ワイヤレスイヤホン市場で根強いファンを持つ「Jabra(ジャブラ)」が、ついにその分野から撤退する——そんなニュースが2024年に大きな話題となりました。
「Elite」シリーズや「Talk」シリーズといった名機を生み出してきたブランドだけに、多くのユーザーが驚きとともに惜しむ声を上げています。
この記事では、Jabraがワイヤレスイヤホン事業を縮小・撤退する背景や理由、そして今後のサポート体制について、分かりやすく整理していきます。
Jabraがワイヤレスイヤホン市場から撤退した経緯
2024年6月、Jabraの親会社であるデンマークのGNグループが、コンシューマー向けオーディオ事業を段階的に終了する方針を発表しました。対象となるのは、完全ワイヤレスイヤホンの「Eliteシリーズ」やBluetoothヘッドセットの「Talkシリーズ」。
具体的には、2024年内に販売と生産を縮小し、最終モデルとして「Jabra Elite 8 Active Gen 2」と「Jabra Elite 10 Gen 2」を投入。これらがJabraブランドの消費者向けワイヤレスイヤホンの“ラストモデル”となる見通しです。
日本国内でも公式な撤退声明こそ出ていませんが、量販店サイトではすでに「生産完了」「在庫限り」の表示が並び、事実上の終息フェーズに入っています。
競争激化で収益が厳しくなった背景
今回の撤退の最大の要因とされるのが、「競争の激化」と「収益性の低下」です。
ワイヤレスイヤホン市場は、AppleのAirPodsを筆頭に、Sony、Bose、JBLなど巨大ブランドがシェアを奪い合う状態。さらに、中国系ブランドや国内中堅メーカーも価格競争に参入し、性能と価格のバランスが大きな武器になっています。
Jabraは通話性能やフィット感、ノイズキャンセリング技術などで定評がありましたが、最新のBluetooth LE Audioやハイレゾコーデック(LDACなど)への対応が遅れたこともあり、トレンドをリードし続けるのが難しくなっていました。
GNグループとしても、限られた開発リソースをどこに配分するかを再検討した結果、「補聴器」や「法人向けヘッドセット」「ビデオ会議機器」といった高収益分野への集中を選択した形です。
Jabraが目指す新たな方向性とは?
撤退は「終わり」ではなく、「次のステップ」でもあります。
Jabraを展開するGNグループは、もともと補聴器事業を中心に発展してきた企業。
その技術力を活かし、ビジネスユースや医療・聴覚サポート領域への注力を強めています。
近年では「Jabra Evolve」シリーズなど、在宅ワークやオフィス会議用のヘッドセットが世界的に評価を受けており、法人市場での存在感を拡大中です。
こうした動きから、消費者向けイヤホンからは一歩引きつつも、「音を通じて人を支える」というブランドの軸は変わっていないといえるでしょう。
ユーザーからの反応と惜しむ声
SNSやレビューサイトには、「Jabraの音質が好きだった」「長時間つけても疲れなかった」「仕事にも音楽にも使えて万能だった」という声が多く投稿されています。
特に「Jabra Elite 85t」などは、装着感や通話品質でいまだに根強い人気があります。
「撤退を知って慌てて在庫を確保した」「処分価格で買えた」といった声もあり、最後のJabraイヤホンを“記念購入”する人も少なくありません。
ユーザーからの愛着が強いブランドだけに、今回の撤退は単なる市場再編ではなく、ひとつの時代の終わりとして受け止められています。
今後のサポート体制と保証はどうなる?
撤退と聞くと「サポートは打ち切られるの?」と不安になりますが、Jabraはしばらくの間、既存ユーザーを対象としたサポートを継続します。
公式サイトでは「製造終了(EOM)」から「販売終了(EOS)」、「サポート終了(EOL)」までの流れを定めており、製造終了後も在庫がある限りアクセサリーや部品を提供する方針です。
保証期間は通常1年間。修理や交換対応は、販売終了後も一定期間は継続されると明記されています。
ただし、アクセサリー類(イヤーピース、充電ケースなど)は在庫限りの扱いになるため、必要なパーツは早めに確保しておくのがおすすめです。
また、アプリ「Jabra Sound+」を通じたファームウェア更新や機能追加も、今後は徐々に縮小していく見込み。Bluetoothの新規格対応など、最新環境への追従は今後限定的になると見られます。
Jabraイヤホンは今後も使えるのか?
結論から言えば、「今すぐ使えなくなるわけではない」です。
既に販売されたEliteシリーズは引き続き利用可能で、サポートも当面は継続します。
音質・通話品質の高さは健在であり、ワークユースや音楽用途ではまだまだ現役です。
ただし、数年後にはファームウェア更新やアプリサポートが終了する可能性があります。
今後スマートフォンのOSやBluetooth規格が変わる中で、互換性が維持されなくなるケースもあり得るため、長期的な利用を考えるなら注意が必要です。
どうしても不安な場合は、現行のJabra Elite 10やJabra Elite 8 Activeを“最後のJabra”として入手しておくのも一つの選択肢です。
他ブランドへの乗り換えを検討するなら
もし次に買い替えを検討するなら、用途に合わせて選びましょう。
- 通話重視:Sony LinkBuds SやBose Ultra Open Earbudsなどが候補。
- スポーツ用途:Beats Fit ProやShokz OpenRunなど、防汗・安定性に優れたモデル。
- 音質重視:Sennheiser Momentum True Wireless 4などが人気です。
Jabraが築いた「バランスの良さ」「装着性の高さ」を基準にすれば、乗り換え先も選びやすいはずです。
Jabraワイヤレスイヤホン撤退が示す市場の変化
今回の撤退は、単なる企業戦略の転換にとどまりません。
ワイヤレスイヤホン市場全体が成熟期に入り、技術的な差別化が難しくなっている現状を象徴しています。
機能や音質が標準化する中で、ブランド力と価格競争がより重要になり、中堅ブランドが生き残る余地は急速に狭まっています。
Jabraの決断は、今後のオーディオ業界の流れを占う一つのサインともいえるでしょう。
一方で、Jabraが法人向け・補聴器分野で培った技術は、今後「聞こえの支援」「音声コミュニケーション支援」といった形で再び私たちの生活に戻ってくる可能性もあります。
“消費者向けイヤホンからの撤退”は、むしろ“次のフェーズへの進化”ともいえるのかもしれません。
まとめ:Jabraワイヤレスイヤホン撤退の理由と今後のサポート状況
Jabraがワイヤレスイヤホン事業から撤退した理由は、激化する市場競争と収益性の低下、そして企業としての戦略転換にありました。
しかし、同社は既存ユーザーを置き去りにするわけではなく、当面のサポートを継続すると明言しています。
現時点では、Jabraのワイヤレスイヤホンをすぐに手放す必要はありません。
むしろ、これまでの名機を最後まで使い切る“Jabraファン”としての時間を楽しむのも良いでしょう。
長年培われた品質と信頼性は、撤退後も色あせません。
そしていつの日か、Jabraの技術が新しい形で私たちの耳元に戻ってくることを期待したいところです。
