ライブ配信やゲーム実況、オンラインイベントの録画など、映像を扱う場面で人気の高いソフト「OBS Studio」。
でも「大きなデスクトップPCは置けない」「ノートではパワー不足かも」と感じる人も多いですよね。
そんな時に注目されるのがミニPC。コンパクトで省スペースなのに、性能は年々向上しています。
この記事では、ミニPCでOBSを快適に使うための構成・設定・選び方を、実際の検証情報やユーザー体験をもとにわかりやすく解説します。
ミニPC×OBSの相性は?まず押さえるべきポイント
ミニPCでOBSを動かすこと自体は可能です。
しかし「動く」と「快適に使える」は別物。録画や配信では映像の取り込み・エンコード(圧縮)・出力などが同時に発生するため、CPUやGPUの性能が一定以上必要になります。
OBSの動作における主な負荷ポイントは以下の3つ。
- エンコード処理:映像をリアルタイムで圧縮して保存・配信する工程。
- 描画処理:ゲーム画面やカメラ映像を合成・表示する負荷。
- ストレージ書き込み:録画データを保存する速度・安定性。
このため、ミニPCでは「CPU性能+ハードウェアエンコード対応+冷却性能」が大きな鍵になります。
CPUとエンコーダの選び方:Quick SyncやNVENCを活用しよう
OBSのエンコード処理は、CPUだけでなくGPUや専用ハードウェアを使うことで大きく効率化できます。
- Intel製CPUならQuick Sync Video
内蔵グラフィックに搭載されており、H.264やHEVCのハードウェアエンコードが可能。CPU負荷を大幅に減らせます。 - AMD RyzenならAMF(VCE)
Ryzen 7シリーズ以上では、統合GPU付きモデルでハードウェア支援を活かせます。 - NVIDIA GPUならNVENC
外付けGPUを搭載できるミニPCは少ないですが、NVENC対応なら高画質配信も余裕です。
最近のミニPCでは、第12世代以降のIntel N100/N95シリーズやRyzen 5/7 5000番台を搭載したモデルが多く、いずれもQuick SyncやAMFに対応。
このクラスなら1080p/30fps配信は十分可能です。余裕を求めるならCore i7やRyzen 7以上を目安にすると安心です。
メモリとストレージ:16GBとNVMe SSDが安定の定番
OBSは映像メモリを多く消費するため、8GBでは不足する場面が出やすくなります。
シーン切り替えやエフェクトを使うなら、最低16GBは確保しておきましょう。
録画と配信を同時に行う場合は、32GBあるとより快適です。
ストレージはNVMe SSDが理想。
録画データは長時間で数十GBを超えることもあり、連続書き込み速度が安定しているモデルを選ぶのがポイント。
DRAMレスSSDだと速度低下が起きやすいので、可能ならキャッシュ付きのSSDを選びましょう。
冷却と静音性:ミニPC特有の課題をどう克服するか
ミニPCは筐体が小さいぶん、熱がこもりやすいのが難点です。
録画・配信を1時間以上行うと、CPU温度が上がりサーマルスロットリング(熱による性能低下)が発生するケースもあります。
冷却性を重視するなら、ファンレスモデルよりも静音ファン搭載タイプがおすすめ。
例えばGEEKOM Mini PC A5やBeelink SER5の一部モデルは、冷却経路を工夫しており、長時間稼働でも安定しやすい構造です。
また、配信時の「ファン音」も気になるポイント。マイクが近い場合は、吸音マットや外部マイクでノイズを抑える工夫も有効です。
I/Oポートと拡張性:キャプチャ機器との相性を確認
OBS配信では、カメラ・オーディオインターフェイス・キャプチャボードなど、周辺機器を複数接続することが多いです。
ミニPCを選ぶ際は、次のような入出力を確認しましょう。
- USB 3.0以上が複数あること
キャプチャボードや外付けSSDなど、帯域を必要とする機器が多いため。 - HDMI/DisplayPort出力
マルチモニター構成でOBSを操作しながら配信できると便利です。 - 有線LANポート
Wi-Fiでも配信できますが、安定性を求めるなら有線接続がベスト。
Thunderbolt 4やUSB-C DisplayPort対応端子があれば、将来の拡張性も確保できます。
OBS設定を最適化してミニPCの性能を引き出す
性能を最大限に活かすためには、OBS側の設定も見直す必要があります。
ここでは、ミニPCで快適に動かすための主要ポイントを紹介します。
1. 出力解像度とfpsを適正化
1080p60fpsで配信できる構成でも、状況に応じて1080p30fpsに下げると負荷と発熱が大幅に減ります。
視聴者側の体感もほとんど変わらないため、安定性を優先するのが得策です。
2. ハードウェアエンコードを使用
設定 → 出力 → エンコーダ で「Quick Sync」「AMF」などを選択。
これによりCPU使用率を半分以下に抑えられます。
3. シーン・ソースの整理
複数のカメラ映像やブラウザソースを常時読み込むと、メモリ消費が急増します。
不要なシーンを削除し、必要な時だけ読み込むようにするだけでも安定性が向上します。
4. 録画設定を調整
録画フォーマットは「mkv」推奨。途中でクラッシュしてもファイルが破損しにくいです。
ビットレートは5,000〜10,000kbpsを目安に、ディスク容量と相談しながら調整しましょう。
実際に人気のあるミニPCモデル例
実際にOBS配信用として人気のあるミニPCをいくつか紹介します。
※以下は一般的な構成例であり、販売店や在庫状況によって仕様は変わります。
- GEEKOM Mini PC A5(Ryzen 7 5825U)
Ryzen 7の高性能CPUを搭載し、統合GPUも強力。OBSでの録画や配信も余裕があります。 - Beelink SER5 / Beelink SER6シリーズ
価格と性能のバランスが良く、HDMI×2・USB3.2など拡張性も十分。家庭用配信に人気。 - ASUS NUC 14 Essential
定番のNUCシリーズ。安定性が高く、Quick Sync対応で軽量配信に最適。 - ACEMAGIC S3A(Ryzen 9 / 7)
ハイエンド志向。4K配信や動画編集にも対応できるパワフルな構成です。
どのモデルも手のひらサイズながら、十分なパフォーマンスを発揮します。
設置スペースが限られている環境でも、静音・省電力・高効率な配信が可能です。
安定配信を支える運用のコツ
どんなに高性能なPCでも、運用次第で安定性は変わります。
ミニPCで快適にOBSを使うために、次の点を意識しておくと安心です。
- 配信前にCPU・GPU使用率と温度をモニタリングしておく
- 録画中は外付けSSDやNASに保存して内部SSDの負担を軽減
- 配信ソフト・ドライバを最新バージョンに維持
- 長時間配信の合間に休止時間を設けることで熱を逃がす
- UPS(無停電電源装置)を使って、突然の電源断にも備える
これらのちょっとした工夫で、ミニPCでも安定した録画・配信が実現できます。
ミニPCでOBS録画配信を快適に行うには?
ここまで紹介してきたように、ミニPCでも工夫次第でOBSの録画・配信は十分可能です。
大事なのは、「性能」と「設定」と「運用」のバランス。
- CPUは第12世代以降のCore i5以上、またはRyzen 5以上
- メモリは16GB以上、NVMe SSD採用
- 冷却・I/O・有線LAN対応を重視
- OBSではハードウェアエンコードを活用し、設定を最適化
- 長時間運用では熱とストレージ負荷を管理する
この5つを押さえれば、小さなミニPCでも快適にOBSを扱えます。
場所を取らず、静かで、省エネ。それでいてしっかり高画質配信ができる――。
ミニPCは、これからの配信・録画環境をもっと自由にしてくれる存在です。
