「手のひらサイズのPCが自作できる」――そんな夢を叶えてくれるのが、Raspberry Pi(ラズベリーパイ)です。電子工作やプログラミングの教材として有名なこの小さな基板、実はアイデア次第で立派なミニPCにもなります。今回は、Raspberry Piで作るミニPCの構成から活用例まで、初心者にもわかりやすく紹介していきます。
Raspberry PiをミニPCにするってどういうこと?
Raspberry Piは、名刺サイズのシングルボードコンピュータ(SBC)です。CPU・GPU・メモリ・入出力端子が一枚の基板にまとまっており、電源とストレージを接続すれば、すぐに動作する「小さなPC」として使えます。
通常のミニPC(たとえばIntel NUCやBeelinkなど)との違いは、自由度とコストパフォーマンス。Raspberry Piは、ケースやストレージ、冷却ファンまで自分で選べるため、「自作する楽しみ」と「使う便利さ」の両方を味わえるのが魅力です。
ただし、性能はあくまで省電力志向。動画編集や3Dゲームのような重い処理には不向きですが、ブラウジング、文章作成、軽いプログラミングなどには十分対応できます。
どのモデルを選ぶ?用途別おすすめRaspberry Pi
ミニPCとして使うなら、選ぶモデルで快適さが変わります。主な選択肢は以下の通りです。
Raspberry Pi 5
最新モデルで、CPU性能が大幅に向上。USB 3.0ポートやPCIe対応など、より一般的なPCに近い使い方ができます。メモリも最大8GB搭載モデルがあり、デスクトップ用途にも現実的です。
冷却が必要になるため、専用ケース+ファン付きヒートシンクを導入すると安定します。
Raspberry Pi 4 Model B
定番中の定番。4GBまたは8GBメモリ版を選べば、Web閲覧、Office系アプリ、YouTube視聴もスムーズ。価格も手頃で、安定した動作が魅力です。
USB 3.0ポートとデュアルHDMI出力を備えており、2画面作業も可能。まさにミニデスクトップにぴったりです。
Raspberry Pi 400
キーボード一体型のユニークなモデル。内部はPi 4相当で、電源とモニターをつなぐだけで作業を始められます。机上の配線をすっきりさせたい人におすすめ。
ミニPC構築に必要なもの
Raspberry Pi本体だけでは動きません。最低限そろえるべき周辺機器をチェックしておきましょう。
- 電源アダプタ:5V/3A以上の公式対応品を推奨。
- microSDカードまたはSSD:OSをインストールするストレージ。高速なUHS-I規格やUSB 3.0接続SSDが快適です。
- ケースと冷却装置:ヒートシンクやファンで熱を逃がすと性能が安定。
- HDMIケーブルとモニター:microHDMI→HDMIケーブルで接続。
- キーボード・マウス:USBまたはBluetooth対応のものを用意。
あると便利なのが、USBハブや外付けSSD。動画やファイルを多く扱うなら、ストレージを増設しておくと快適です。
Raspberry Pi OSをインストールしてみよう
Raspberry PiをミニPCとして動かすためには、OS(オペレーティングシステム)のインストールが必要です。初心者には「Raspberry Pi OS(旧Raspbian)」が最もおすすめ。
手順はざっくり言うと次の通りです。
- パソコンで「Raspberry Pi Imager」をダウンロード。
- OS(Raspberry Pi OSなど)を選択。
- microSDカードを挿して書き込み。
- 完了後、カードをPi本体に挿入して電源オン。
初回起動時にWi-Fiやアカウント設定を行えば、すぐにデスクトップ画面が表示されます。見た目も一般的なLinuxデスクトップと変わらず、マウス操作だけでアプリのインストールも可能です。
ミニPCとしてどこまで使える?用途別実用例
1. 日常の作業PCとして
ネット検索、文書作成、メールチェック、動画再生など、日常的な用途は問題なくこなせます。ブラウザはChromium、オフィスソフトはLibreOfficeを利用可能。
YouTubeもフルHDで視聴できますが、複数タブを開くとメモリ消費が増えるため、8GBモデルが理想です。
2. メディアセンター化
テレビに接続して動画や音楽を楽しむなら、KodiやLibreELECといったソフトを使えば、リモコン操作でホームシアターのような環境に。
静音性が高く省電力なので、リビング常設にも向いています。
3. レトロゲーム機に変身
「RetroPie」を導入すれば、ファミコンやスーファミなどのゲームをエミュレーションできます。
コントローラを接続すれば、懐かしの名作をリビングで再現可能。遊びながらLinux環境を学ぶこともできて一石二鳥です。
4. ホームサーバー・NASとして
データ共有やバックアップ用途に活躍。USB 3.0接続の外付けHDDを組み合わせてNASを構築すれば、家庭内クラウドが完成します。
また、VPNサーバーやIoTハブとして使う例も多く、電力消費が少ないため24時間稼働も現実的です。
快適に使うためのコツ
- 冷却を軽視しない
Raspberry Pi 4 Model B以降は発熱が大きく、冷却不足だと動作が遅くなります。ファン付きケースを選ぶと安心です。 - ストレージをケチらない
安価なmicroSDは速度が遅く、壊れやすいものもあります。信頼できるメーカーの高速カードかSSDを選びましょう。 - OSやソフトを最小限に
必要のないアプリを入れすぎると動作が重くなります。軽量なLinuxアプリでまとめるのがコツです。 - バックアップを習慣に
SDカードの破損はつきもの。定期的に別のストレージにデータを保存しておくと安心です。
Raspberry PiミニPCのメリットと限界
メリット
- 低価格でPC環境を構築できる
- 小型・省スペース・静音
- 消費電力が少なく、長時間運用に向く
- 自作・カスタマイズの自由度が高い
デメリット
- 高負荷作業には不向き
- microSDストレージの速度がボトルネック
- Windows専用ソフトは基本的に非対応
- ハードウェアのアップグレードが難しい
とはいえ、目的を絞って使えばコスパ抜群。軽作業や学習用、メディア端末としてはむしろ最適です。
自作ミニPCで広がる可能性
Raspberry Piの面白さは、用途を自由に発想できる点にあります。
例えば、常時稼働のスマートホームサーバー、電子ペーパーディスプレイをつけた情報端末、さらには3DプリントしたケースでオリジナルPCを作る――そんな楽しみ方も可能です。
Raspberry Piで「自分だけのミニPC」を作ることは、単なる節約ではなく、“学びと創造の体験”でもあります。設定やトラブルを解決する過程で、自然とハードやOSの仕組みを理解できるようになります。
Raspberry Piで作るミニPC完全ガイド!まとめ
Raspberry PiでミニPCを作る魅力は、自由に構築できる楽しさと、価格を超える実用性にあります。
最新のRaspberry Pi 5やRaspberry Pi 4 Model Bなら、日常用途のデスクトップとして十分使える性能を持ち、メディアセンターやホームサーバー、レトロゲーム機など多彩な活用が可能です。
小さな基板から生まれる無限の可能性。
あなたもRaspberry Piで、自分だけのミニPCを作ってみませんか?
