最近人気の「ミニPC」。手のひらサイズでデスクまわりがスッキリするだけでなく、省電力で静音性も高く、在宅ワークや趣味用として注目されています。
でも、いざ電源を入れたときに「起動しない」「ストレージが認識されない」といったトラブルが起きると、どこを触ればいいのかわからない人も多いはず。
そんなときにカギになるのが「BIOS(バイオス)」です。ここでは、初心者でもわかるように、ミニPCのBIOSの基本と設定、そしてトラブル対処法を丁寧に解説します。
BIOSとは?ミニPCにも必ず入っている“起動の司令塔”
BIOSとは「Basic Input/Output System」の略で、パソコンの中で最初に動く“ファームウェア”のこと。
電源を入れると、まずBIOSがハードウェア(CPU・メモリ・ストレージなど)を初期化し、「どの機器からOSを起動するか」を決めます。つまり、パソコンの“司令塔”のような存在です。
近年は「UEFI」という新しい仕様も増えています。こちらは従来のBIOSを進化させたもので、より高速な起動やグラフィカルな設定画面、セキュアブートといった機能が特徴です。
ほとんどのミニPCもこのUEFIを採用していますが、基本的な考え方はBIOSと同じ。
パソコンを安全に立ち上げるための基盤として、すべての動作を支えています。
ミニPCでBIOSに入る方法
ミニPCの電源を入れた直後、メーカーによって指定されたキーを押すことでBIOS画面に入ることができます。
代表的なキーは次のとおりです。
電源を入れてすぐに数回押すのがコツです。タイミングが合わなければ、再起動してもう一度試してみましょう。
Windows 10や11を使っているなら、「設定」→「回復」→「今すぐ再起動」→「詳細オプション」→「UEFIファームウェア設定」→「再起動」からもBIOSにアクセスできます。
初心者が知っておきたい基本設定項目
BIOSは文字だけの難しそうな画面に見えますが、いじるべきところは意外とシンプルです。
特にミニPCでチェックしておくと良い設定を紹介します。
起動順序(Boot Order)
どのデバイスからOSを起動するかを決める項目です。
たとえばWindowsをSSDに入れているなら、そのSSDを最優先に設定しましょう。
USBメモリからOSをインストールしたい場合は、起動順を一時的にUSBに変えます。
間違えると「OSが見つかりません」と表示されることもあるので要注意です。
メモリ設定(XMP/EXPO)
高性能メモリを使っている場合、BIOS内で「XMP(Intel)」や「EXPO(AMD)」という項目を有効化すると、定格のスピードで動作します。
ただし、発熱が増えることもあるので、安定性を重視するなら「Auto(自動)」のままでもOKです。
電源設定(AC Power On/Wake on LAN)
小型PCはサーバー代わりに常時稼働させるケースもあります。
電源復旧時に自動起動する「AC Power On」や、LAN経由で電源を入れる「Wake on LAN」を活用すると便利です。
ただし、常時通電させると発熱が増えるため、設置場所の通気にも注意しましょう。
セキュアブートと起動モード
Windows 11をインストールする場合は「UEFIモード+セキュアブート有効」が推奨です。
古いOSを使う場合は、互換性のために「Legacyモード」へ切り替えることもあります。
どちらを選ぶかで起動できるOSが変わるので、再インストール前に確認しておきましょう。
ファン設定と温度管理
ミニPCはコンパクトゆえに熱がこもりやすいのが難点。
BIOSには「Fan Profile」や「Thermal Setting」といった項目があり、ファン回転数の調整が可能です。
静音性を重視するなら「Silent」、熱対策を優先するなら「Performance」を選ぶとよいでしょう。
起動しないときのトラブル対処法
ここからは、実際に多いトラブルとBIOSでの対処法を紹介します。
慌てず順にチェックしていけば、意外と簡単に解決できることもあります。
「No Bootable Device」と出て起動しない
まずはBIOSに入り、「Boot」タブで起動ドライブが正しく認識されているか確認します。
SSDやHDDがリストに表示されていない場合は、接続が緩んでいたり、ケーブル不良だったりするかもしれません。
ミニPCならM.2スロットの固定ネジが緩んでいるケースもあります。
もしドライブが見えているのに起動しないなら、「Boot Priority」でそのSSDを一番上に設定してみましょう。
BIOS画面が出ない・真っ黒のまま
電源ランプが点いてファンが回っているのに画面が出ない場合は、メモリやGPUが正しく動いていない可能性があります。
最近BIOS設定を変えた覚えがあるなら、「Load Default」や「Restore Defaults」で初期化すると直ることがあります。
また、BIOSが壊れている場合は、メーカー公式サイトから最新バージョンをダウンロードして更新する方法もあります。
起動後にフリーズや再起動を繰り返す
この症状は熱や電源まわりが関係していることが多いです。
BIOSでCPU温度を確認し、80℃を超えるようなら冷却不足を疑いましょう。
ファン設定を「標準」から「高速」に変える、あるいは放熱環境を改善するだけでも安定します。
また、XMPを有効にしてから不安定になった場合は、設定を「Auto」に戻すと改善することもあります。
BIOS更新(アップデート)の注意点
BIOSはマザーボードの中に書き込まれたソフトウェアなので、メーカーが提供する新バージョンに更新することで不具合が解消することがあります。
たとえば「新しいSSDが認識されない」「スリープから復帰しない」といった問題が直るケースもあります。
ただし、更新中に電源が落ちると致命的なエラーを起こす可能性があるため、慎重に行いましょう。
以下の点を守れば安全です。
- 電源を抜かない・PCを動かさない
- ノートPCならバッテリーを満タンにしてACアダプタを接続
- メーカー公式サイトから自分の型番に合ったファイルを選ぶ
- 更新後は設定がリセットされるので、変更前の内容をメモしておく
ZOTACやMINISFORUMなどのサイトでは、各モデル専用のBIOSが公開されています。
バージョン表記(例:2K230815など)は「年・月・日」を示していることが多いので、日付が新しいほど最新です。
BIOSを上手に使ってミニPCをもっと快適に
BIOSは難しそうに見えますが、実は「電源を入れる」「起動順序を決める」「温度を監視する」といった基本操作を担っているだけ。
慣れれば設定を少し変えるだけで、ミニPCの性能や安定性をぐっと引き出せます。
たとえば、ファンの動作を最適化すれば静音化でき、メモリ設定を整えれば処理が速くなる。
電源設定を調整すれば、リモートワーク用のサーバーとしても活躍します。
大切なのは、「何を変えたか」を把握し、トラブルがあっても焦らず順に確認することです。
ミニPCのBIOSを理解して、トラブル知らずの快適ライフを
ミニPCの魅力は、コンパクトながらしっかりした性能と静かな動作にあります。
しかし、その快適さを長く保つには、BIOSの基礎知識が欠かせません。
BIOS(UEFI)は、パソコンの心臓のような存在。
起動しないときの確認、ストレージの認識設定、冷却の最適化──これらを理解しておくことで、いざというときに自分で対処できるようになります。
ミニPCをより安心して使うために、次にトラブルが起きたときは「BIOSをのぞいてみる」。
それが、安定したパソコンライフへの第一歩です。
