「気づいたらみんな使っているけど、ワイヤレスイヤホンっていつから普及したんだろう?」
そんな疑問を持ったことはありませんか。
通勤電車でもカフェでも、耳元には小さなイヤホン。ケーブルがなく、動きやすく、スマートな印象。今や生活の一部になったワイヤレスイヤホンですが、ここに至るまでには長い技術の進化の道のりがあります。
この記事では、ワイヤレスイヤホンが登場してからどのように普及してきたのか、その歴史と進化の流れをわかりやすくたどっていきます。
有線イヤホン時代から始まった「音を持ち運ぶ」文化
イヤホンの原型が誕生したのは20世紀初頭。電話交換手や無線通信士が使っていたヘッドホンがその起源です。
しかし「音楽を個人で聴く」という文化が一般に広がったのは、1979年にソニーのウォークマンが登場してからでした。
この頃は当然すべてが有線。細いケーブルが耳とプレイヤーをつなぐのが当たり前でした。
それでも、好きな音楽をどこでも聴ける自由さに、多くの人が魅了されました。
1990年代後半になると、ポータブルCDプレイヤーやMDウォークマンが人気に。
イヤホンの形も、耳の中にフィットするカナル型が登場し、音質や装着感が格段に向上します。
「いつでもどこでも音楽を聴く」という習慣が、この時代に完全に定着しました。
ワイヤレス化を支えたBluetooth技術の登場
イヤホンが“ワイヤレス”になるためには、音を無線で飛ばす技術が必要です。
その主役が「Bluetooth」です。1998年に規格化され、2000年代に入ると携帯電話やPCで広く使われ始めました。
初期のBluetoothイヤホンは、片耳タイプのヘッドセットが中心。
主にハンズフリー通話用で、音楽を楽しむには音質も安定性も物足りないものでした。
それでも、「ケーブルから解放される」という体験は新鮮で、徐々に注目を集めていきます。
ただ、当時はまだ左右のイヤホンがケーブルでつながっていたり、首にかけるネックバンドタイプが主流。
“完全ワイヤレス”と呼べる時代には、もう少し時間がかかりました。
世界初の完全ワイヤレスイヤホンが登場
ワイヤレスイヤホンの転機は2014年。
ドイツのスタートアップ「Bragi」がクラウドファンディングで発表した「The Dash」が、左右が完全に独立した“True Wireless”イヤホンとして注目を浴びます。
翌年にはオンキヨーが「W800BT」を発売し、日本メーカーとしてもこの分野にいち早く参入しました。
ただし、この頃の製品はまだ課題が多く、接続が途切れたり、再生時間が2〜3時間と短かったりと、実用面では発展途上。
「面白いけどまだ早い」という印象が一般的でした。
それでも、技術の可能性は明らかでした。
ケーブルが一切ない、ポケットサイズの充電ケースで充電できる――。
“完全ワイヤレス”という新しい体験は、間違いなく次の時代の音楽スタイルを予感させたのです。
AirPodsの登場で市場が一気に動いた
2016年9月、Appleが「AirPods」を発表。
これがすべてを変えました。
シンプルで洗練されたデザイン、ケースから取り出すだけで接続される手軽さ。
当時は奇抜とも言われましたが、使った人の多くがその利便性に驚きました。
Bluetooth接続の安定性やバッテリー持続時間も改善され、「ワイヤレスイヤホン=便利」という印象を決定づけました。
このAirPodsの成功が、他メーカーの開発を一気に加速させます。
ソニー、BOSE、Jabra、Ankerなどが続々と参入し、各社が音質やノイズキャンセリング機能を競い合うようになりました。
2018年頃には“完全ワイヤレスイヤホン”という言葉が一般的に知られるようになり、市場が急拡大していきます。
2019年以降、日常に溶け込んだワイヤレスイヤホン
2020年前後には、ワイヤレスイヤホンが「特別なガジェット」から「日用品」へと変わります。
通勤・通学、テレワーク、運動、語学学習など、用途は一気に広がりました。
要因はいくつかあります。
- スマートフォンのイヤホンジャック廃止(iPhone 7以降)
- 価格の下落(1万円以下でも高品質モデルが登場)
- ノイズキャンセリングや外音取り込みなど機能の進化
- Bluetoothの進化による接続の安定化
- コロナ禍でのリモート生活による音声通話・オンライン会議の増加
2021年には、世界のイヤホン市場で完全ワイヤレスイヤホンが有線イヤホンを上回ったとされます。
つまり、「いつから普及したか?」と問われれば、2016年に始まり、2020年頃に完全に定着したというのが実際の流れです。
技術進化がもたらした快適さと多機能化
現在のワイヤレスイヤホンは、単なる音楽再生デバイスではありません。
むしろ“耳に装着するスマートデバイス”と呼ぶにふさわしいほど進化しています。
近年注目の機能には、次のようなものがあります。
- アクティブノイズキャンセリング(ANC)
- 外音取り込み(トランスペアレンシー)モード
- タッチ操作/音声アシスタント対応
- 低遅延モード(動画・ゲーム向け)
- ワイヤレス充電・急速充電
- Bluetooth LE Audio対応で省電力&高音質化
また、AIを活用した音声認識や自動調整機能も搭載され始めています。
“音を聴く”から“耳で操作する”へ。ワイヤレスイヤホンは、まさにウェアラブルテクノロジーの一端を担う存在になりました。
普及を支えた3つのキーポイント
- 利便性の高さ
ケーブルの煩わしさから解放され、ポケットに入れても絡まない。
装着したまま家事も運動もできる。 - 技術革新のスピード
Bluetoothの進化、チップの省電力化、バッテリーの改良。
これらが“使いやすさ”を一気に高めました。 - 価格とデザインの多様化
ハイエンドからエントリーモデルまで選択肢が増え、
“誰でも使える”段階に到達したことで一気に広まったのです。
日本におけるワイヤレスイヤホンの普及タイミング
日本では2018〜2021年にかけて急速に普及が進みました。
量販店でも専用コーナーが設けられ、街中でもAirPodsを耳にする人が急増。
「通勤時にケーブルが邪魔だからワイヤレスにした」という声がよく聞かれるようになります。
また、オンキヨーやソニー、オーディオテクニカなど国内メーカーも積極的に参入し、
高音質とデザイン性を両立させた製品を次々と投入。
結果として、学生から社会人まで幅広い層に定着しました。
今後の進化とこれからのワイヤレスイヤホン
ワイヤレスイヤホンの進化は、まだ止まりません。
今後は次のような方向が期待されています。
- 高音質化:ハイレゾ対応や新コーデック(LC3、LDACなど)の普及
- 低遅延化:動画やゲームとの完全同期を目指す
- AI連携:自動音量調整、発話検知、翻訳機能などの知能化
- 健康管理機能:心拍や体温の測定など、バイオメトリクス連携
- サステナブル設計:再生素材の使用や長寿命化への取り組み
もはや、イヤホンは“音を聴く道具”を超え、生活のインターフェースへと進化していくでしょう。
ワイヤレスイヤホンはいつから普及した?その答えとこれから
改めて振り返ると、
ワイヤレスイヤホンが本格的に普及したのは 2016年のAirPods登場から。
そして 2020年頃には完全に日常の必需品になった と言えます。
たった数年でここまで定着した背景には、技術の進歩とユーザーの生活様式の変化があります。
ケーブルがないだけで、音楽を聴く自由がこれほど広がるとは、誰が想像したでしょうか。
これからの時代、ワイヤレスイヤホンはさらに進化し、
「聴く」だけでなく「つながる」「感じる」デバイスとして、私たちの生活に溶け込んでいくはずです。
ワイヤレスイヤホンはいつから普及した?
その答えは――2016年から始まり、今も進化を続けている真っ最中です。
