最近話題の「ミニPC」。コンパクトで省スペースなのに、性能はノートPC並み、場合によってはそれ以上。だけど、買ってから「メモリ足りない」「もう少し速くしたい」と思ったときに拡張できるかどうか——ここが大きな分かれ目です。
この記事では、ミニPCの“拡張性”をテーマに、どんな部分を後からアップグレードできるのか、そして実際におすすめのモデルを紹介していきます。
なぜミニPCで「拡張性」が注目されているのか
もともとミニPCは、省スペース重視で「中身を触れない・交換できない」設計が多いものでした。
でも最近は状況が変わりつつあります。パフォーマンスを長く維持するには、メモリやストレージを後から増設できる方が断然有利だからです。
特に、
- メモリ:動画編集や仮想マシンなどで必要容量が増える
- ストレージ:写真やゲーム、動画をたくさん保存したい
- GPU性能:グラフィック系作業やゲームでパワーを上げたい
こうしたニーズが高まるにつれ、「拡張性があるミニPC」はコスパを重視するユーザーの新しい選択肢になっています。
拡張性をチェックするポイントはこの5つ
ミニPCを選ぶとき、スペック表をざっと見るだけでは不十分。
後から“どこを触れるか”という視点で、次のポイントを確認してみてください。
1. メモリ(RAM)の増設ができるか
まず確認したいのはメモリスロットの数。
SO-DIMMスロットが2つあるモデルなら、1枚構成のときにもう1枚追加できます。最大容量が「64GB」や「96GB」まで対応していれば、長期的にも安心です。
一方で、メモリが基板に直接はんだ付け(オンボード)されているタイプは、増設ができません。購入前に「交換可/不可」が明記されているかチェックを。
また、メモリを増設するなら、同じ規格・同じ速度で揃えるのがベストです。異なるモジュールを混在させると、性能を十分に発揮できないこともあります。
2. ストレージ(SSD・HDD)の拡張スロット
次に見るべきはM.2スロットや2.5インチベイの有無。
最近のモデルでは「M.2 PCIe 4.0 ×2基」「SATA接続の2.5インチベイ1基」といった構成も珍しくありません。
購入時は512GBでも、後から2TBや4TBのSSDを追加して容量を増やせるなら、クラウドに頼らずローカル保存が可能です。
ただし注意したいのが、「共有スロット」問題。
一部モデルでは、eGPU接続用ポートとM.2スロットが兼用になっている場合があります。どちらかを使うと、もう片方が使えなくなることもあるので、仕様書をよく読んでおきましょう。
3. 外部GPU(eGPU)接続への対応
コンパクトな筐体にフルサイズGPUを積むのは難しいですが、最近は「外部GPU」を接続できるミニPCが増えています。
ポイントはポートの種類。
Thunderbolt 3/4やUSB4、あるいはOCuLink対応ポートがあれば、外部GPUボックスを使ってグラフィック性能を強化できます。
ただし、eGPUにはいくつか注意点もあります。
- Thunderbolt接続はPCIe接続より帯域が狭いため、10〜20%ほど性能が落ちる
- 外部電源が必要な場合が多い
- eGPUユニット自体の価格も数万円〜十数万円ほどかかる
それでも、「後からグラフィック性能を上げられる」メリットは大きく、ゲーマーや動画クリエイターにとっては非常に魅力的です。
4. 拡張ポートと入出力の豊富さ
拡張性は、内部だけでなく外部端子の充実度にも関わります。
USB4やThunderbolt 4ポートがあると、外部GPU以外にも高速SSDやドッキングステーションを使った多機能化が可能。
DisplayPortやHDMI出力が複数あれば、マルチディスプレイ環境も組めます。
また、2.5GbE LANやWi-Fi 6E対応といったネットワーク性能も、長く快適に使う上で重要な要素です。
5. 冷却・電源の設計
どんなに拡張できても、冷却や電力が追いつかないと意味がありません。
メモリやSSDを増設すると発熱が増えるため、静音性と放熱性を両立したモデルを選びましょう。
特にeGPUを使う場合は、電源供給に余裕のあるACアダプター(120W以上推奨)を備えたモデルが望ましいです。
拡張性に優れたおすすめミニPCモデル
ここからは、拡張性を重視する人に人気のモデルをいくつか紹介します。いずれも、メモリやストレージの増設が可能で、外部GPU接続にも対応しているものが中心です。
MINISFORUM UM870 Slim
AMD Ryzen 7 8745H搭載の高性能ミニPC。
USB4ポートを備え、外部GPUの接続にも対応しています。内部には2基のSO-DIMMスロットとM.2スロットを搭載し、後からのメモリ増設やSSD追加も簡単。価格帯も10万円前後とコスパが良いのが魅力。
MSI Cubi NUC AI 1UMG
Intel Core Ultra 5搭載の最新NUC系モデル。
Thunderbolt 4ポートを搭載しており、eGPUとの親和性が高い設計。DDR5メモリにも対応し、将来的なアップグレード性も抜群。静音性の高い冷却システムを備え、ビジネス用途にも向いています。
ASUS NUC 14 Pro+
ASUSがNUCブランドを引き継いでリリースしたモデル。
複数のM.2スロット、デュアルSO-DIMM構成で拡張性に優れています。筐体の作りがしっかりしており、カバーの着脱も簡単なのでメンテナンスしやすい点も好印象。Thunderbolt 4対応で拡張ポートも豊富。
GEEKOM A6 Mini PC
Ryzen 7 7840HS搭載で、内蔵GPU性能も高い一台。
USB4ポートを装備し、メモリ・SSDの交換が可能。静音設計でありながら排熱性能も高く、長時間の作業でも安定稼働します。初めてのミニPCにもおすすめ。
GMKtec K8 Plus
価格を抑えながらもDDR5メモリ対応、デュアルM.2スロット搭載。
USB4ポート経由で外部GPUの接続も視野に入ります。コスパ重視の拡張型ミニPCとして人気を集めています。
拡張性を活かす実践的な使い方
せっかく拡張できるミニPCを選ぶなら、その特性を最大限活かしたいところ。ここでは、よくある使い方の例を紹介します。
メモリ増設で動作を快適に
標準8GB構成だと、ブラウザや動画編集ソフトを同時に使うと少し重く感じることがあります。
SO-DIMMを1枚追加して16GBや32GBにすれば、複数アプリを並行して動かしても余裕が出ます。
ストレージ追加で作業スペース拡大
動画編集や写真管理など、データをたくさん扱う人は2台目のSSDを増設するだけで快適度が段違い。
「システム用+データ保存用」で分けると、トラブル時も復旧しやすくなります。
外部GPUでゲームもクリエイティブも
Thunderbolt対応のミニPCに外部GPUボックスをつなげば、デスクトップ顔負けの性能を発揮。
普段は省電力PCとして、必要な時だけeGPUでパワーアップするという柔軟な使い方が可能です。
ミニPC拡張の落とし穴と注意点
拡張性が高いといっても、全てが万能ではありません。
実際にアップグレードする際は、次の点に気をつけてください。
- メモリやSSDの増設作業は、メーカー保証外になる場合がある
- スロットや端子が内部で共有されていることがある(例:M.2とeGPUが排他)
- eGPUは高負荷時に熱を持ちやすく、電源容量不足で不安定になることも
- 筐体内部が狭いため、パーツ交換時にケーブルを傷つけないよう注意
あらかじめ公式マニュアルやレビューを確認し、対応部品や増設手順を把握しておくのがおすすめです。
拡張性を軸に“長く使えるミニPC”を選ぼう
ミニPCの魅力は、小さくてもパワフルで、置き場所を選ばないこと。
そこに「拡張性」が加われば、数年後も快適に使い続けられる理想のPCになります。
後からメモリやSSDを増やせるモデル、外部GPUで性能を強化できるモデルを選べば、用途が変わっても柔軟に対応可能です。
「買って終わり」ではなく、「育てながら使えるミニPC」。そんな視点で選べば、PCライフがもっと楽しくなります。
ミニPCの拡張性を比較し、自分に合った1台を見つけよう
最後にもう一度まとめると、ミニPCを選ぶときは次の3点を意識してみてください。
- メモリ・ストレージを増設できる構造か
- 外部GPUやThunderboltなど拡張ポートを備えているか
- 冷却・電源設計に余裕があるか
これらをチェックしておけば、後から「もっと性能を上げたい」と思っても柔軟に対応できます。
ミニPCの拡張性をしっかり比較して、自分のスタイルに合った“育てられるPC”を手に入れてください。
