感じることはほとんどない。
動作音に関しては、アイドル時には静かだが、高負荷時にはファンがやや目立つという声もある。最大時の騒音レベルは約50dB程度。静かなオフィスでは多少気になる可能性があるが、許容範囲といえるレベルだ。
消費電力はアイドル時約20W前後、最大時で130W程度。省電力性も上々で、長時間運用に向く。
メンテナンス性と拡張のしやすさ
PB60Gは、小型PCの中でも内部アクセスが非常に容易だ。背面のネジ1本を外すだけで内部にアクセスでき、メモリやストレージの換装・増設もシンプル。
M.2 SSDや2.5インチHDDのスロットが独立しているため、アップグレードの際も干渉しにくい構造になっている。
ただし、パーツ交換や増設はメーカー保証の対象外になる場合があるため、自己責任で行う必要がある点には注意したい。
ビジネスシーンでの実用性
オフィス環境での使い勝手は非常に良好だ。
まず、起動が速い。SSD構成であれば、電源投入からログインまで10秒前後というレスポンス。メールチェック、ブラウザ操作、Office作業、Zoom会議などの日常業務では全くストレスを感じない。
また、DisplayPortやHDMIによるマルチモニター構成が容易で、デュアル〜クアッドディスプレイの設定もスムーズ。グラフィック搭載モデルなら、7画面出力も現実的だ。
デザインもビジネスに馴染むシンプルなマットグレー。LEDの点灯も控えめで、会議室や受付カウンターに設置しても違和感がない。
注意点と選び方のコツ
PB60Gを選ぶ際に意識したいのは、CPUとGPUのバランスだ。
一般的な事務用途ならIntel Core i5-9400TやIntel Core i3-9100Tと内蔵グラフィックで十分だが、CADやデザイン系ソフトを扱うならNVIDIA Quadro P620搭載モデルが安心。
ただし、グラフィックモデルは価格が一段上がるので、用途を明確にしてから選ぶのがおすすめだ。
また、静音性を重視するなら設置場所にも工夫が必要だ。机上よりも少し距離を取った棚の上やモニター裏に固定すると、ファン音が軽減される。
同価格帯の他社ミニPCとの比較
同クラスではIntel NUCシリーズやHP Elite Mini、Lenovo ThinkCentre Tinyなども競合となるが、PB60Gは拡張性と安定性の面で一歩リードしている。
特に、Quadro搭載モデルという選択肢はこのサイズでは希少。
企業導入を前提とした堅牢設計や、交換しやすいモジュラー構造もASUSらしい強みといえる。
一方で、最新世代CPU搭載モデルと比較すると処理効率や内蔵GPU性能は一歩劣る。最新インターフェース(Thunderbolt 4やWi-Fi 6など)を求めるなら、後継モデルの検討も視野に入れたい。
総評:ASUS MiniPC PB60Gは「堅実で頼れる小型ビジネスPC」
ASUS MiniPC PB60Gは、コンパクトながら本格的な処理能力を備えたビジネス向けPCだ。
スペース効率、拡張性、信頼性をバランス良く融合させ、業務環境をスッキリさせつつ安定稼働を実現する。
「省スペースでもパワフルに働きたい」「マルチモニター環境をスマートに構築したい」「企業導入に耐える安定性がほしい」
そんなニーズに応える一台として、PB60Gは非常に完成度の高い選択肢といえる。
静音性や最新仕様の面ではやや古さを感じる部分もあるが、トータルで見れば今なお十分現役。
ASUS MiniPC PB60Gは、“働く環境を変える小さなパートナー”として、ビジネスの現場で確かな存在感を放つ1台だ。
