ThinkPad X9は、伝統からの大胆な転換を図った「新世代のThinkPad」として登場しました。赤ポチと呼ばれるトラックポイントの物理ボタンが廃止され、AIを全面に押し出した設計は、従来のThinkPadユーザーから驚きをもって迎えられています。この記事では、ThinkPad X9が本当にあなたのビジネスや日常にフィットするパートナーになり得るのか、その実力をAI機能、バッテリー、使い勝手から徹底的に検証します。
ThinkPad X9の基本情報と位置付け:これは誰のためのノートパソコン?
ThinkPad X9シリーズは、2025年から2026年にかけて登場した、Lenovoの新たな挑戦です。従来のThinkPad X1 Carbonシリーズからさらに一歩進み、より洗練されたデザインと最新の技術を詰め込んでいます。
大きな特徴は2つ。まず、ThinkPadの象徴ともいえたトラックポイント(赤ポチ)の専用物理ボタンが廃止され、代わりにタッチパッド一体型の押し込み式(ハプティック)操作になりました。これは、MacBookや多くの他社製ノートパソコンに慣れたユーザーを取り込む意図があると考えられます。
もう一つのキーワードが「AI PC」です。インテルの次世代プロセッサーを搭載し、NPU(神経処理ユニット)による効率的なAI処理を前面に押し出しています。ThinkPad X9は、最新のテクノロジーと省電力性を両立させ、明日の働き方を見据えて設計されたモデルと言えるでしょう。
AI機能の実力検証:「Aura Edition」はワークスタイルをどう変える?
「AI対応」と聞いても、それが具体的に何をもたらすのかイメージしにくいですよね。ThinkPad X9の「Aura Edition」や搭載される「Smart Modes」は、単なるおまけ機能ではありません。
実用的なAI機能「Smart Modes」の中身
- 集中モード:通知を一時的にミュートし、画面の色温度を調整して目の疲れを軽減。重要な作業に没頭したいときに自動で環境を整えてくれます。
- 健康モード:長時間の使用を検知すると、定期的に休憩を促し、簡単なストレッチを提案。リモートワークでの健康管理をサポートします。
- 会議モード:オンライン会議中に背景ぼかしやノイズキャンセレーションをAIで強化し、NPUを活用することでCPU負荷を抑え、バッテリー消費を節約します。
これらの機能は、OSレベルで深く統合されており、意識せずともあなたの作業パターンを学習し、さりげなくサポートしてくれるのが理想形です。写真編集ソフトのAI補助機能や、文章作成時の推敲サポートなど、今後も対応アプリが増えていくことが期待される分野です。
最大の論点!トラックポイントボタン廃止の使い心地は?
これが最も多くの議論を呼んでいるポイントです。ThinkPad愛好家の中には、この変更を「ThinkPadの精神の放棄」と感じる方もいるかもしれません。実際のところ、使い心地はどうなのでしょうか。
新しい操作体系は、従来のトラックポイントユーザーには大きな学習コストを要求します。指の位置や力加減を一から覚え直す必要があり、特に細かい操作には初期段階でストレスを感じるでしょう。
一方で、これまでThinkPad以外のノートパソコンを使っていた方、あるいはタッチパードを主に使っていた方にとっては、むしろ違和感の少ない移行が可能です。広々とした高精度タッチパッドは、ジェスチャー操作も快適です。この設計変更は、ThinkPadの良さを残しつつ、より広い層のユーザーに受け入れられる操作性を目指した、大胆なトレードオフだと言えます。キーボードの打鍵感(約1.35mmのキーストローク)は従来通り高い水準を保っているので、文字入力の快適さは健在です。
徹底検証:バッテリーは本当に「1日持つ」のか?
バッテリー駆動時間はモバイルワークの生命線です。ThinkPad X9は、最新の省電力プロセッサーと大容量バッテリーを武器に、長時間駆動を謳っています。
信頼性の高い海外メディアの実測レビューによると、PCMark10などの標準的なベンチマークテストでは15時間から19時間以上という驚異的な結果を出しているモデルもあります。これは、通常のオフィス作業(文書作成、メール、Webブラウジング)を中心に使う場合、丸1日の作業を充電なしでこなせる可能性が高いことを示しています。
もちろん、実際の使用時間は条件によって大きく変わります。
- 軽度使用(文書中心): 公称値に近い15時間以上の駆動も夢ではありません。
- 中度使用(Web会議含む): バッテリーを消費するWeb会議を数時間挟む場合は、10時間前後の駆動を見込むのが現実的です。
- 負荷の高い使用(動画編集など): 高性能を発揮する作業では、当然バッテリー消費は早まります。
いずれにせよ、コーヒーショップでの数時間の作業や、オフィス内での席を離れての会議など、日中に充電器を気にせず動き回れるだけの底力は十分にあると言えるでしょう。これは、ThinkPad X9がモバイルワークの強い味方であることを裏付けています。
競合との比較で見える、ThinkPad X9の真の価値
ThinkPad X9を相対的に評価するために、主要な競合と比較してみましょう。
ThinkPad X1 Carbonとの比較:コストパフォーマンスとトレードオフ
- ThinkPad X9の優位点: 比較的抑えられた価格帯で、最新のAIプロセッサーや美しいOLEDディスプレイを提供しています。新しいデザイン言語を取り入れ、より現代的な外観を持ちます。
- X1 Carbonの優位点: より伝統的なThinkPadの操作性(トラックポイントボタンあり)を堅持。一部モデルでは、ビジネス向けのvPro技術やWWAN(モバイル通信)オプション、高級感あるカーボンファイバー素材など、確立されたビジネス向け機能が揃っています。
選び方のポイント: 最新のAI機能とコストパフォーマンス、新しいデザインを求めるならThinkPad X9。確実なビジネス機能と、変わらないThinkPadの操作感を最優先するならX1 Carbon、という選択になります。
MacBook Air (M3)との比較:エコシステムと実用性の対決
- ThinkPad X9の優位点: Windowsエコシステムへの完全な互換性。より豊富な接続ポート(一部モデルを除く)、内部のSSD交換の可能性など、カスタマイズ性と拡張性に優れます。価格面でも有利な場合があります。
- MacBook Airの優位点: 比類ないバッテリー駆動時間と完全なサイレント動作。Adobeなどクリエイティブアプリの最適化が進んでいる環境。シームレスなApple製品間の連携。
選び方のポイント: 使うソフトウェアがWindows必須、あるいは特定のビジネスツールが必要なら迷わずThinkPad X9。デザインや動画編集に重きを置き、Appleのエコシステムにどっぷり浸かっているならMacBook Airが有力候補です。
ユーザー視点でチェック!購入前に知っておきたい注意点
実際のユーザーレビューや声を参考にすると、購入判断に役立つ生の情報が見えてきます。
- 接続性の課題: 薄型化に伴い、一部モデルではUSB-Aポートが省略されています。古いUSBメモリや周辺機器をよく使う方は、小型のUSB-Cハブを携帯する必要があります。
- 将来のアップグレード: メモリ(RAM)はマザーボードに直接はんだ付けされている場合が多く、購入後に容量を増やすことは基本的にできません。最初に必要十分なメモリ容量(16GB以上を推奨)を選ぶことが大切です。
- 操作性への適応期間: 先述の通り、トラックポイント操作の変化には数日から1週間程度の慣れが必要です。デモ機で実際に触る機会があれば、ぜひ試してみてください。
また、ThinkPad X9はサステナビリティへの配慮も特徴で、筐体の一部に再生アルミを使用し、包装も無プラスチックを目指すなど、環境意識の高い選択肢となっています。
まとめ:ThinkPad X9はこんな人にこそおすすめしたい
ThinkPad X9は、従来のファンから見れば「異端児」かもしれません。しかし、この変革は、変化するワークスタイルとテクノロジーに積極的に対応しようとする意志の表れです。
ThinkPad X9が特にフィットするのは、こんな方です。
- 最新のAI機能で効率的な作業環境を構築したいビジネスパーソン。
- バッテリーの長さを最優先し、充電器から解放されたモバイルワークを実現したい方。
- 美しいOLEDディスプレイで資料作成やコンテンツ消費を楽しみたい方。
- ThinkPadの堅牢性とキーボードの打鍵感は譲れないが、新しいデザインと操作性にも挑戦してみたい方。
逆に、従来のトラックポイント操作に絶対のこだわりがある方や、vProなど特定のビジネス向け機能が必須な方には、他のThinkPadシリーズを検討することをお勧めします。
ThinkPad X9は、伝統をアップデートし、未来の働き方への第一歩を踏み出したモデルです。その真価は、実際の日々の使用の中で、あなたの作業をいかにスマートに、ストレスなくサポートするかで測られるでしょう。
ThinkPad X9の実力と未来
ThinkPad X9の完全レビューを通じて、その実像が見えてきたのではないでしょうか。AI対応とバッテリー寿命という強力な武器を持ちながらも、操作性の大胆な変更には覚悟が必要です。これは、新たなユーザー層を開拓するための、計算された進化でした。
製品のライフサイクルの中で、現在は一部モデルで在庫調整が行われている時期でもあります。しかし、そのコンセプトと方向性は、CES 2026などで発表される次世代モデルにも確実に受け継がれていくでしょう。最新テクノロジーを取り入れ、働く人を中心に考えたThinkPad X9の挑戦は、これからも続きます。
あなたの次の相棒が、この進化したThinkPad X9である可能性を、ぜひ検討してみてください。
